罵倒されたらチャンス!

 
 
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      私の履歴書・278
 
 
6月の全体会議で吉田本部長から罵倒されたことは、私にとって絶好のチャンス到来となりました。
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二日間の会議の終了後、皆さん、自分の勤務地に帰りました。
遠方で関西出身者の者は、自分の実家に。
 
私の場合、伊丹→札幌便がその時間ではもう無い故、更に一泊。
未だ勤務時間中ですから、吉田本部長の部下の淀川課長の机に行き彼と交渉。
 
私は訴えました。
 
太秦社長の私への指示はメンテナンスで、販売ではない』
『北海道の現社員の大半は、営業員ではなくメンテナンスマンである』
『拠って、吉田本部長の北海道誹謗の言動は、的外れ』
 
更に、『今後私が提出する稟議書の全てに、決裁可の印を無条件に押すべき』
『文句は、一年後に聞きましょう』
 
故に、淀川課長は吉田本部長を二点につき至急説得すること。
 
一点目は、北海道で5名の増員。
二点目は、この人件費一年分をBB営業本部が負担すること。
 
 
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話の途中、 吉田本部長がやって来ました。
 
「今夜どう?」 
 
私を罵倒した故、ホローのつもりでしょうね。
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彼は、殊更祇園が大好き。
それに帰路が祇園方向ですからね。
 
終業のベルが鳴ってからタクシーに同乗。
祇園を梯子。無論御茶屋の『福島』にも。
 
札幌に帰ってから、かねてからの構想を瞬時に書き上げ、BB部淀川課長に提出。
稟議書『営業員5名の増員とBB営業本部の経費負担』と共に。
 
後日、FAXで返信が来ました。
決裁内容は、基本給与額分のみ援助。
 
直ぐに、社員募集の広告掲載。
 
札幌営業部門では、赤沢君を中途採用25歳。
札幌メンテナンス部門では野末君を中途採用24歳。
旭川では、バイトの千葉君を説得し、正社員として雇用。
 
他方、釧路の並河君を札幌に戻す。但し、子作りに励むことを条件として。
その後任として、札幌の上野君を釧路に転勤命令。
 
 
この頃、BB営業本部の新たに打ち出した戦略とは。
 
『負ける事は赦さず。徹底的に勝て!』
『ブラウン社との競合で収益が取れなかった場合に、その損失額を補填する』
 
注)当時の全国シェアは、No.1がブラウン社。
僅差で二位が我社。三位以降はどんぐり。
 
これをどう解釈すべきか。
 
弱者が弱者たる所以は弱者。
申請書類に物件毎ブラウン社との競合状況を書いて、BB営業本部にFAX送信。
 
この書類の第一関門は、どうやら、営業事務の若き女性。
 
注)この女性の顔を思い出すのに苦労しました。
背は150cm。小顔。白い肌。大きな瞳。
だが名前は思い出せず。
 
送信されてきたFAXを見て、内容の是非を判断をするのが彼女の仕事。
上司の淀川課長と連絡がとれない場合は、この女性が決裁する。
 
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ここだ!
先ずは、ここを落とさなきゃ!
 
我が札幌営業所で、本社に出張する社員は神戸部長に岡田課長。
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この二人には、都度、千歳空港で一番小さな『白い恋人』を買うように要請。
それを本社の例の女性に「水無瀬所長からお土産」と言って渡すようにと。
 
本社の女性達の行動は分かっている。
本社には、その二年前までいましたからね。
 
彼女等は、三時の休憩時間に二十歳過ぎの女性だけ、別室で群れる。
場所は、使っていないミーテングルームでお茶に情報交換。
 
ここで貴重なのは、甘いお菓子。
それだけでは普通のこと。
 
ところが北海道の『白い恋人』となると話しは違ってくる。
白い恋人』を口にはむと広がる世界。
 
おしゃべりの内容は銀世界に。
ニセコ、ルスツとか。
 
彼女等が一番喜ぶのは、北海道のお土産ですからね。
 
 


 
この『白い恋人』のお土産を三度繰り返したら、彼女は私の名前を聞いただけで甘い唾液と心で奏でるフランシス・レイの曲。
 
所謂『パブロフの犬
 
私もそうでした。
 
申請書に嘘八百のブラウン社との競合状況を記入している時に思い出すのは、
営業事務の23歳にしてバツイチ子持ちの濡れた紅き唇。