暗闇の中の黄金岬

 
 
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      私の履歴書・360
 
 
目が覚める。
(まぶた)が重い。
 
今は何処?
何処を走っているのだろう?
 
時計を見ました。
午前一時。
もう2時間も走っていることになる。
 
何処に行くのだろう?
また睡魔に襲われました。
 
 
 
「所長!起きて下さい。着きました」
時計を見ますと、午前二時はとうに回っていました。
 
車の外に出ました。
横殴りの吹雪が私を襲う。
 
そこは、小さな公園でした。
「所長、ここが留萌(るもい)・黄金岬です」
 
 
公園の柵の向こうは何も見えない。
暗闇の世界。
 
何故私をここに連れて来たのだろう。
青春時代の思い出の場所なのだろうか。
 
彼女の手に引かれて柵に寄りかかる。
 
闇の向こうから私を襲うのは限りなき無数の雪つぶて。
風の鋭い叫び。
磯に炸裂する波の音。
 
闇の彼方(かなた)には荒れ狂う日本海が広がっているはず。
 
思いは『無常』でしたね。
うたたかの世界。
色々な事が走馬灯のように頭をよぎりました。
 
雪は小止みになりかかるも、依然と暗闇からの水平なる風。
振り返ると彼女は十数歩後方横手にたたずんでいました。
 
 注)日高三股氏の画像。
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「すまん、すまん。帰ろうか」
私は、車の傍に歩みました。
 
でも、彼女は先ほどの位置にたたずんだまま。
 
この公園の端にある一箇所だけの街灯。
その光の微かに届くその場所。
 .
.
どうしたのだろう?
引き返して、彼女を覗きました。
 
彼女は、私を見上げました。
涙をいっぱい浮かべながら。
微笑みながら。
 
 
いとしさで張り裂ける程の私の胸。
 
抱きしめました。
力いっぱい。
 
抱き合いました。
 
やがて、身を離そうとしたとき、
私を見上げている彼女の瞳は静かに閉じ、唇が微かに開きました。
 
小さな可愛い濡れた唇。
小刻みに震えながら。
 
唇を求め合いました。
溢れ(あふれ)出る涙。
 
 
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手前がその小さな公園
 
 
 
 
 
 
 
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留萌慕情(5)
 
 
 
追記)
 
 



(続く)
私の履歴書・361 雪雲に煙る旭川の街を見下ろす      留萌慕情(6)
赤いネオンのラブホを真下に、越えられぬ私達。