竹林はるか遠く(4)


米国中学過程歴史教科書副読本を日本で日本語訳『竹林はるか遠く』が出版される前に、英文の副読本を訳した人がユーチューブで書かれたものの文字起こし版。

今回は母が亡くなり、たった二人の十代姉妹のどん底どん底編です。

                    ◆

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大東亜戦争(太平洋戦争)が終戦となり日本は敗北。
筆者が住んでいた朝鮮半島北部に朝鮮共産軍が侵攻。
朝鮮人と共産軍が日本本土へ引き揚げる日本人引揚者を襲撃し強姦し、殺戮する地獄絵図。ほうほうのていで日本の土を踏み、爆撃されていない京都に行きます。



竹林はるか遠く(2)
竹林はるか遠く(3)


以下、この続編 『竹林はるか遠く(4)』 です。

        
          ◆       ◆       ◆

校長が父について聞き、母が答える。
校長「喜んで受け入れなければ。追いつけると思う」
校長が必要なものを説明。
事務員のアサダさんを紹介。

アサダさんがヨーコの書類を見る。
アサダ「朝鮮とは教育方式が違います。テストしましょう」
母が、校長にお辞儀、私に3円渡す。
私「行かないで」、母「路面電車の3番で帰りなさい」「姉の学校の手続きがあります。」
母が去っていった。私は孤独で涙を流した。
ハンカチがないので、袖で涙をぬぐう。
テストが終わった。


アサダさんがテストをみて「とてもよいです」と言った。。
校長とアサダさんがやさしく、この学校が好きになる。
校長が生徒手帳をくれる。
アサダさんと一緒に教室へ行く。
30人の生徒が私を見る。
紹介され、お辞儀をすると生徒が笑いだす。
「静かに、彼女は朝鮮から戻ったばかり。よい生徒です。慣れるのに協力してください」とアサダさんが言ってくれる。

掃除当番を決められ、着席する。
他の子は綺麗な服、長い髪で、私は場違いに感じた。
歴史の男教師が来て授業。
私は、鉛筆もノートも無い、聞くだけ。
孤独を感じ涙が出る。
ゴミ箱から紙を拾う。鉛筆はない。

他の女性とが「紙欲しい?」と紙飛行機を折って私に投げてきた。
他の生徒が笑う。
私は無視して紙を集めた。食料集めより楽だった。
私は雑巾が無かった。ほうき係をしたが、そのそばからゴミを再び散乱された。
もし、彼らが私達家族の体験をしたら、同情するだろうと思った。


ゴミ回収(用務員)のおじさんがくる。おじさんはどもり。女子がマネをする。
後で、用務員のおじさんに焼却炉について聞き、事情をゆっくり説明。
焼却炉の前で、鉛筆と紙きれを沢山得る。
路面電車の中で、歴史と地理の授業内容を書く。


古本の教科書を買えるまで、アサダさんに教科書をかりようと思った。
京都駅について、母の元へ戻る。
紙と鉛筆を見せる。
コウは戻ってない。
母「お父さんが戻るまでの辛抱です」
コウは結局、大学に合格した。

ベンチで勉強し、ゴミ箱から食料を調達した。
六か月分の授業料が払われた。
母は明日、早朝列車で北に行くと。
「朝鮮からある程度のお金はもってきた」と母。
母が出発した。

コウが学校用の荷物を手提げ袋に用意してくれた。
「駅の時計の下で学校終わったら会いましょう」とコウ。
私が教室に入ったら他の女子が「ゴミの為に袋を持ってきたの?」と言ってきた。
この時は私は口答えした「何か問題ある?」
他の女子全員が笑った。
私は、コウが意に介さないといっていたのを思い出した。
しかし、心の底ではコイツラをたたきのめしてやりたかった。

ゆっくり話すとゴミ収集男は話ができた。
京都はナナムよりかなり暖かいとか話した。
ゴミ収集男はコンパス、ハサミ、計算尺、辞書を取っておいてくれた。
父の教え(ゆっくり話せば大丈夫)は正しかった。

5回目の朝に女子が掲示板に集まっていた。
私の焼却炉でのゴミ拾いしている絵が描かれたいた。
「民主主義制度!嵯峨野はゴミ拾いを受け入れた!」と書かれていた。
私は、もうこの教室で過ごす事はないと思った。
ゴミ収集男は「このくそ女ども!」と叫んでくれた。絵を引き裂いてくれた。
「教室に行きなさい」と男は言ってくれた。笑顔で返すと「そう笑顔で」と言ってくれた。
なんとか教室をやりすごし、焼却炉で長めにいた。
もう学校にくるつもりは無かった。

駅に戻って、コウにどう言おうか考えた。
まだコウが戻ってないのをホッとした。
帰宅の人々が羨ましかった。家があり、家族があり。

コウが返ってきた。食料調達に行く。数時間後にまた来よう。
「その後で宿題をやろう」とコウ。
結局、コウに言えなかった。数日間なんとか学校を耐えた。

金曜日、母が帰ってくる日、コウに学校をやめられるか聞いた。
コウ「だめ、授業料も払ってるし、あなたは無駄な日を過ごすことはできない」
母が来る日、学校が終わるのが待ち切れなかった。
軽蔑の目が来ても、焼却炉に走っていき紙を集め、走って路面電車にいく。
母を見つけた。毛布をは羽織り、小さく見えた。
「おかえり。寂しかった」と再会。


