オーラを発する女性の前で動けない

                   イメージ 1               
 
前回のあらすじ)
 
 1987年三月上旬に採用したあゆみさん。
オーラが漂う新卒の素敵な女性。
 
ガラの悪い環境で起こるべくして起きた事。
それは、あゆみさんの胃潰瘍
 
 
 
 
あゆみさんは、半月後、復職。
 
だが復職一ヵ月弱後、再度胃潰瘍で休養。
再度復職するも暫らくしたら休養の繰り返し。
 
夏になる直前でしたね。
父親から電話。
 
「これ以上、会社に迷惑をかけられない」
 
直ぐに駆けつけました。
訪問するのはお見舞いも含めて三度目。
 
今度も父親にお願いしました。
「体力が完全に回復するまで待ちます。お嬢さんをゆっくり静養させて下さい」
 
更に、
 
「お父さん、お嬢さんを休職扱いにして、秋まで待ちます。
営業所も変化してきました。秋には、まともな形になります。お願いします」
 
長い沈黙の後、
スーッとドアが開いて、あゆみさんが出て来ました。
 
寝ていたそうです。
パジャマ姿に淡い色のポレロを羽織って。
 
スッピンでしたね。
すっぴんのその弱々しい姿にもオーラ。
 
「所長、辞めさせて下さい。これ以上、ご迷惑はかけられません」
廊下にひざまずき、そう言ってうなだれました。
 
何かを言わなければ。
どう言ったら、復職の意思へと傾いてくれるのか。
 
然し、うなだれているあゆみさんを見ていると、思い直しました。
 
私の会社に勤務するのは不幸かもしれない。
もっと良い会社に勤務するのが相応しいかも。
 
「申し訳ありません。私の力不足で」
こうあゆみさんに言うのが精一杯でしたね。
 
 
 
それにしても私、あゆみさんと会社以外で会った記憶は一度だけ。
彼女の歓迎会を札幌ビール園で行った時ぐらいでしょうか。
 
仙台支店の松島総務課長が、毎月二度、札幌に来た都度、女子事務員二人とすすき野で会食してもらいました。松島課長の報告を聞いて安堵していましたね。
 
私の方は、月の半分以上が仙台と道内各支所出張。
札幌にいる時は、本社からの出張者対応とか、顧客との夜の会席。
 
他方、由紀さんの度々の言葉。
「あゆみさんは、所長の好きなタイプでしょう」
 
動けなかったですね。
あゆみさんと二人きりになり、話を聞かなければならない事は分かっているのに。
 
私、こうしなければならないと分かっていても、そのように動けない時が今でも。
何故でしょうかね。情けない性格ですね。