竹林はるか遠く(2)


大戦末期のある夜、小学生の擁子(ようこ・11歳)は「ソ連軍がやってくる」とたたき起こされ、母と姉・好(こう・16 歳)との決死の朝鮮半島逃避行が始まる。

欠乏する食糧、同胞が倒れゆく中、抗日パルチザンの執拗な追跡や容赦ない襲撃、民間人の心ない暴行もかいくぐり、祖国日本をめざす。

竹林はるか遠く(1)

以下、その続編
  ◆       ◆       ◆

(ウォンサンにつく)

病院列車なので給水と石炭補給で止まった。
朝鮮共産党陸軍の検査が行われた。
私は投げ飛ばされコウは横にされた。
朝鮮共産党陸軍に調査されたが、医務員が嘘を言ってくれて助かった。

看護婦は水をくれトイレを掃除してくれた。
赤ちゃんが泣きだしたが母親は乳が出ない。
私は寝た。

急に列車が止まる、飛行機の音。
列車の二つのエンジンとも空爆で破壊され炎上。
患者を他の車両へ移動させる。
聞くと、ソウルから45マイル(約72km)の地点。
列車から降りて歩くことにした。
水や食料を妊婦に渡した。

列車を降りる。
機関士が焼死体になっていた。
家族でソウルに向かって歩き始めた。
日中は歩き、夜は茂みの中で寝た。
朝起きる。喉が渇いている。暑い。どこかわからない。
少し料理してたべる、米と干物を煮る。

兵隊の音が聞こえたら隠れる。
七日間列車は走ってない。
川に来た。鉄道の橋がある。コウが鉄道のレールの音を聞く。
橋を歩く。途中まで歩いたが怖くてコウにしがみつく。
コウにおぶってもらって橋を渡る。

川で風呂に入る。
戦闘機が来たので線路から離れて隠れる。
森の中で寝ることにする。
遠くで爆発があって空が赤くなった。
ちょうどよい場所で休む。

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ボウルに米と水をいれてると朝鮮共産党の兵士が三人現れた。
朝鮮共産党の兵士は「立て」「何歳だ?」と言ってきた。
朝鮮人兵士「今晩楽しむのにちょうどいい大きさは・・」
突然、飛行機が来て空爆していった。

私は、音が聞こえなくなった。
母の髪は血がついて、私の胸も血がでていた。
コウの口を見て、朝鮮人兵士は「死んだ」と分かった。
コウが筆談で「また兵士が来るかもしれないから黙って」
私達は毛布で寝た。

翌朝起きても耳は聞こえない。
コウが朝鮮共産党の服を着て、坊主頭にしていた。
私も朝鮮共産党軍の服を着せられ、坊主頭にされた。
自分の服はザックに入れる。
昼間、歩く。すでに11日歩き続けていた。

<3.ナナムでのヒデヨ >
ヒデヨはナナムで三人の友人と軍需工場で働いていた。
機関銃の組み立て作業。
友人が一服にいったあとに、朝鮮共産党が入ってきた。
ヒデヨは本能的に空いている箱に隠れた。
ヤスオをはじめ何人も朝鮮共産党兵士に射殺される。
他にトイレにいった友人数人は大丈夫だろうか?
死んだヤスオの血を自分の顔や腕や服に塗る。
死んだマネをする。
朝鮮共産党兵士が生きてるかチェックし、ヒデヨも腕を蹴られた。
「ダイナマイトをしかけ、建物を破壊せよ」と朝鮮人のボスが言う。

朝鮮人が出て行ってからヒデヨは箱から出る。
やはり、ヤスオは死んでいる。
トイレに行くと鍵がかかっていたが、ショーイチとシンゾーは生きていた。
工場から爆破前に逃げる相談をする。
トイレの窓からなんとか三人脱出できた。
工場が爆破された。

山道を歩き家へ向かう。
竹の森の端のわが村に着く。
家は盗賊にほとんどのものを盗まれていた。
ヒデヨは朝鮮共産党兵士が来たと思った。
母の手紙があった。
ソウルでの待ち合わせを知る。

殆どの物が荒らされて盗まれていた。
母の通帳、米、調理セット、水、クッキーなどあるものをザックに入れる。
自分の部屋に戻り下着など集め入れる。
家を出、ショウイチの家へ行く。
マコト、シンゾー、ショウイチがすでに集まっていた。
マコトの年老いた両親が死んでいたとの事。
マコトはすすり泣く。
安全の為、朝鮮人の服に着替える。
夜通し歩くために休憩を取る。
線路に沿って歩き始める。

昼間は朝鮮共産党軍にみつからないように寝て、夜歩く。
野菜を掘って食べたり、木の汁をすする。
池だと思って行くと、血だまりで遺体がが散乱していた。
線路上を歩く人々がいた。
日本人か朝鮮人か聞かれる。
朝鮮人だ。共産党ではない」と答える。
ヒデヨの父が官僚で、朝鮮共産党が家族を捜索していると考えたからだ。

ヒデヨはナナムからソウルへ歩いて向かう。
朝鮮語で、どこに向かっているか聞くと日本だという。
そこで初めて日本が戦争に負けたと知らされてヒデヨ一行は驚愕した。
トンネルがあったのでろうそくを使って歩く。
列車が来た!スペースがないので必死に壁にくっつく。
何かがぶるかる音と、首に水のようなものがかかるのを感じる。
何かにつまずいた。
線路にめちゃくちゃになった日本人老人の死体があった。
トンネルを出ると、血しぶきがついていた。

