三十代の美少女にもらい泣く

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   私の履歴書・368
 
 
次に北見に出張の時、塚本君が言いました。
 
「あの面談の後、亭主は不満を言っていたそうですが、『今更何を言っているのか!』と親戚の者から叱られたそうです」
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彼はあの時、言おうとしたことを言えなかったということか。
恐らくあの席の近くに、彼等の親戚の者もいたでしょう。
 
伊織さんがパートで新たに勤務したとの話を聞いたのは、それから数ヶ月後。
軟禁状態から開放され、普通の生活に戻ったようで安堵しましたね。
 
尚、我等夫婦は、あの翌日からいつもの生活に戻りました。
以後、伊織さんのことを、お互い、一度も口に出すことはありませんでした。
 
 
 
その後、再度北見に出張し、塚本君と居酒屋で飲んでいた時、彼は思わぬ事を言ったのです。
 
「水無瀬所長には内緒でしたが、伊織さんのご主人は嫉妬深い人で参りました」
「どういうこと?」
「伊織さんを採用してからというもの、彼は時々、事務所にやって来たのです」
「亭主が、女房の職場に? 何度も? 信じられん!」
「彼の仕事は外回りですから」
「どうしてまた?」
「私を嗅ぎまわるのです」
「君の何を?」
「僕と伊織さんが変な関係じゃないかと」
「伊織さんと何かあったの?」
「何も無いですよ。だから北見に転勤したのでほっとしました」
 
やはり思っていた通り。そうだったのか!
 
確かに男だったら誰でも伊織さんに好意を抱く。
亭主は、外に出した妻を心配するのも無理は無い。
でも、妻の勤務先まで来るとは異常。
 
振り返れば、伊織さんって不思議な人でした。
 
 
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伊織さんとチークダンスを踊り、ぐいと抱き寄せた時、洋服の下、身体全体がベルトのようなものでぐるぐる巻かれていたのです。
         参考)私の履歴書・357
 
私は、そのベルトは当時の補正下着の一種かと思いました。
 
でも伊織さんの顔は普通の卵形で引き締まっている。腕も脚も細い。
 
腹部だけ脂肪が堆積する特殊体質なのかと思っていました。
これは、後日、留萌の黄金岬でも同じ状態でした。
 
 
旭川の街の灯りが見下ろせるだろう丘の中腹での車の中でのこと。
                  参考)私の履歴書・361
 
そのベルトはGバスト・ウエスト・ヒップ全体を覆うものでした。
然も、手が全く入らない程、幾重にも固く締め付けられていました。
 
彼女は必死で私を拒み続けました。
辛うじて見えた左の乳首は小さく、然もピンク色。
 
身篭った(みごもった)ことのない若き女性特有のもの。
一瞬、十代かと思いました。
 
 
イメージ 2激しく求める私。
拒む彼女。
 
むせび泣く彼女。
唇を求めながら。
純真無垢な少女の如く。
 
ひょっとして伊織さんは処女??
泣く彼女を抱きしめました。
 
 
伊織さんは結婚してから凡そ十年。
子供はいない。
 
この一見補正下着が、まさか!?
まさか? 彼女は処女で、実はこれは貞操帯?
 
 
 
とすれば、この涙は、私に救いを求める無言のメッセージ?
この仕掛けがあるだろうベルトを解いたら、その時から後戻りは出来ない。
 
亭主が作った禁断の実の鍵を壊し、開ける。
それは私には到底出来ないこと。
 
無力な私。
可哀そうな彼女よ。
 
彼女の色香は、男を知らない特有のもの。
彼女をしかと抱きしめながら湧いてくる私の涙。
 
三十代の美少女よ!
(いと)しい!
 
車の中での二人は泣き続けたのです。
狂おしく。
 
 
その後、何度もかかってくる電話は、いつも泣きながらの「会いたい」。
社内便での旭川の伊織さんからの手紙には、テレホンカードが5千円分在中。
私の札幌の社内での電話応対では、話が出来ないから公衆電話から掛けてと。
 
 
そして、層雲峡の温泉ホテルでのシナリオは伊織さんが描いたもの。
私は夜中に彼女の部屋に行く。 参考)私の履歴書・362
 
自然と身体は開くのだろうか。
だが、その時も、何故か同じく身体はベルトだらけ。
 
 
激しく泣く彼女。
またしても純真無垢な少女の如く。
 
涙が溢れ出て止まない彼女を抱きしめました。
そして私はそのまま眠ってしまったのでした。
 
 
     ★     ★     ★ 
 
 
伊織さんとの話は、これでお仕舞です。
彼女の夫婦関係が実際はどうだったのかは、推測の域です。
 
尚、妻には、全てを話していました。
伊織さんの可愛い小さな白い手の平で、二度、果てたことも。
 
                   留萌慕情(13) 完
 
追記)今まで多くの女性の皆さんにコメを頂きまして有難う御座います。
実は、記事を掲載する都度、ひやひやでした。 今回も。