緊急呼び出し! 札幌で何が起きたのか?

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前回のあらすじ)
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子会社の解散広告を、北海道新聞と他四紙に12月中旬に打つという。
ライバル社にとって絶好のチャンス。
札幌市場も根こそぎ奪取されてしまう。
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絶対絶命。
市場も、私の懐も。
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山陽新幹線の座席に身を委ねる私。
思考能力を失った私。


私の履歴書・232

広島駅着は、午後九時半を回っていました。
新幹線の改札を出た所で会社に電話。

予定通りという。
駅正面からタクシーに乗り、流川のくだんのクラブへ。

店は混んでいた。
何しろ花金。

右奥の大きなボックスに彼等はいた。
㈱ウズマサの大林係長と我社の社員10名程。

彼等は主役の私の到着を待ちきれず始めている。
改めてのビールで乾杯。

ウイスキーに切り替える。
お嬢さん達が、水割りを作ってくれる。

残念でたまらない。
せっかく築いた基礎と、見えてきた明るい未来。

何杯か立て続けに飲みましたね。
一人ずつと乾杯を繰り返しながら。

それにしても今日は色々なことが有り過ぎた。
疲れがドッと襲ってきましたね。

いつの間にか両脇にいるはずの素敵なお嬢さん達がいない。
代わって両脇にいるのは、色気のないウチの男社員。

二人の女性と席を交替している。
村主社員と沢木社員。ぴったりと私の両側にくっついて。

薄明かりの中、彼等の顔は笑っている。
でも眼は沈んでいる。

二人とも不便(ふびん)な奴!
私が去ったらどうなる?

ドジと話し下手。
引き継ぐ辰巳支店長(当時51歳)にいじめられるかも。

彼等をもっと叱るべきだった。
もっと仕事のレベルを上げておくべきだった。

私の及ぶ力もこれまでか。
沢木社員の肩に左肘を乗せました。

彼の体温がじわっと伝わる。
自分の左腕の中に顔を伏せました。

可愛そうな息子達よ!
涙が流れてきましたね。

人は、北海道に行く時に泣くと言う。
北海道から本州に帰る時も泣くと言う。

通説では二度泣く。
涙を流す理由は、人夫々異なる。


「水無瀬常務の送別会に、ホステスが一人もいないじゃないか!」
大林係長の大層ご立腹の声で顔を上げる。

素敵な女性の皆さんは消えている。
それは、已むを得なし。

飲んでアルコールが回ってきたら、彼の眼は細目になる。
それからが、五月蝿い。

ホステスの皆さんは、この事をご存知。
いつもの事。だから消えたのです。

御機嫌を損ねた大林係長は、クラブの店長と大もめ。
私等は、また始まったと大笑い。

店を出る時も、依然店長と店先で小突きあい。
店長に最後に言われた言葉。

「もう、来ないで下さい」


明けて12月第二週目、引継ぎ書を先ず作成。
週の前半はこれで消えました。

週の後半は、福岡の辰巳支店長が来て、引継ぎ業務。
この時も、人的引継ぎの為、毎夜、流川で接待会席。

第三週目月曜日のこと、室長から緊急電話。
「明日、日帰りでいいから本社に来て下さい」

「何か起きたのですか?」
「今は話せない。来たら話す」

何が起きたのだろう。
只事では無い。

翌日、広島始発の新幹線に乗車。
㈱ウズマサ本社に入ったのは、九時を回ってから。

すれ違う人、すれ違う人、全ての人に声を掛けられました。
「水無瀬常務、大変な所に転勤ですね」
皆、言う言葉は同じ。

意味が分からない。
札幌って何がそんなに大変なのか。

数字が悪い支所なんてザラにある。それでとは思えず。
それでは札幌とは、関西人にとっては厳寒氷結の地だから?

管理室に入りましたら、社長秘書が待機していました。

「水無瀬常務、池内室長との話が終りましたら、社長室にお入いり下さい。
太秦社長が、水無瀬常務にお話があるそうです」

一体、何が起きたのか?