ロシア兵二人が「止まれ」と言ってきた。
朝鮮共産党だと嘘を言う。
持ってるものは日本人から盗んだと言う。
煙草はロシア兵にあげる、食料はロシア兵はもってない。
タンチョンという所で朝鮮共産党本部があるので雇ってもらえるだろうとロシア兵が言う。

川で体を洗い、水筒に水を入れ服を洗う。眠る。
タンチョンの陸軍本部に行くと死体を遺棄していた。
列車内や野原で死んだ死体。
袋に入れてタンチョン湾に投げ捨てていた。
女や若い女の死体は、自分の姉や母ではないか確認。

仕事で少し給料をもらう。
一か月半歩いて、港湾都市ウォンサンへに着く。
9月の終わりになっていた。
仲間と別の道になる。
最後の晩餐で、5年後東京橋で再会の約束。
一人になったヒデヨは寂しかったが、家族と会うのを楽しみに歩く。


<4.ソウルでの日々 >
コウと母は軍服が合っていたが、私は大きすぎて引きずる。
母が手首の部分を縛り、コウがサスペンダーを作ってくれた。
まだ、右の耳が聞こえない。
コウと姉妹げんか。
母がコウを止める。
線路が山に入り日陰が涼しい。
休憩する。

コウにやさしく起こされると、トウモロコシやトマトなどいっぱいあった。
食べながらコウの話を聞く。
コウと母が畑でトウモロコシを取っていると朝鮮人農夫に捕まった。
コウの流暢な朝鮮語で「私達は朝鮮人で、日本の警察に追われている。ソウルにいかないといけない」と嘘で誤魔化した。
朝鮮人農夫はコウが女か男か聞いてきた。なんとか嘘でごまかし野菜をもらう。
皆、満腹になって眠る。

荷物を、私は軽い物、コウは重い物に変えられていた。
日本人の一行に遭遇し、母が声をかける。
ナナムから列車で来たこと、朝鮮服で変装する必要があった事を説明。

避難民のチェックポイントを通過する。
日本警察に朝鮮服を疑われる。
保険証・成績表を見せ信用してもらう。
貯金通帳がなくなってて母が泣く。
戦争が終わって、日本人は朝鮮では危険だと聞く。

昨日戦争が終わったと聞く。
母が失神し、ウイスキーを飲まされ目覚める。
服を脱いで殺虫剤をかけてもらう。
怪我をしてて出血しているのを見て警官が驚く。
スプレーと粉を掛けられる。
病院テントに連れて行かれて、日本人医師の問診を受ける。
右胸下と耳の治療をしてもらう。
その医師(タケダ)の父と、父が同級生だと分かる。
母がヒデヨとの待ち合わせの事を言うと、娘の治療が先と言われた。
母とコウも一緒に寝る。
一人の患者に一本のミルクだが、母とコウの分のミルクももらう。
毎日、母とコウは駅にヒデヨを捜しに行く。

ある時先生に、「患者は全員釜山へトラックで行きます。釜山から10月2日に船が日本へでます。一緒に帰国しましょう。」と言われる。
母はヒデヨを待つ事を先生に言い、最終日にミルクと薬と包帯をもらう。
先生と日本での再会を約束。

毎日駅に行くが、ヒデヨは来ない。
食べ物は無いし夜は寒い。
毛布やら軍服やらで寒さをしのぐ。
隣の凶暴な男が、「蹴られた」と絡んできた。
場所を要求してきたが、ナイフでコウが威嚇し撃退。

母がプラットフォームに行ったがヒデヨは来ない。
コウはゴミ置き場から食べ物を拾ってきた。
ザックを盗まれそうになったが、「泥棒!」と叫び撃退。
米兵がソウル駅に来た。

秋になった。
荷物を持って河へ行き体を洗う。
河で髪を剃って、男にみえるようにする。胸もしばる。

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コウ「ソウルにいる5週間の間に数人の朝鮮人が少女を藪に引きずって行って強姦したのを見た。少女は日本語で助けを呼んでいた」
母は駅長に釜山行の列車の状況を聞く。
明日の最終貨物便で釜山へ向かう事を母が決めた。

木でできているあちこちの柱に「ヒデヨ、釜山へ」と彫る。
コウと私は病院のゴミ置き場で列車内での食料を拾いに行く。腐敗臭で私はとれないがコウは沢山取る。
箸を取る。
次の日の午後三時、貨物列車が来た。
ヒデヨを捜す、日本人、朝鮮人、老若男女入り乱れている。

最初に有蓋車を見たがどこもびっちり混んでいた。
フラットカー(長物車)を見てコウが言う、「フラットカーは材木が積まれていて人もいた」
フラットカーから「早く乗りな」と日本語で男性が言う。
私が引き上げられて最初に乗る。
コウと母もギリギリ引き上げて乗った。


<5.釜山での日々 >
日本人老人男性だった。
風でザックの食料が殆ど飛ばされた。
老人にチーズサンドイッチをあげる。
三日間何も食べてなかったとい老人が言う。
夜になって寒い。
コートと毛布でなんとか寒さをしのぐ。

朝、悪くなってる果物とパンを食べる。
列車が止まった時、用をたす。
風邪をひいていたが、怪我の痛みを考えると、私は泣きごと言わなかった。
三日かかって釜山に着いた。
                                つづく

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