未だ見ぬ北海道はピンクに輝く
前回のあらすじ)
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シャープ家電中国に手形を渡してしまった私。
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購入した機器は、現地シャープサービスでは直せず。
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工場での対策部品が出来るまでは数ヶ月かかるという。
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だが、45日後に確実に手形の満期日が来る。
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その額、182万5千円。
週が明けて第四週目の22日(月曜日)辰巳支店長が着任。
私は、自分の今までの席を彼に譲り、部下の机を借りて事務処理。
私は、自分の今までの席を彼に譲り、部下の机を借りて事務処理。
他方、12月の後半の毎夜は飲み会でした。
忘年会か送別会かクリスマスイブか判別の仕様が無い。
忘年会か送別会かクリスマスイブか判別の仕様が無い。
搭乗する機を見てびっくり。
馬鹿でかい。
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ボーイング747でしたね。
頭部がポコンと上に膨らんでいましたから。
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広島⇔千歳便は、この年の夏頃に開通したはず。
開通記念でにぎわった時期は終っての平日。
だだっ広い機内の搭乗客は僅か20人弱。(17人だったはず)
座席数は300~400程だったから、将に閑古鳥。
座席数は300~400程だったから、将に閑古鳥。
後方にポツンといる私。
拠って一人のスチュワーデスが私に付きっ切り。
拠って一人のスチュワーデスが私に付きっ切り。
それは近畿の上空を過ぎ去ろうとした下界から始まりました。
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雲が消えて、素晴らしい世界が眼下に繰り広げられたのです。
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日差しに輝く白銀の世界でした。
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冬の飛行機搭乗は初めてだったのです。
私は、スチュワーデスに尋ねました。
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木曾の御嶽さんの上空の時でしたね。
(標高3067m)
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まん丸のぱっくり開いた大きな火口。
「凄いですね、この冠雪の山は! 何と言う山なのですか?」
「私も、良く知らないのですよ」
「私も、良く知らないのですよ」
見上げると、そこには知性と理性に溢れた眼差。
眼が合いまして、はっとしましたね。
眼が合いまして、はっとしましたね。
恐らく24~25歳。
美しい!
一瞬、その瞳に魅入ってしまいました。
彼女は、航空地図を持って来ました。
そして私に聞きました。
そして私に聞きました。
「観光ですか? お仕事ですか?」
「実は転勤なのです。北海道が始めてなのです」
「実は転勤なのです。北海道が始めてなのです」
白いしなやかな指は地図を指差す。
「あの山はこれかしら。この峰はあれかも」
「あの山はこれかしら。この峰はあれかも」
彼女は、通路から座席の中に入り込み、更に身を乗り出す。
一つの楕円の窓から一緒に下界を観る。
一つの楕円の窓から一緒に下界を観る。
そそり立つ真白の山々を。
銀色に輝く連峰を。
銀色に輝く連峰を。
「こんなに素晴らしい光景は、初めてですわ!」
微かな息遣い。
その吐息の甘さよ。
その吐息の甘さよ。
鼓動は高まる。
熱きベーゼを夢見る!
熱きベーゼを夢見る!
こんな素晴らしい情景。
官費でこんなめぐり合わせ。
官費でこんなめぐり合わせ。
私は、何て幸せ者!
未踏の北海道のイメージがピンクに輝いてきましたね。
未踏の北海道のイメージがピンクに輝いてきましたね。
私は、甘い吐息の余韻にひたったまま、ニコニコ。
彼は怪訝(けげん)そうに私の顔を覗き込む。
彼は怪訝(けげん)そうに私の顔を覗き込む。
彼の奨めで滑り止めを買い靴底に貼る。
外は、ピリッとした冷気。
外は、ピリッとした冷気。
彼の運転する車の助手席へ滑り込む。
途中、恵庭に近い千歳の商店に寄る。修理で。
途中、恵庭に近い千歳の商店に寄る。修理で。
「所長は、車の中でいて下さい」
と言われるも、直ぐにドアを開けて外に出ました。
と言われるも、直ぐにドアを開けて外に出ました。
踏み締めると秋田の雪とは違う。
半凍状態。ザワリとする音。
半凍状態。ザワリとする音。
彼は、店の前で修理を始めました。
私は、相変わらず余韻が醒めず。
私は、相変わらず余韻が醒めず。
10分も経ったら、流石北海道。
ビシッと身体全体に冷気が刺さる。
ビシッと身体全体に冷気が刺さる。
「所長、車の中に入って下さい。冷えて来ましたから」
「私に構わず仕事を進めてくれ」
「私に構わず仕事を進めてくれ」
「処で、今の気温は何度?」
「冷えて来ましたから、マイナス10℃以下でしょうね」
「冷えて来ましたから、マイナス10℃以下でしょうね」
「これが、マイナス10℃か」
「千歳は、雪はたいした事は無いですが冷えますよ」
「千歳は、雪はたいした事は無いですが冷えますよ」
恐らく、かって再建に来た本社の連中は、寒いと言って車に入ったかも。
でも、私は彼等とは違う。
でも、私は彼等とは違う。
冷気は、どんどん身体の芯を襲ってくる。
でも、あの、可愛い赤い唇が目に浮かぶ。
都度、思い出される甘い吐息のあの感覚。
気管支と胸の中だけは何故か熱い。
気管支と胸の中だけは何故か熱い。