医師が短命だった訳


私の1995年春からの東京単身赴任時代、北は北海道から南は沖縄まで、各地支所の要請により各地の顧客病院の院長に挨拶訪問をしたときのこと。

半数以上の院長が煙草を吸いましたから、私も遠慮なく煙草を吸えました。「煙草は身体に悪いと言われていますが」と問うと、それは嘘だとのこと。

又、ある病院でのこと、院長の診察が長引いているとのことで院長室で待っていました。暫くすると院長が帰ってくるなり、デスクの上にあるプラスチック製の小さな容器の中のカプセルを何個か飲みました。

私は不思議に思い「それは何ですか?」と聞くと抗生物質だというんです。「どうして飲むんですか?」と聞いたら、外来診察で色々な病気の人を診察するので、罹患予防のためと言うのです。それもほぼ毎日、診察後に飲むのだそうです。

別の病院でも院長のデスクには同じような容器があり、同じく聞くと、同じく抗生物質で、診察後に飲むと言っていました。

各地の病院の院長室で面談した際の類似の容器をデスクに置いてあるケースは3割前後だったと思います。

1997年頃だったと思いますが、ある学会での発表は『東京都は無医村になる』というようなテーマでした。新人医師は開業をしない傾向であるということと、都心部の開業医を年代別に分類し、開業医の所在地に〇印を付けた地図をスライドで何枚か映し出されました。

それがそれが、大半の開業医は65歳以上だったのです。更に、医師は一般人より短命だから、あと10年もしたら街から医者が消えるとのこと、成程と思いました。

他方、当時の学会でも東京都内の医師の平均寿命は他府県に比較すると更に短い(50歳代後半?)と言っていましたから、若手開業医の死亡率も高いのでしょう。

尚、通説では「医者の不養生」とか、「過酷な労働」とか、「不規則な生活」が原因で、短命と言われていました。

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今の病院の院長のことは分かりませんが、当時の院長の何割かは、診察後に抗生物質を飲んでいるのですから、当然、院長に限らず、主に内科医も常時抗生物質を飲んでいたものと思われます。

当時は抗生物質の効かないMRSA(マーサ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による院内感染が騒がれていましたが、抗生物質バンコマイシンは「耐性菌が出現しない抗生物質」といわれていましたから、彼らの服用していたのはバンコマイシンだったでしょう。

しかし、1997年にVREバンコマイシン耐性腸球菌)が出現し、バンコマイシンであっても耐性菌が出現するということが判明し、大騒ぎになりました。(註)

(註)昨今の脅威は『CRE・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌』
耐性菌への最後の切り札といわれるカルバペネムを含め、ほとんどの抗生物質が効かない最強の耐性菌

今、振り返ってみれば、このような早期死亡の原因は、過労というよりも抗生物質にあったように思われます。

つまり、外来患者が持ち込んだ細菌や院内に漂う細菌から身を守るために、医師は継続的に抗生物質を服用し、体内に入り込んだ色々な細菌を殺すにしても、同時に、ガンジダ菌の増殖を抑えるデーデルライン桿菌や腸内の善玉菌までも殺してしまっていたことになります。

医師が何らかの病にかかった場合、あっという間に重篤に陥り、打つ手が無いまゝご臨終を迎えたケースが多かったでしょうね。

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余談になりますが、

この抗生物質の常用は、抗がん剤の服用と類似しています。

簡単に言えば、抗がん剤は一時的に癌細胞を減じたり消滅させたとしても、体内の免疫力であるマクロファージやナチュラルキラー細胞(NK)まで殺してしまう。

故に、生き残った癌細胞や悪玉菌にとり、抵抗勢力の弱体化した体内では、益々増大するリバウンド結果となる。

『医師は癌になっても抗がん剤は飲まない。』という巷の噂は、まんざら嘘でもなさそうですね。



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