青森では、母の両親と父の両親が7月の爆撃で死んでいた。
母「土地を売りに出し、もしヒデヨか、父から連絡があればと、コウの学校の住所を役場に書き置きしてきた」
スペースができたので母は横になる。
私は母を守らなければと思った。
母「喉が渇いた」私は井戸に行った。

母に水をくみに行った。
母は病気だった。
水を飲んで、また頭を上げた。
母「コウに会いたい」
私「食料をもってくるよ」
コウが早く帰ってくればいいのにと思った。

<9.母の死と新生活 >
母の頭が滑り、右手が落ちた。母は死んだ。
泣き叫ぶと周囲に人が集まった。
警察に事情を聞かれ、医者が呼ばれ死亡確認された。
やっとコウが帰ってきた。
驚き、信じられない様子でひざまづく。
そしてコウは泣きだす。


ナナムから全ての道を用意してくれたのに、なんで今なの?
母に飛び込んで泣いた。
持ってきた食料を床に投げつけた。
乞食や孤児が集まった。
警察が葬儀業者を呼ぶ。
葬儀業者が棺桶の希望聞く。
値段を聞くと20円。
私はコウに朝鮮語で「ぼったくられてる」という。コウも頷く。
ガソリンとトラックの使用、車で1時間半かかるとの事。
コウは計算して車種を聞いた「ダットサン
「車と板だけ用意して。市役所に頼む」とコウ。
「市役所なら無料でやってくれる」とコウ。
業者の男は出て行こうとしたが、再度振り返り「私達がやりますよ」
警察が、私達の周りの人を追い払ってくれた。
コウと私は母を清めた。
母の隠しポケットの証券やコイン、朝鮮からの避難民証明書、大切な剣をザックに入れる。
母の靴下を脱がせコウがはいた。
コウは母の手を胸で合わせた。

駅にいた婦人(駅住人でははない)が声をかけてきた。
「マスダといいます。お気の毒です。なにかお手伝いできますか?」
コウ「私達はトラックを待ってます」
マスダさん「私はあなた方が到着してからみてました。お母さんがどこに行ったのかと思ってました」
コウ「母はいくつかの用をたしに北にいってました。母も貴方が来てくれて喜ぶと思います」
マスダさん「すぐ近くに火葬場があります。一時間半も走る必要は無いです」
コウ「でも、誰かお待ちになってるんじゃないですか?」
マスダさん「私は姪がソウルから帰るのを待ってます。最終列車に乗ってなかったので家に帰るところです」
トラックの男が来て母を乗せた。
コウと私は側に飛び乗った。
マスダさんは東山火葬場を指示した。

たった、20分だった。
マスダさんは運転手に5円払った。
火葬場の人が炉まで母を運ぶ。
私は泣いてマスダさんをつかんだ。
コウはしっかり炉の火をみていた。
火は早く燃え広がった。私は見られなかった。
火葬場の人「翌朝完了です。骨壷を選べます」
コウ「自分で持ってきます」


駅への帰り途振り返ると煙が立ち上っていた。
マスダさん「行く場所はあるの?」
コウ「ないです。妹と私は半年、この街にいたいのですが」学校について説明した。
マスダさんの夫が市の西部で下駄工場をやっていて、「倉庫に泥棒が入られた。私達がそこに滞在してもらえるとうれしい。
学校は近くなる」との事。

コウは感謝し、明日母のお骨を受け取った後、駅で再会する事に。
悲しみのあまり、この申し出の喜びもなかった。
寝られなかった。
翌朝、再び火葬場へ。
小さな骨になった母。
私はむせび泣いた「お母さん!」

コウは火葬の費用を払い、骨壷を持って火葬場を出た。
お寺の僧にお経をお願いしたら「時間がない」と断られる。
コウ「糞坊主!ただの仕事か?愛は?」
私は、人生で二度と仏教の寺に入らないことに決めた。
マスダさんが倉庫に案内してくれた。
路面電車の線路の隣だった。

倉庫の二階に4畳の部屋と最低限の電球。
外で料理と、木の切りくずを使う事ができるとの事。
「長い間掃除してないから」とほうきとバケツと雑巾を貸してくれた。
クモの巣を払い、掃き掃除、拭き掃除。
掃除が終わったら手と顔を洗った。

部屋に母さんの簡単な祭壇をつくった。
バスタオルを折ってその上の骨壷を置いた。
水筒にカエデの枝を入れて置いた。
母の宝物の短剣を骨壷の前に置いた。
コウと私で母に見守ってくださいとお願いした。
コウは「30分早く駅に戻っていたら」とむせび泣いた。
「コウにくよくよするな」と言い私も泣いた。
私「母は服で身を包みなさい。と言ってた」
コウ「当然。下着、他の服、紙も含んで。ザックよりも重要」
深い悲しみの状況ではそんな事どうだっていい。
駅で食料調達じゃなく、部屋で休憩する事に

部屋には時計がない。
暗くなってきたので毛布でコウと寝る。
駅より寒いが、襲われることがないので安心。
母の最後の言葉が繰り返し思い起こされる。
母の最後の言葉が気になって眠れない。
コウにその事を言う。
トイレの下着と服のやりかたをコウに説明される。

コウに暖められて眠る。
路面電車の笛の音で目覚める。
コウはいびきをかいていた。
コウが作る朝食が楽しみ。
マスダさんが葬儀トラックの5円払ってくれたから、コウは20円もってる。
温かいごはんにみそ汁。
おなかがすいてきた。
コウが早く起きないかな。

                           つづく

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