最初の観楓会は、大雪山の麓の天人峡でした
私の履歴書・325
北海道の場合、社員旅行は、秋に行うのが通例とのこと。
これを社員旅行と言わずに、観楓会(かんぷうかい)と言うのだそうです。
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北海道の紅葉は、もみじが主ではなく楓(かえで)だからこう呼ぶのだそうです。
1987年の着任の年は二ヶ月に一度の割合で温泉一泊二日の研修会を開いていましたから、社員旅行のことなどころっと忘れていました。
10月、急遽、旭川の塚本君に指示して温泉ホテルの部屋を確保させました。
亜子がアルバイトで入社したけど、こういう席には未だ参加しない時ですね。
層雲峡では、何処のホテルも部屋をとれず。
流石、全道各企業が一斉に観楓会をするのですから空きは無い。
運良く予約を取れたのが「天人峡グランドホテル」
それも人数分しか部屋を確保出来ず。
参加者は、男子16名に女子2名の計18名。
その女子2名とは、札幌の事務員の由紀ちゃんに旭川のパート伊織事務員さん。
さて、11月、その観楓会の当日は暗い曇り。
先ずはホテルの4階(?)の部屋に入って、早速客室の窓から外の岩を眺めました。
柱状節理の岩肌を一望ですね。
窓の右斜め下方には忠別川に面した露天風呂。
ここからは絶景を見上げます。
時季は初冬で更にここ天人峡は大雪山の西麓ですから深山の奥。
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震えながらタオル一枚で二十歳前後の女性二人が露天風呂に入ってきました。
我等は上から手を振りました。
「寒いやろ~」
「寒い~~」
「何処から来たの~?」
「札幌から~」
「学生か~?」
「冬休み~」
「一緒に入りに行こうか~?」
「来ないで~」
窓辺からの会話はここまでで、我等は早速持ち込みしたビールで乾杯。
我等を尻目にずっと窓の下を見続けているのは魚住君。
彼の年齢は31歳。四大卒。妻は同級生。子供二人。
微かに聞こえる女性の声。
「もう見ないで~」
我等は魚住君を窓辺から引き離そうと引っ張るのだが、彼は窓枠にしがみつく。
三人がかりで引き離してやれやれ。
「彼女たち、せっかく絶景の露天風呂に入りに来たのだから、ゆっくり入らせてあげなさい」
処が手を離したら再度窓際で身を乗り出す。
これを二度繰り返す。
彼女達は、早々に退散。
「なんちゅう男だ!君は!」と怒鳴りたいが何しろ観楓会。
然し、趣(おもむき)が分からん男もいたものだと皆で呆れましたね。
さて、
宴会と二次会が終って全員部屋に引き揚げました。
よく聞くと北海道では人数分しか部屋を確保しないのが普通とか。
そしてこういう場合のルールがあるらしい。
嘘か本当かは知らないけれど。
部屋割りなどはしない。
と言うことは、女性二人用に一部屋空けることなどしない。
何処の部屋で寝るかなどは早い者勝ち。
結果、残った一部屋には、私を含めて男三人に由紀ちゃんの計四名。
ここの部屋で布団をまくりあげ、他の部屋の社員も混じって再度酒盛り。
由紀ちゃんはアルコールに強くないので部屋の中央に一つだけ敷かれている布団に入りコトンと就寝。
間も無く「スースー」と小息を立てる。
かわいい小息ですから、やはり気になりますね。
塚本君が、彼女の布団の中に入り、枕を並べてオネンネ。
大笑いしましたね。彼、20分程いい子にしていたでしょうか。
それだけで止めておけば良いものを、彼は手を布団の中でゴソゴソ動かす。
暫らくして目を覚ました由紀ちゃん、怒って部屋の外へ。
謝りに塚本君も部屋の外へ。
二人で帰ってきて再度由紀ちゃんは布団でお休み。
再度、小息。
再度、塚本君、布団の中へ。
再度目覚めた由紀ちゃん、布団を引っ張って廊下へ。
再度塚本君、謝罪で廊下に行くが、由紀ちゃん、もう頑として廊下から動かず。
やがて我等男5~6人は、その部屋で引っくり返って寝てしまう。
朝のこと、誰かが私を起す。
「由紀ちゃんが廊下で寝ています」
「何?」
ころっと忘れていましたね。
見ると、相変わらずスースーと小息を立てて廊下で眠っている。
「このままそっとしておいてやろうよ」
と言う訳で、我等は忍び足で部屋に戻り二度寝となりました。
このメンバーで年に4~5回も温泉一泊をしますと、こういうことは別に驚くことでも無かったですね。
翌朝の羽衣の滝(落差270m)です。
由紀ちゃんは後列左から二人目。
塚本君は後列右から二人目。
その隣が伊織事務員。
私は前列の左端。
注)掲載しているホテルの写真は、「天人峡グランドホテル」の許可を頂き、掲載しております。