とうとうきた転勤命令

 
 
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   私の履歴書369
 
1991年1月7日(月)吉田常務から電話が来ました。
 
君は本社に転勤してもらうことになるが受けてくれるだろうね」
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「やはりそうでしたか」
「社長から直接話があったのですか?」
 
「いえ、何ヶ月か前に、私の転勤を暗示する夢をみたものですから。
然し、未だやり残したことがあるのですが」
「それは、後任に任せたら良い」
  
「後任は誰です?」
「千葉営業所の福知所長(仮称)だよ」
 
「福知所長? 辞令はいつ出るのですか?」
「今月21日付け。二人で引継ぎの日程など打合せをしてくれ」
 
「北海道の引継ぎには、一ヶ月必要ですけど」
「福知所長には、そのように言っておくが出来るだけ短縮してくれ給え」
 
「処で、本社で私は何をするのですか?」
「現在、営業部毎に企画部署があるが、全社統一企画部署がないから新設する」
 
「役職は?」
「課長職だ」
 
「東京には村木常務、各営業部にも常務と部長、それに支所には取締役支店長もいますから、果たして課長職で仕事が出来ますかどうか」
 
「君の素晴らしい戦略と企画力は北海道で実証済みだ。私の権限の一部を君に与えるから存分に才覚を発揮して欲しい。尚、私は君のやる事に一切口出しはしない。これは社長も了承済みだ」
 
更に、
「各支店が雇用している女性パート営業社員(大半主婦)は計11人だが、これを30人に増やすことと、その指導をするのも君の仕事だ」
 
「分かりました。千葉の福知君と引継ぎの打ち合わせをします」
「そうしてくれ給え」
 
早速、福地君に電話を入れるも、引継ぎにいつ来れるか分からないとの回等。
 
 
同月18日(金)772便で千歳→伊丹空港。午後三時本社常務室入室。
翌19日(土)の全営業部との新年度予算折衝会議の打ち合わせ。
 
常務室を出ますと、同席していた子会社・関東メンテナンスの内山社長が追いかけてきました。
 
「水無瀬所長、ちょっと時間があるかな?」
二人で、空のミーテングルームに入りました。
 
「水無瀬君は、福知君を知っているかい?」
「いえ、顔だけで話した事はありません」
 
「福知は、吉田常務の義理の弟なのだよ」
「やはりそうでしたか。チラリと噂では聞いていましたが」
 
「問題は、福知は千葉営業所長として六年間在職中、一度も月次決算を黒字にしたことが無いのだよ」
「別格エリアの千葉営業所で六年間も赤字? 然し、千葉県は人口増並びに地域経済成長率でも全国都道府県の中のNo.3に入るでしょう?」
 
「並の所長なら当然黒字だろうね」
「吉田常務は幾ら義理の弟といえ、そこまで情実人事をするのですか?」
 
「支所人事を握っているのは吉田常務だから君も吉田常務人事だね」
「私の場合は、これまでは社長人事でしたが」
 
「それと、福知は女性関係でも問題がある」
「奥さんとお子さんがいるのでしょう?」
 
「子供は男の子が二人だね」
「女性関係に問題のある男は客観性があって仕事も出来るのでは?」
 
「相手が前職の部下・女性美容指導員だから例外だね」
「女性美容指導員??」
 
内山社長は、煙草の煙を深く吸い込んでから徐に話し始めました。
 
彼(福知所長)は、関西出身だが、東京六大学のある大学を卒業。
新卒で大手女性化粧品会社東京本社勤務。
間も無く化粧品会社の都内営業所の所長として着任。
部下美容指導員20名は全て女性。
その中の一人が、現在の彼の妻で、部下の中で一番金持の家の娘。
結婚後も、以前と同様、部下の女性と次から次へと問題を起すものだから、妻が義理の兄である吉田常務に泣きつく。
そこで、女性達との縁を切らせ、義兄の監視下に置く意味もあって彼を化粧品会社から退職させて、この会社に再就職をさせた。
 
当初の勤務地は東京支店。
住居は、都内に新築した会社のビル。
 
一階が内山社長の会社の事務所と倉庫。二階以上が社員寮。
そこの二階の家族寮に住んだのが彼等家族。
 
そこまで話し、一呼吸置いてから、改めて思い出すように話出しました。
 
「いや~、当時は大変だった。夜になると、ガチャン・ドカンの音と同時にけたたましい女房の罵声。天からお茶碗やフォークが降ってくる。こんな夫婦喧嘩が度々だよ。危なくて迂闊に外に出れなかったのだよ!」
 
当時60歳代後半の内山社長は、長々とした話し終えた後、溜息をつきました。
情けなさそうに。そして私を気の毒そうに見つめながら。