眼で物を言う女性を採用したいけど

 
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6月下旬には、人事異動がありました。 
 
名古屋支店総務課の森口主任(34歳)が札幌営業所の総務係長として転勤してきました。
 
結婚して1年ですから、新婚のうちですね。
 
 
森口係長が最初にした仕事と言えば、事務員の由紀さんを度々泣かせた事。
物の言い方が、指導的立場からではなく、人格までも全面否定しますからね。
 
「君はよくそれで結婚できたね」
「えぇ、諦めていたのですが、ラッキーでした。近所に世話好きなお婆さんがいて、見合い話を持ってきてくれたのです」
 
「名古屋の女性だったら、結婚式費用が半端じゃなかったろう?」
「それまでの貯金は全部飛びましたが、最初で最後のチャンスでしたから」
 
 
その彼に都度、話し方の指導をケース・スタディーで行うものの一向に改まらない。
そこそこの私大を出ているから、知能回路は普通だろうが社会生活を司る脳回路の何処かが未発達のようでしたね。
 
毎月やって来る仙台の松島総務課長も、都度、こんこんと諭すのだが。
それでも私の出張中に、当初は毎回。以後、年に1~2度それは起きる。
 
帰社しましたら、由紀さんが「所長、お話があります」と言ってくる。
応接で彼女と二人きりだと、彼女は一時間泣き崩れている。
 
この事は以前、この書庫のNO.244で書いていましたね。 
 
 
 
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その彼が或る日、自分で書いた稟議書を持ってきました。
 
「所長、ここのFAX機は古くて業務に支障があります。コピーと一緒になった大型の複合機を買いたいのですが」
 
メーカーはリコーで購入先はリコー名古屋とのことです。
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そこの営業マンは、私が以前本社勤務の時の新卒の部下。
名古屋支店に転勤後、ある事情で会社を辞職。
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だから私が無条件で稟議書に押印すると思ったのでしょうね。
私は、ゼロックスとの性能比較をするようにと言って出張に出かけました。
 
帰ってくると、リコーのデモ機(見本機)がデンと事務所で動いています。
 
「この比較表を見て下さい。送信スピードがこんなにも違いますから通信費が安くなります」
「この比較表は、リコーが作ったのではなく君が作ったものだろう?」
 
「よく分かりますね」
「一度に10枚送信する場合は?」
 
「出来ますけど」
「重ならずに送信されるかどうか見ていなきゃならんのかい?」
 
「確認したらいいじゃないですか?」
「と言うことは、君が10枚送信している間は君がFAXの前に立ち、その間、私は送信できないことになるね」
 
「言ってくれましたら私が終ってから所長の分を流しますが」
 
「計算し易いように事務員の一人当たりの月間経費100万円とすると、月20日勤務、一日8時間労働で、一分あたりのコストは?」
「(電卓を叩きながら)104円」
 
「それで、ここの営業所全員で送信する枚数が日に100枚としたら、FAX送信の電話代差額と送信にかかる人件費の差額とどちらが高いの?」
「人件費です」
 
「それじゃ、札幌のゼロックスを呼んで、デモ機を持ってこさせ、それで確認してみて下さい」
「分かりました」
 
ゼロックス札幌から営業員が来ました。
女性二名。両名短大新卒で入社。社歴三年生と一年生。
 
以前、女性事務員募集の履歴書の束を見ていた時、これら素晴らしい女性に営業をさせたらどんなに数字があがるだろうと思っていましたが、それが目の前にいる。
 
然し、話し方や物腰は、若いのに何となく生命保険のおばちゃんの域。
私が期待する女性営業員とは程遠い。
 
昔、東京の赤坂で出会ったミスワールド事務所の女性(この書庫No.131)のように目で詰めてくるところが無い。
 
やはり、あのような出来る女性はめったにいないのか。
意気消沈でしたね。
 
注)本当はここでこの記事を閉じて、秋に出会う亜子(アコ)の話しになるはずでしたが、もののはずみで以下の事を書いてしまいました。
 
 
ゼロックスがデモ機を事務所に持ってきました。
 
何日かしてから、森口係長が言いました。
「所長、リコーが見積価格から30万円更に値引きすると言ってきています」
 
「あのね、実際に時計を持って両方の機種を比較してみたのかね?」
「していません」
「実際に比較した数字を根拠に話をしようじゃないか」
 
数日後、彼は報告に来ました。
「差額は月間15万円です」
 
「年間では?」
180万」
 
「今度導入したとすると何年間使うの?」
「うちの会社はケチですから10年間は買い替えの許可が下りないでしょう」
 
「それは充分に可能性があるね。半分の5年間では?」
900万円です。約一千万円! 恐ろしい金額ですね」
 
事務機器というものは、上からの強制とか人間関係で選ぶものではない事が良く分かったでしょう」
ゼロックスと契約します」
 
            彼に関してのこの話は未だましな方でしたね。 
 
 
参考①)当時の札幌の状況
 
本社には大型コンピューターが入っており、各母店となる支店を核として各営業所に端末が入っていました。
 
北海道の場合は、それまで子会社でしたから、端末も繋がっていませんでした。
ですから、各出張所(函館・旭川・北見・釧路)から当月の売買契約書や経費帳簿コピーが札幌にFAXで送信されてきます。
 
札幌の総務がそれらを記帳し、改めて全部の書類を仙台支店にFAX送信する訳です。
 
仙台支店では、札幌だけからのFAXではありませんから、月末月初は混雑して勤務時間中では札幌から送信できないケースが大半でした。
 
ですから、月末月初はFAX送信作業だけで夜の11時頃まで残業なのです。
 
 
参考②)当時のリコーとゼロックスとの比較
 
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当時の新型リコー機には、FAX送信する文書を記憶する機能が無かったですね。送信回路のみ。但し、外形はゼロックスとうり二つ。
 
だから、例えば、仙台・東京・大阪の三箇所にファックスを送信したい場合は、先ず仙台に送信し、それが終ってから再度FAX機の前に立ち、東京に送信。
東京が終ったら、またまたFAX機の前に立ち大阪に送信。
 
 
対して、ゼロックスの場合は、仙台・東京・大阪に送信する文書を一旦サッと読み込んで記憶してしまう訳です。
 
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あとは、FAX機が勝手に仙台に送信が終ったら東京に送信。東京が終ったら大阪に送信する訳ですから、FAX機の前に立つのは一度だけ。
 
特に月末月初の回線が混んでいる時は、タイマーをかけて、各地への送信は午前2時に開始をセットしておくのです。