初恋慕情夢路編11)50年前と変わらぬときめき
2010年5月16日(日曜日)
二年ぶりの田舎の床で目が覚める。
時計は午前4時半。
夜が白々と明けてくる。
起きるには早過ぎる。
目を閉じて床の中でまどろむ。
と、
沢山の人の中から君が静かに近づいて来る。
あの日のままで。
白黒の世界。
皆で写真を撮るのだと言う。
君は言う。「二人だけで後ろで撮りましょう」
僕達二人は、その群れの中から脱け出して一段と高い所に。
カメラのアングルが僕達二人だけを見つめている。
「このままでは背景が寂しいね」
そう言って君が後ろを振り返り、小首を振ったとたん、エンジェルが上空で舞う。
それから君と僕は見つめ合う。
細い眼差しと白い笑顔は、あの時のまま。
そして君は僕の手をとり、手をつなぐ。
君の右手。僕の左手。
白く、そして細くしなやかだった君の手。
それがいつのまにか硬くなっている。
そうか、君の職業柄、こうなったのか。
より近づいて君と僕とは見つめあう。
白く大きな君の胸。お互い、切なきときめき。
抱きしめたいと思った瞬間、君は微笑みながら消えていく。
☆ ☆ ☆
時計を見たら午前4時50分。
君に会えたには久し振り。
この日の午後、君との思い出の場所を一人で歩みました。
あの場所でも、この場所でも、あの日の君を思い出しながら。
いつまでも、いつまでも、じっと立っていたら、いつか、いつか、君は来るかも。
あの日の心のままで。
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