私の勝負手だった四時間の戦略講義

前回のあらすじ）
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残る広島での二日は、バタバタで終わりました。
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シャープ家電の無責任さ。
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送別会の騒動。
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正月早々から、引越し準備着手。

1987年1月4日

広島空港→千歳空港航路では、雲海で終始。
千歳空港には、神戸部長が迎えてくれました。

リムジンバスで、札幌駅前下車。
ワシントン第一ホテルの地下居酒屋やぐら茶屋へ。
そこで二人で飲んでから、私は、第二ワシントンに行きました。
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確か、最上階の部屋だったと思います。（写真北５西６）
窓の下の駐車場を見下ろしますと、いつか観た光景。
でも、こういう高所からの真下の雪の駐車場なんて見た事は無い。

椅子にもたれかかっている時に、突然閃きました。
これは、夏の終わりに、夢の中に現れた雪の夜景！

何とも言いようが無かったですね。
守護神は、私に既にここ札幌のこの部屋の窓辺に立つことを告知していたのです。

さて、いよいよ1月5日初出社に初出勤の着任初日。
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前夜、雪が降りましたから、朝は、早めにタクシーに乗車しました。
道路は除雪が行き届いて、あっと言う間に会社着。
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8時5分だったと思います。
誰も来ていません。

道路から入り口までの距離2mには、一夜で膝の高さまで新雪が積もっています。
その入り口には、年末から置きっぱなしの竹箒が立てかけてありました。

雪を漕いで行きますと、真綿の中を歩むような。
竹箒を手にし、雪を掃いてみました。

掃いた雪が舞うのですね。
秋田の湿った雪とは大違い。

雪の表面20cm～30cmは掃けるのですね。
感激しながら、喜びながら掃きましたね。

8時15分以降、社員が続々と出社してきました。
全員で事務所の前を除雪。

終って朝礼。
言う内容は、先月26日の朝礼の内容の繰り返しです。

「私達は、舞台に立った演技者」

10時頃、全員を連れて北海道神宮へ。
ここで全員お神酒とお祓いをしてもらいました。

途中、昼食を済ませてから神戸部長が用意した会議場へ。

そこは北星会館（仮称）の二階会議室。
午後1時ジャスト開始。

札幌を拠点とし、支所は函館・旭川・北見・釧路。
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函館の畠山社員が、多忙との事で欠席。
指示に従わない者が一人いた。
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出席者は二十数名。
この者全員が、反旗の血判状に名前を連ねた者達。
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私は只今四面楚歌の中。
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初めの私の挨拶は、またまた「我等は舞台に立った役者」
彼等の脳細胞に潜在的に植え付くまで言うつもりで。

後、各支所の発表。
さて、素直に各自、発表するだろうか。

指示した課題に従い、一人当たり5分間。
全員の報告を聞いて、先ずはほっとしましたね。

発表を拒否する者、皆無。

そして私との質疑応答。
それで1時間経過。

10分間の休憩。

それからが私の講義開始。
「孫子の兵法」「ランチェスター戦略」を原稿無しで四時間。

昨今でしたら、コーエーの三国志ゲームやオンラインゲームをやった事のある人は、結構詳しいでしょうね。

壇上から全員を見渡す。
熱心にメモをとる者はいるか？

午後六時終了。私の頭のてっぺんから足元まで白墨の粉だらけ。
30分の休憩後、一階の畳の間で宴会。

お膳が用意されており、私からビールを注ぎに回りました。
果たしてこの時に、戦略の話をする者がいるだろうか。

戦略的な物の考え方がある社員はいるのか。
戦略思考は無いが、日々の闘いに勝ちたいと思っている社員はいるか。

彼等の口から、戦略に関した言葉が出るのを待ちました。
その言葉が出てこなければ、恐らく、使い物にならないだろう。

見所のある社員が二名いましたね。
たった二名ですが、これは捨てたもんじゃないと思いましたね。

それに、これで彼等の反旗は破れたと思いましたね。

実は、この四時間の講義は、私の今後を占う勝負手でもありました。

大義名分は、社員の戦略教育。
ですが、この戦略教育を通しての一種の思想教育ですね。

本社に反旗を立てた指導者に戦略が無いことを社員に如何に悟らすか。
つまり、君達の血判状とは、低レベルの扇動者に踊らされたものであること。

拠って、扇動者である山川、坂上両課長の下では勝つことが出来ないということ。
更にこれにより、二人の求心力を無くすることですね。

更に更に、戦略の無い者は、戦略家には勝てないと言う事をそれとなく諭していた訳です。

結果、下記の内容を何となくですが認識したでしょう。

①　私に抵抗しても無駄。

②　発言力を欲しいならば、左手に黒字の決算書を持たなければならない。

③　私の指示通り動いたなら、確実に数字は上る。

④　私の指示を理解するためには、自ら勉強しなければ。

然し、あの時の私の胸中は、

総員、血判状に連署した者達ですから、もしも、この場で何かしらの抵抗が有った場合、
それが例え全員でも、この場で即刻解雇するつもりでした。全員、三ヵ月間の試用期間中ですからね。

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付記）この私の講義『孫子の兵法』の内容　（この考え方がその後、威力を発揮します）

尚、『ランチェスター戦略』について、既に何度か述べていましたね。

自分の管轄のマーケットの全容を把握。
ライバル社のシフト状況
ライバル社のトップの将としての器のレベル。
ライバル社に戦略家はいるか。
そしてそのレベルは如何に。

闘わずに勝つのがベスト。
闘わずして勝つシナリオとは

闘うなら勝つシナリオを立てよ。
勝てる状況になるまで動くな。

更に、
三国志諸葛孔明の陣法八陣（八卦の法）の各陣形の説明と、ランチェスター戦略との対比。

参考）八陣とは、地陣、鳥陣、風陣、虎陣、竜陣、天陣、蛇陣、雲陣

日本での八陣の呼称

『衡軛（こうやく）の陣』……
『鶴翼（かくよく）の陣』。
『長蛇（ちょうだ）の陣』
『雁行（がんこう）の陣』
『方円（ほうえん）陣』
『魚鱗（ぎょりん）の陣』
『鋒矢（ほうし）の陣』
『偃月（えんげつ）の陣』