目的とは? 客観的視点とは?

 
 
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      私の履歴書・331
 
顧客の支持があってこそ我社が存続し、その社員としての我々がある。
 
今では当然のCS (顧客満足)ですね。
( Customer Satisfaction カスタマーサティスファクション )
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社員には毎日の朝礼で、全員、挨拶の訓練をさせました。
一つの言葉を言う都度、徐に腰を引き、腰を30度に曲げる動作です。
 
「いらっしゃいませ」
「少々お待ちくださいませ」
「かしこまりました」
「ありがとう御座います」
「ありがとう御座いました」
 
 
電話の受付も、最も重要な事の一つですね。
顧客は、電話を通して我社を判断しますから。
 
問題は、総務の森口係長(仮称)の顧客との電話で、電話を切るとき。
「ガチャン」と切ります。
 
「受話器は静かに置きなさい。耳元でガチャンと切られた顧客は何と思うか」
 
注)この電話の切り方は、本社会計・経理部門出身者の悪しき慣習。
イチカンからの出向者が広めたもの。
 
当初、注意をした時は直ったと思いました。
処が出張中、我が札幌営業所に電話をして彼が出た場合、最後に「ガチャン!」
 
これでは遺憾!
帰社して早々、彼の机の横に立ち、彼に電話を静かに置かせる練習をさせる。
暫らくはその指導通りに静かに受話器を置く。
 
だが、忘れた頃に始まる「ガチャン!」
何というしぶとい男よ!
 
彼の日報にも電話の事でコメントを書くのですが、埒が開かない。
クレヨンのようなべったりとした赤鉛筆で大きく書いたこともありましたね。
 
こういう繰り返しが半年以上(一年間?)続きました。
 
 
或る日の事ですね。
私の目の前で「ガチャン!」と受話器を置く彼。
 
私、堪忍袋の緒が切れる。
「バカモン! なんじゃ、その受話器の置き方は!」
「何を仰るのですか! ちゃんと静かに切っているじゃありませんか」
 
「何処が静かに置いているのか! もう一度やってみい!」
「この通りです」と言いながら、彼は受話器を再度「ガチャン」と置きました。
 
「ガチャンと置いているじゃないか!」
「いえ、こうして静かに切っているじゃないですか」
「??もう一度やってみい!」
 
 
大笑いしましたね。
成る程! 成る程! 
彼の思考回路では次の等式が成立つ。
 
『静かに受話器を置くこととは』 ⇒ 『受話器で電話を静かに切ること』
 
確かに静かにそっと電話は切っている。
つまり、半年前から静かに電話を切っていたのだ。
 
 
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受話器は、話す所が口元になるマイク。(写真記号①)
聴く所が耳に当てるスピーカーですね。(写真記号③)
 
通話が切れるのは、受話器のスピーカー部分③が電話器本体のスイッチ④を押すからですね。
 
彼は、このスイッチを切る時の音が「ガチャン」という音の根源だと思っていたのです。(写真図③が④のスイッチを押す)
昔の黒電話や公衆電話でしたら 分からんでもない。
 
 
だから話し終わってから電話を切る時の彼の手順
 
手順1)先ず受話器のマイク側先端①を本体②にガチンと当てて、
手順2)その先端①を軸としてそっと静かにスピーカー側を前に倒して
手順3)そっとスピーカー側③でスイッチ④を押して受話器を本体に置く
 
ここで問題なのは、手順1)でもマイクの先端①が本体②に当たる衝撃音ですね。
この衝撃音は力が入っているからコツンとかいう程度ではない。
 
ガツンという衝撃音と衝撃をマイク①が拾い相手に送信。
それから受話器のスピーカー③の方で音も無く電話を切る。
 
つまり、そっと受話器を置く目的が何であるかは論外になっている。
 
何れにしても受話器の何処かに衝撃を与えたら、マイク①がその衝撃音を拾う。
そっと静かに電話を切ることが目的になってしまったからこういう結果となる。
 
彼は顔を真っ赤にしていましたね
 
私と由紀ちゃんは大笑い。
由紀ちゃんなんか手を叩いて更に腹を抱えて大変でした。
 
これで一件落着と思ったのですが、
 
彼の従来の癖は身に付いてしまってなかなか直らない。
ガチャンと電話を切った後に「すみません! やってしまいました」と声が聞こえる。
 
「よし、それは私が解決してあげよう」
 
そこで由紀ちゃんに食器洗い用スポンジを買ってきてもらい、それを薄目に切って彼の電話機のマイク部分①が当たる所②にガムテープで貼りました。
 
由紀ちゃんが、またもやお腹を抱えて大笑い。
 
このスポンジを外せるまでは更に半年はかかったでしょうか。
いやはや、お目にかかった事が無い彼の30歳過ぎの奥さんがどんなに気の毒に思えたか。
 
 
注)この書庫に登場人物の名前は全て仮称です。