頼もしく成長していく社員達とシステムの改革

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営業の重要性を、昨今程、思い知らされることはありませんね。
メーカーや生産者は、売れて何ぼの世界ですからね。
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では、弁護士・公認会計士・税理士・一級建築士プログラマー・SEなどの現状はどうでしょうか。
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昨今、年収200万円未満の弁護士や仕事の無い一級建築士などがゴロゴロ。過去花形であったSEは、今や首切対象。
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実は、彼等の場合、他所から仕事を取って来て初めてその高度技術を発揮できるのですね。

私の履歴書・212

1985年秋のこと

「水無瀬常務、私達にも、太秦電機㈱の営業員が販売している機械を売らせて下さい。あの連中には、絶対負けはしません」

メンテナンスマンの彼等のこの言葉には驚かされました。
この頃の同居の太秦電機㈱広島営業所の営業マンの月間平均販売台数は7台。注)関東圏では15台前後。

「彼等に負けないと言う事は、メンテナンスや納品作業をしながら、最低7台を販売するのですよ」
「当然です」

「新規開店情報は彼等に入り、我社には入らないのですよ」
「その情報は、必要ありません」

「君が出かけている間、会社に君の顧客から電話注文が有った場合、小橋所長が電話をとり、自分で契約に走りますよ。何しろ、部下にかかって来た注文の電話さえ横取りする男だから。」
「会社に電話が来ないようにします」

「同じ機械を営業所から卸してもらうことになりますから、一台につき原価は5~8万円アップですよ」
「大丈夫です。任せて下さい」

「よし! 分かった! 小橋所長にその旨宣言しよう」
「有難う御座います」

成る程、それから彼等は1台、また1台と受注して来ました。
販売先は、営業マンが最も苦手とする他社顧客。


アフター5での居酒屋で聞いてみますと明らかに弱者戦略。
戦略の実践には、先ず、ローラー調査なのですが、その必要はありませんでした。
毎日自分のエリアを回っていますから、ローラー調査をする必要は無い程、市場を把握しています。

ですから、
二点攻略(挟み撃ち)や三点攻略(包囲)を実践出来る場所は直ぐに脳裏に浮かぶのです。

つまり、適度に離れている二軒の自社顧客の間にある他社顧客や、自社顧客に囲まれた他社顧客ですね。
そこを狙い撃ちです。

攻撃量の訪問回数は、顧客にライバル社の訪問状況を聞き、ライバルが月に一回ならば三回以上の訪問。

更に、顧客の使用している色々な機器で調子の悪いものがあれば、それを直してあげる。
このメンテナンス技術が、ライバル社の営業マンが持っていない『E』となっています。

注)『E』とは「ランチェスター戦略」でいう武器性能比 Exchange Rate(イクスチャエンジ・レート)の略。

彼等の受注や失敗の過程を聞くのが私の役目でもあり楽しみでもありました。
落とすのに苦労した顧客の話をする時程、彼等の瞳は輝いていましたね。


折りしも、太秦電機㈱のBB営業本部では、「他社機下取りキャンペーン」を始めました。

営業本部が、支所で下取りしてきた他社機を 一台に付き5万円で買い取るという内容です。
小橋所長の要請で、広島営業所に我社が下取りして来た他社機を一台に付き3万円で売ることにしました。

このキャンペーン期間中は、下取り速報が太秦電機㈱の全国支所60箇所にFAXで流れます。
ここで名をあげましたのが小橋所長。広島での他社機下取り実績の大半は、我社の社員のもの。

それを買い取ってのことを伏して、自分が下取りして来たような報告を本部にしたのです。
流石! 流石! 小橋所長のやることは抜け目ない。

この販売を通して、メンテナンスマンの彼等は益々逞しくなって行きました。
特に21歳の松川社員と23歳の沢木社員ですね。

お陰様で、赤字続きの我社の月次決算では、黒字になる月も出てきました。



他方、

安定した継続的な収入をどう確保するかを模索しました。
そこで案出したのが、二年目以降の年間保証料の銀行自動引き落とし方式への切り替です。

新品機器の場合、一年間のメーカー保証が付きます。その保証行為をするのが我社です。
つまり、太秦電機㈱は、新品機器を一台売る毎、我社に決められた金額を支払うのです。

二年目以降の保証をどうするかは、各顧客と我社との個別交渉となります。
これが一年毎の切り替えですから、契約更新交渉はメンテナンスマンにとってはかなりの労苦。

年間保証料が、一台につき三万円前後ですから、すんなり契約更新とはいきません。
複数台数以上所有の顧客の場合、特にてこずりました。例えば、5台の場合、15万円を一括回収です。

そこで、日立クレジット広島を呼びました。
東京時代、日立クレジットの澁谷営業所の所長の言った事を思い出したからです。

「数がまとまるのであれば、日立クレジットが毎月顧客の銀行口座から代行回収出来る」
日立クレジット広島と交渉し、代行回収手数料を1軒につき@70円で決着。

これにより、契約更新時の現金回収を12回分割12ヶ月回収への切り替えが可能となりました。

この分割回収方式は、従来の現金一括回収方式とは違う故、太秦電機㈱グループ会社管理室から異論。
月初のメンテナンスグループ役員会で、関東メンテナンスの社長からも異論。太秦社長も難色を示しました。

難色の理由の一つは「資金繰りが悪くなる」ですね。

他のメンテナンス会社は、この年間保証料の現金を資金繰りの拠り所としていたのです。
処が、私の唱える方式では、今日入る現金を12ヶ月分割で回収。

二つ目の反対理由は、一件に付き月70円(年間840円)の回収コスト。
三つ目の理由は、メンテナンスマンが何等故障の発生しない顧客へは訪問しなくなる。

メンテナンス訪問をしていない顧客は、ライバル社に寝返るケースが多かったのです。
逆に、トラブル多発でメンテナンスマンが頻繁に訪問する顧客は、文句を言いながらも年間メンテナンス契約更新や買い替えの時に寝返る事は無かったのです。

彼等の反論に構わず押し切りました。
会社経営では、資金繰りの大丈夫な時こそ、自動的に収入を確保出来る方式に切り替えておくべきとの持論。

この方式の最大のメリットは、販売した当該機器が存続する限り、更新契約無しに、毎月一定額のメンテナンス料が何年にも亘り継続して入ることですね。他方、定期巡回訪問のシステム化で欠点をカバーしました。

尚、翌月や翌々月にどうしても資金不足の場合、私もカタログ片手に機器の販売をして現金を確保しました。
会社規模が小さい時にのみ出来る資金繰り方法ですね。



さてさて、
肝心の事業規模拡大の方はなかなか上手く進みませんでした。
S電機㈱物流倉庫業務部瀬戸課長との交渉は難航しました。