諦めかけたライバル社からの受注

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新年明けましておめでとう御座います。
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今回の記事が《私の履歴書》の今年の第一号ですね。
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今年も相変わらずのご愛読の程、宜しくお願い致します。




さて、前回のあらすじ

ライバルSD社広島支店の応接室に乗り込んだ私は、敵対する営業マン二十数名に取り囲まれました。

私は立ち上がり、SD社への恩返しの理由、我社の事業コンセプトと社員教育の実態を、拳を握りながら叫びました。

私の履歴書218

1986年 晩春

SD社広島市店長の可否の回答は、5日後です。
待ちました。じりじりしながら。

5日が経過。何等連絡は有りません。
あの応接室で、あんなことを言わなければよかった!
あれはこう言うべきだった!

後悔ばかりでしたね。
そもそも、ライバルが我社に仕事を与えるはずは無かったのだ!

期待した私が愚かだった!
エライコッチャ!

約束の回答の来る日から二日ほど過ぎた或る日の夕方のこと。
帰社しましたらSD社の本郷課長から電話が入っているとのメモ。

何で今頃?

「もしもし、水無瀬ですが、お電話を頂いたそうで」
「あぁ、水無瀬常務? 明日でいいから書類を受け取りに誰かを寄越してくれ」

「書類と言いますと?」
「実は、支店長の東京出張が数日伸びて帰ってきたのが昨夜だったんだ。
それで水無瀬常務への回答が遅れたのだよ」

「それで、支店長さんの返事は?」
「君の会社にも頼む事にしたよ」

「有難う御座います! 有難う御座います!」
「初めからそんなに仕事は出せないよ」
「結構です。一件でも二件でも。今から書類を貰いに行きます」

電話を切るなり社内で叫びました。
「やったぞぉ~!」
まさかの事でした。

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最初の仕事は、大型アイスケース二台の納品でした。
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(アイスクリーム用冷凍ショーケース デュアルタイプ グリコ用特殊仕様)
(左の写真は今のタイプ。当時はこの本体の上にコンプレッサーが載っていた)
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グリコ仕様でSD社が特別に作ったもの。規格外でデカイ。
納入先は、熊野のスーパーマーケット

このケースは平ボデーのトラックに乗せられ、九州からフェリーで朝の7時半過ぎに宇品港着。
午前8時、路上で我社のユニック車に乗せ替え。

積み終わると熊野町広島県安芸郡)に向かいました。
広島市内から東へひと山越えれば熊野町

熊野のスーパーマーケットには、社員6名を待機させています。
現場ではSD社の社員二名と江崎グリコの担当者が待ち受けていました。


ケースの記憶にある概算寸法が、幅が2m超、高さが2m20cm超。
コンプレッサーを最上部に乗せたタイプ。こんな大きなものにお目にかかったことはない。

ここのスーパーのガラスドアの高さは2m弱だったと思います。
まともには入れられません。(現在最大でも2m20cm)

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ユニックの車上でケースの木枠梱包を解き、吊り上げて平台車に載せます。
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それで入り口まで動かして10人がかりで本体を斜めにしてドアをくぐらせます。
これが二台で二回。

電源を入れると庫内の蛍光灯が点灯。
コンプレッサーが回転しているような音。

どうやら正常に稼動を始めたようです。
そこで、メンテナンスの社員達を帰らせ、残ったのは村主社員と私の二人だけ。

処が、アイスケースの前でSD社の社員とグリコの社員の様子が変。
冷えてこないと言うのです。

これは困った!
初っぱなから、初期不良の機械に当ってしまった!

「村主君よ! コンプレッサーが回っているのに冷えないと言っているよ」
村主社員 「あぁ、それでしたらひょっとして。見てみましょう」

そう言って彼はドライバーを片手にニヤニヤしながら彼等に近づきました。
いつもと違い妙に自信有り気に。

それからアイスケースのカバーを開けて回転していないことを確認。
ケースの電源を落としてから、バックヤードにあるブレーカーをいじりました。

三相交流の三本の線を入れ替えたのです。
注)逆相 三相200Vの三本の線の繋ぐ順序が逆のこと

電源をONすると、たちまち冷え出しました。
それから彼等SD社員とグリコ社員に逆相の説明をしました。

流石!流石! 高い銭を出して東京や大阪での講習会に参加させた甲斐があったもの。

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これで、SD社員の我等に注がれる眼差しは一変。
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そして、搭載してきたユニック車の傍に来て、しげしげと車を見上げました。
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「これなら今までトラックニ台の所を一台で運べる」
「超尺物でも運べる」
「プレハブ冷蔵庫の機材一式も楽に積めますね」


以後、SD社から順調に仕事が回って来ました。
これで、先ずは一件落着。