戦略を知ると部下は豹変しました

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戦略教育とは素晴らしいものですね。
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知らず知らずの内に部下が豹変しました。
視点が違えば、見えない物が見えてくるのですね。
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それはまるで三国志での軍師・単福(徐庶)を得た劉備玄徳。
負け続けの玄徳は、単福の戦略で、曹仁軍2万5千を僅か2千の兵で撃破。


私の履歴書・211

1985年秋
私に代わって社員を指揮出来る人をどうしても欲しかったですね。

福岡の藤川君に初めて会ったのは3月下旬桜の時季。

初夏になり、藤川君に会いに福岡へ行きました。
彼の魅力は、暖かさと冷たさの両方を持ち合わせていることです。

何しろ、20歳代から50歳代の女性ばかり70人の指揮をとっていたのです。
若干27歳の彼が三年間も。学歴は私大中退。

並みの男で出来る仕事ではない。
そのひょうひょうとした姿は、私の昔の友人の北井君に良く似ていました。

幸いな事に、彼の能力をその会社は見抜いていない。私は懇願しました。
「私の会社は、出来たばかりで毎月が赤字。君に高額な支度金は出せない。
けれども、君の家財道具の引越し運送費は出せる」
彼は「ウン」とは言ってくれない。

夏、またまた福岡に出かけました。
更に、夏の終わりに、三度目の福岡行き。

その時、初めて彼は意を決してくれたのです。
今の会社を辞めてこの秋に広島に行くと。

そして秋。彼は福岡から引っ越して来ました。
彼の電子回路の知識も、誰よりも優れていました。でも、彼は自ら末席を選択しました。

これで近い将来、私の留守を任せられる男が先ず一人来た!
部下の女性70名に比べたら、男の100名なんてチョロイもの。


その頃、丁度、私の早朝講義の内容が「戦略」になりました。

孫子呉子」(中国の思想 第10巻 徳間書店)から始めました。
孫子の兵法の実践版が『三国志』ですね。ですから、講義は三国志をからめての内容にしました。

これと並行して講義したのが『ランチェスター戦略』
この講義は、太秦電機㈱営業本部での新入生講習や、藤三商会の講演で体験済みでしたから楽でした。

どちらも、膨大な実践データを集めて、そこから導き出した勝利方程式。
時代と闘う状況や武器は違っても、その内容を突き詰めれば酷似しているのです。


この頃の社員達との居酒屋では、これら戦略に関しての質疑応答でしたね。

藤川君のほろ酔い時の台詞。
「水無瀬常務は、三顧の礼でもって私を迎えに来た!」

「それじゃ、藤川さんは、諸葛孔明ですか?」
「Yes ! Yes ! 士は己を知る者の為に死す。これが君達ぼんくらと僕との違いだよ!」

部下達のこのようなやりとりに、いつも笑いました。

               ★

参考)

孫子の兵法で著名なのは武田信玄の「風林火山」ですね。
孫子軍争篇の「故ニソノ速キコト風ノゴトク、ソノ静カナルコト林ノゴトク、
侵略スルコト火のゴトク、動カザルコト山のノゴトク、、、」の一節です

つまり日本の戦国時代から、この中国の兵法書は読まれていたのです。
ナポレオンが『孫子』を座右の書としていましたね。


孫子』の『始計(しけい)』の最初の文

孫子曰く、兵は国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。
故にこれを計るに五事を以てし、これを校(くら)ぶるに計を以てして、其の情を索(もと)む。
一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり

曰く、主(しゅ)孰(いず)れか道ある、 (君主はどちらが道理があるか)
将(しょう)孰れか能(のう)ある、 (将はどちらが有能であるか)
天地(てんち)孰れか得たる、 (天地の利はどちらが得ているか)
法令(ほうれい)孰れか行わる、 (法令はどちらが徹底して行われているか)
兵衆(へいしゅう)孰れか強き、 (軍隊はどちらが強いのか)
士卒(しそつ)孰れか錬(ね)れたる、 (兵はどちらが訓練されているか)
賞罰(しょうばつ)孰れか明らかなる (賞罰はどちらが公正におこなわれているか)

孫子』での最も有名なくだりは、
「敵を知り己れを知らば、百戦して危うからず」


2,400年~2,500年前に、最も新しいものでも1,200~1,300年前に成立した中国の兵法古典七書の思想が今も流れている。時代が変わっても、人間の本質は変わっていないと言う事。

注)中国の兵法古典七書とは、『孫子(そんし)』『呉子(ごし)』『尉りょう子(うつりょうし)』『六韜(りくとう)』『三略(さんりゃく)』『司馬法(しばほう)』『李衛公問対(りえいこうもんたい)』

               ★

晩秋の頃でしょうか。
一番若い松川君(21歳)が事務所の私の前で一礼し緊張した面持ちで言いました。

「水無瀬常務、私達にも、太秦電機㈱の営業員が販売している機械を売らせて下さい。
あの連中には、絶対負けはしません」

続いて沢木君(23歳) 「そうです!常務! あんなチョロコイ連中に負けるはずはありません」
他の社員も「そうです! そうです! 負けはしません!」


いつの間にか、全員、闘う社員に変身をしていたのでした。
                        つづく