アイスバーンで起こるべくして起きた事故
前回のあらすじ)
着任の挨拶も兼ねて道北・道東へ出発。
一旦留萌(るもい)に入り、旭川へ。
北見では、良い子の早寝。
一夜明けて、例の車で釧路・根室に向かう。
私の履歴書・253
1月30日(金) 北見(きたみ)から美幌(びほろ)町へ。
チラチラの雪が、ここで一変。
こんこんと降り出す。大雪になりそう。
ここで死神部長が曰く。
「この車で美幌峠の急カーブを下りるには危険」
今までの峠とは訳が違うと言う。
美幌峠を避けて回り道の方が安全だと言う。
お陰様で、無事、野上峠をクリア。
峠を下りて暫らく行くと直線道路が続く。
前方に見える先行車は、峠から一緒に走ってきた四台。
皆、車間距離は250m前後を維持。時速は80km。
先行車のスピードが少し落ちる。私もスピードダウン。
と、私の車を追い越す者がいる。
トヨタカローラ北海道販売の営業マンの車。
そして、私の前に割り込む。
それまでの先行車が私の視界から消える。
割り込まれたから、その車との車間距離は120m。
即、その車が三速にシフトダウンしてエンジンブレーキをかける。
雪の路面でエンジンブレーキをかける時は、一旦、フートブレーキを踏んで、テールランプを点灯させ、後続車に知らせるのだが。
テールランプの点灯が無い。
当時横行した『当られ屋』の手法だ。
点灯が無いから、対応が一瞬遅れる。
一気に車間距離は100m。
こちらも即座に三速にシフトダウンしようとしたのだが。
先方の車は、今度はブレーキを踏み、更に急激にスピードを落とす。
車間距離は80mを切る。
磨耗しているタイヤのスパイク。
一旦、三速にシフトダウン。
エンジンブレーキ三速では間に合わない。
かと言って、二速にしたら確実にスリップ。
でも二速にしないと停まれない。
二速にチェンジレバーを入れて、クラッチを踏んでいる足を僅かに引く。
とたん、車は車線を飛び出し、少し斜めになりながら反対車線を走行。
遙か向こうからやって来るバカでかい灰色のトラックが見える。
制御不能。このまま直進すると確実に正面衝突。
一瞬、車は道路右側・反対車線の路肩の雪をまたぐ。
またいだままで路肩を直進。
路肩の雪をバンバーがラッセル車のように雪をはじく。
その雪が、フロントガラスに当たり、前が全く見えない。
ハンドルを左に切る。
反対車線に踊り出る。
くるりと一回転。
五台停車している前から四台目の車の後部に左ヘッドライトの部分が当る。
車ははじかれ、
更に回転しながら惰性で前進。
今度は、車のお尻が前から二台目の車の後部に当る
再度はじかれ、今度はゆっくりと回転。
遊園地のコーヒーカップのスロー版。
やっと停止したのが巨大なゴミ運搬車の前。
大きなトラックでしたね。
下車して驚く。
見上げる程高いトラックの運転席。
車幅は片側一車線をはみ出している。
先頭を走行していた女性運転手は、走りながらすれ違うのが怖いから停まったのだという。
腰ほどの高さのバンバー。
そのバンバーとの距離50cmほど手前で停まったのですから。
注)荷台は、箱ではなく、ホッパー型
危うい所でした。
もしも、二台に当らなかったら、このトラックに正面衝突をしていた。
更に驚く。
滑る路面を見て改めてビックリ。
対向車線は、薄い氷が覆う。
対してこちらの走行車線全体は何故か段差が付いて高い。
さらりと道路を覆う新雪を掃ってみる。
何故?
黒いアスファルトが透き通って見える。
透明な氷の膜。
その厚さ10cm。
当に、スケートリンクや湖面の氷。
滑らない方が不思議。
皆、前の車に当たる寸前で辛うじて停まれたと言う。
運転者達は全員降りて、恐怖を語り合う。
それから弟子屈(てしかが)派出所へ。
幸いにも物損だけ。
もしも、割り込んだトヨタカローラ販売の車の後部に当ったら、玉突きで全車に衝突。
それに、ムチ打ちだったでしょうね。
私の車が反対車線に出たから、最悪の事態にならなかったのですね。
と言うものの、当った二台の車の人には迷惑をかけてしまいました。
然し、やはり、そうでしたね。
ジンクス通り。
死神部長を乗せて走ると必ず事故が起こると言うこと。
間違いではなかったですね。
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