逆転していた札幌のレベル

 
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偶々ご主人が一ヶ月ほど遠方に出かけて留守の時、テレビが壊れました。
 
電話は通じませんが、メールなら届きます。
さて、あなたは、どんな内容のメールを打つでしょうか。
 
企業での稟議書(りんぎしょ)とは、そのメールそのものなのです。
参考迄、それを稟議書にしてみました。
 
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標題「テレビ買い替えの件」
 
本文「テレビが壊れましたので新しい42型を買います」
 
事由「①もう十年使っているのでガタがきている。
②修理代が2万円。
③今までのテレビだと孫が来た時何と言うか。
④新品を買うとエコポイントが付いている。
42型の実質支払額は、○十万円。
 
          ★
 
サラリーマンの世界で、稟議書をこのように書ける社員は少ないでしょうね。
 
 
さて、本文
この頃ですね。仙台の総務課長がしみじみ言いました。
 
 
「札幌は変わりましたね。
事務所の雰囲気が全く違う。全員、生き生きしている。
 
特に、営業では、世子、亜子、草野、魚住、関根。
メンテナンスでは、山崎に栗本。
 
ここに来てから仙台に帰るとガックリきますよ」
 
 
そう言われればそうでしたね。
当初仙台に出張する度に、仙台の営業マンたちがどんなに素晴らしく見えた事か。
反して、我が札幌は、無知&浮浪者集団でしたからね。
 
 
それから二年弱後、
 
皆賢そうな顔に生気がみなぎり、それにセンスの良さ。
仙台支店の連中が到底及ばない段階まで達していました。
 
 
好例がありました。
 
本社人事部から何の打診もなく、東京支店から門田主任が転勤してきました。
吉田本部長の話では、私が本州の人を欲しがっているからと。
それは1年以上前の話ですね。
 
門田主任は、都内の私大新卒で入社四年目。
東京生まれの東京育ちですが、両親のどちらかが函館出身。
 
札幌に着任して、かなりのカルチャーショックを受けましたね。
話しに聞いていた札幌とは、全く違う!
東京支店よりも社員のレベルが高い!
 
それに自分より年下の女性に問われる。
特に世子の脳回路に流れる電流は早いですから、会話した場合、門田主任の言葉が詰って赤面の場面が度々。
 
 
私の門田主任の教育指導は、彼の脳回路の短絡化でしたね。
その手始めが稟議書。
 
彼の書く稟議書の内容は、文の頭はあるけど、それが何行も続いてようやく句読点。
 
どやしましたね。
君の書く稟議書は何分もかけて最後まで読まなきゃ、何をどうして欲しいのか分からない。
 
 
標題は、電報文
本文は、最初に結論を二行で。
次に、それに至る理由は箇条書きで。
それも一つの項目は一行で。
理由は最大で5個まで。
客観的に。
 
こう言って書き直させました。
頭を抱えて三時間ぐらいしてから再度提出してきました。
 
ひと目見るなり、その稟議書をポイと捨てました。
彼は真っ赤になり、それを床から拾いました。
 
ビジネスの世界は忙しい。
上になればなるほど、秒単位のコストは高額になる。
 
君の稟議書を役員5人見たとしたら、延時間はどのくらいになるのかね。
そこまで価値のある稟議内容かね。
 
彼は机に戻って頭を抱えました。
「門田主任、君は貴重な日中の営業時間を稟議書一枚書くのに更に三時間もかけるのかね」
 
彼は、時間外の夜中に事務所で書きました。
頭を抱えながら。
 
その書いた稟議書を、10回床にヒラヒラさせましたから、一枚の稟議書を書くのに30時間要したと言うことですね。
 
周囲の社員は、じっと見ているだけ。
教えることは決してしなかったですね。
 
それは彼等も通ったプロセス。
自分で悩み、自分で苦しむことの重要さ。
 
当に孤立無援の中、空虚な時間だけが流れる。
何をどうして良いのか分からない。
 
その苦しい体験で彼等の脳回路が豹変し、考える力と客観的視点が育ちましたから、門田主任にも同じプロセスを歩んで欲しかったのですね。
 
 
 
この後、何年経っても偶々彼と会う都度、この話になりましたね。
彼の人生での最大のカルチャーショックでしたから。