雪の旭川を相合傘で

 
 
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        私の履歴書・359
 
 
何度か電話がかかってきました。
 
でも、私のスケジュールには余裕が有りませんでした。私が避けていると思ったのでしょうか。
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由紀ちゃん
「所長、旭川で所長のスケジュールを知りたいと言っていますが」
 
それで、私のダイアリーを由紀ちゃんに渡しました。
由紀ちゃんは、二ヶ月分のページをコピーし、それをFAXで旭川に送信しました。
 
翌日でしょうか。伊織さんからの電話。
「所長、今度旭川に来る時は、お昼に旭川駅で斎木さんと待ち合わせでしょう。
その前日に旭川に入って!」
 
「入ってと言われても、夕方に打ち合わせが入っているから、札幌駅から乗れるのは夜の8時の特急で、旭川に着くのが10時前になるよ」
「それでもいいでしょう?」
 
そして当日、部下に車で札幌駅まで送らせるも特急電車は雪で遅れている。
ホームに飛び交う猛吹雪。
 
本州の雪とは違う。
パウダースノーが激しく荒れ狂う。
 
これでは、まともには着かない。
果たして何時になるか。
 
ホームの駅ソバを食べて少しは空腹を満たす。
夕食は、旭川に着いてから居酒屋でゆっくりとろう。
 
先頭が雪の塊のような電車に乗車するも、更に遅れて旭川駅着が11時頃。
降雪が激しいのでタクシーに乗車。
 
三六街に近い旭川ワシントンホテルのフロントに私へのメッージ。
伊織さんからでした。
 
「ホテルに入ったら、電話下さい」 そして電話番号と。
電話をしました。
 
ホテルの近くの友人の店で待機していたそうです。
間も無くホテルのドアにその姿が見えました。
 
にこやかな顔。
ほっとしました。
 
「所長、出かけましょう」
「今の時間だったら、何処が開いているかな?」
 
外に出ました。
相変わらずの雪。
 
「所長、御飯は食べましたか?」
「札幌駅ホームで立ち食いそばを食べたよ」
「まあ。それじゃ、所長を連れて行きたいところがあります。駐車場まで歩いて下さらない?」
 
郊外にある深夜営業の飲食店に行くのかと思いました。
 
 
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伊織さんの小さな傘で相合傘。
左後方の大雪(だいせつ)山を見上げましたが、見えるはずはありませんね。
 
灰色の闇の中から、沢山の雪が舞い降りてくる。
この時は殊更大きな雪でした。
「今夜はおゝ雪になりそうですわ」
 
恐らく二条通りを西に歩いたのでしょう。
私が右手で傘を持ち、左手は伊織さんの背中を回して左肩へ。
女性と歩く時のいつもの私のパターン。
 
ちょっと首を下げて伊織さんの顔を覗きました。
怒ったかな?
 
瞳は潤んでいました。
涙でした。
頬も濡れていました。
 
微笑みました。
私を見上げながら。
 
この瞬間、お互い、心は恋人同士でしたね。
 
 
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 (写真は、ブログ友・日高三股さんの画像を使っております)
 
駐車場で伊織さんの運転する車に乗りました。
もう車の屋根には5cmほどの雪が積もっていました。
 
何処に行くかは聞きませんでした。
やがて旭川の街の光が途絶え、ヘッドライトの光だけ。
 
前方に見えるは白い道路と除雪された両側の雪の壁
そろそろかな?
 
お互い無言。
 
暖房が効いてきて心地良い室温。
眠い!
 
助手席で、そのまま眠ってしまいました。
 
                                                             留萌慕情(4)



(続く)
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吹雪の黄金岬で、抱き合いました。熱きくちづけ。