羊を数えても眠れない

 
 
イメージ 5
 
      私の履歴書・298
 
私の睡眠時間確保方法は、札幌から消える事でしたね。
 
当時、道内各支所に出張の時は、必ず夜の11時台にはホテルに帰りました。
.
他方、休日の場合は、
 
月に四回の土曜日と日曜日の内、一回は仙台の会議の移動で潰れます。
もう一回は温泉一泊社内研修で消えます。
 
ですから自宅でまともに過ごすのは月二回でした。
自宅での土曜日と日曜日は睡眠不足を補って昼前まで眠りました。
 
 
或る日曜日の朝の八時、妻に起されました。
「亜子さんから電話ですよ」
 
前夜は土曜日ですから、接待はなかったはず。
びっくりして飛び起きました。
 
「亜子! 亜子! どうした! 何かあったのか?」
「所長、私」
憔悴しきった声が、電話の向こうから聞こえる。
 
「どうした!」
「昨夜の11時、マキ(仮称)社長に呼び出されたのです」
   注1)マキ社長は、毎年1千万円前後の機器を購入してくれる得意先。
 
「呼び出されたって? どうして亜子と連絡がついたの?」
「この間、電話番号を教えました」
 
「バカモン! あれ程、個人の電話番号は教えるなと言ったのに」
「すみません。マキ社長が役員をしている小売酒販組合の幹部役員全員を紹介するというものですから」
 
「それで?」
「すみません。役員全員を紹介してもらいましたが、接待稟議書を提出しないで二万円使ってしまいました」
 
「それよりも今まですすきのの飲み屋にいたのかい?」
「四時過ぎまでマキ社長の行きつけのスナックでカラオケです」
 
亜子は歌が上手だから、爺さん役員の皆が帰してくれないのは分かる。
 
「夜が明けていただろう」
「えェ、帰宅して直ぐに寝て、今、目を覚ましましたから電話しました」
 
「これから何処かで会おうか?」
「また寝ますから」
 
「そうか、それじゃ月曜日に話を聞こうか。稟議書はどうにでもなるから」
亜子の自宅の枕元にある自分の電話からでした。
 
あの声の調子では歌い過ぎか? それとも何かがあったのだろうか?
そう思ったら、再度眠るどころではありませんでしたね。
 
翌月曜日の朝、亜子を物陰に呼んで質(ただ)しました。
「元気が無いね。土曜の夜は大丈夫だったのか?」
 
「ご心配をかけてすみません。日曜の朝、あれから昔の友達が来て、街に遊びに出かけました」
「アホか、おまえは!」
 
私は、亜子の大きな瞳をじっと覗き込みました。
ちょっと疲れ気味ですが、一点の陰りの無いいつもの光。
 
 
イメージ 1イメージ 2イメージ 3注2)写真は札幌羊ヶ丘展望台『クラーク博士像』と『札幌ブランバーチ・チャペル
 
 
それにしても連日丑三つ時帰宅の場合は参りましたね。
 
最初は、布団に入ってから羊を数えました。
札幌羊ヶ丘展望台の柵を越える羊です。
 
イメージ 4
 
「羊が一匹、羊が二匹、~~~~~~」
 
ところが、私が二度観た羊ヶ丘の羊は、二度とも五匹だけ。
 
だから五匹しか数えられない。
 
 
 
五匹数え終わると、再度「羊が一匹、羊が二匹、~~~~~~」
 
半月程、毎夜、これを繰り返しましたね。
これでは、埒があかない。何度数えても眠くならない。
 
眼が疲れてようやく眠れるのが朝方。
眠ったと思ったら、妻に起される。
 
遅刻する訳にはいかない。
毎日、睡眠不足。
 
 
そこで羊を止めて、知人の顔をイメージして、オールカラーで見られるように毎夜何度も何度も繰り返しました。
 
一ヶ月後、ようやくカラーイメージ像が定着したとたん、一瞬で消えてしまう。
それ以上は出来ない。
 
無論眼精疲労に陥るが眠れない。
同じく浅い睡魔が襲って来るのは夜が明けてから。
 
  
注3)この記事での掲載写真は、PHOTO DREAMを運営者の方から許可をいただいたものです。 
 


(続編)

私の履歴書・40歳代北海道編 目次(1)~(3)