ヤング・セールスウーマンの実力
私の履歴書・292
世子(よこ)と亜子(あこ)が「相談がある」と言います。
制服が欲しいとのこと。
毎朝、何を着ようかと悩ましいとのこと。
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本社総務部に相談。
総務部の回答は 「会社として決めていないから、デパートでスーツを購入し、それを制服として申請するように。スーツの価格は任せる」 との由。
二人に『丸井今井』へ行かせました。
ここが、全国で最先端のファッション・デパート。
彼女達は二日間デパートに入り浸り。
二人の意見が一致しないのは当然ですね。
二人の最終意見は「本社総務部が関西のデパートで買って送ってくれるのが一番」
その旨報告しますと本社総務からは、それまでのつなぎとして、女子事務員用のスーツの制服を送ってきました。
このスーツは、その四年前、結構有名なデザイナーに依頼して作ったもの。
色は、真っ赤。
色の選択は、全女子事務員の投票で決まったもの。
「赤色は可愛く見える」「ベージュやピンクは汚れが目立つ」 が選択理由だそうです。
彼女ら二人はこれが気に入り、これを営業服としました。
その事を本社に告げますと、一着では汚れるだろうと着替え用も送ってきました。
退職した女子社員から返してもらった制服をクリーニングに出したものです。
処が、男性営業員達は、口を揃えてクレーム。
「亜子さんがあれを着たら目立ち過ぎ、我社の悪評でとんでもないことになりますよ」
‘「どうなるの?」
「あれ? 所長、亜子さんの運転を知らないのですか?」
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「世子と亜子の助手席には、度々乗せてもらっているけど?」
「亜子さんは所長を乗せる時に、サングラスをしないのですか?」
「いや、あのゴーグルみたいなでっかいサングラスをするよ」
「それだけじゃないです。その恰好で運転しながらくわえ煙草ですから」
「僕が乗った時でもそうだよ」
「あのめちゃくちゃな運転も所長を乗せた時でも?」
「そうだよ。怒って追いかけてくる運転手が何人かいたよ」
「どうなったのですか?」
「相手運転手に見えるように、僕が片手で謝る恰好をしたね」
彼女達二人が赤い制服を着出してから、来客の多くは先ずは彼女等の話。
何日前にどこそこの路上で見かけたとかですね。
当時は一種の挨拶言葉でしたね。
特に店頭での納品業務の場合、店頭に立つ真っ赤なスーツ姿は結構遠方からでも分かりますからね。
近づいて傍を通る時、下請け業者をくわえ煙草をしながらあごで使う彼女等の姿に皆驚きます。
事務所にいる彼女等を見て、初めて我社の社員と知った人もいましたね。
晩秋の頃に来客とこの話になりますと、来客に質問しましたね。
「一台の売価はトヨタカローラとほぼ同じ。
では、一月平均の販売台数では、カローラのセールスマンと比較すると、どうだと思いますか?」
大抵の人は「ほぼ同じ台数ですか?」と答えますね。胸中ではまさかと思いながら。
「一人当たりの月間販売台数は、カローラのセールスマンの倍でしょうね」
皆さん、びっくり。
更に私
「来春には、三倍になるでしょうね」
「それじゃ、男性の営業員は?」
「札幌担当の男は30歳前後の四大卒が三名ですが、20歳と23歳の女の子二人に追い越されましたよ。女の子の一人はアルバイト期間も含めて約1年。もう一人は僅か入社半年ですよ」
「若い女性の力ってそんなにあるのですか?」
「数字を上げる為に男の二倍以上は努力しているね」