これから赴任する北の大地では四面楚歌か?
先ず初めに、オリンピック、男子フィギュア・スケートでの高橋大輔選手、銅メダル、おめでとう御座います。
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前回のあら筋)
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時は1986年12月5日金曜日午後
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太秦社長から口頭で北海道転勤を言い渡された私。
池内室長から、北海道でのややこしい歴史を聴聞。
どうやら、ここ十年、北海道の再建に誰も成功せず。
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さて、池内室長が説明する北海道の現状とは?
「それじゃ、全額粗利額でも、完全なる赤字じゃないですか」
「そこで、会社解散時在席の社員40名全員を解雇し、後、半分の20名を再雇用して君に渡すつもりだ。」
「そこで、会社解散時在席の社員40名全員を解雇し、後、半分の20名を再雇用して君に渡すつもりだ。」
「社員数を20名に絞るなら、私に40名全員を面接させて下さい。私が決めますから」
「それはこちらに任せて欲しい。君も役員会で偶には会っていると思うが、北海道ウズマサ㈱メンテナンス部門の山川部長に一任してある。」
「それはこちらに任せて欲しい。君も役員会で偶には会っていると思うが、北海道ウズマサ㈱メンテナンス部門の山川部長に一任してある。」
「分かりました。処で、何故に解散なのですか?」
「会社設立の時の条件なのだよ。不振に陥った時には解散」
「会社設立の時の条件なのだよ。不振に陥った時には解散」
「解散処理となると、金がかかるでしょう」
「君に負担をかけないように、本社で処理しているよ」
「君に負担をかけないように、本社で処理しているよ」
「どの位の負債なのですか?」
「概算では七千万円。それを今、支払い処理中だ」
「概算では七千万円。それを今、支払い処理中だ」
「その広告はいつ打つのですか?」
「今月の中旬」
「今月の中旬」
「と言うことは、『北海道ウズマサ㈱は解散した!』と全道に知らしめるのですか?」
「まずい事だがそういう事だ!」
「まずい事だがそういう事だ!」
「解散の会社の名前にウズマサが入っていますね。私が㈱ウズマサを名乗って、誰が私を信用するのですか?」
「だからピンチなのだ!」
「だからピンチなのだ!」
「分かりました。よ~く分かりました。私は四面楚歌かと言おうか?飛んで火に入る夏の虫ですね。処で、私の辞令はいつ出るのですか?」
「今月12月21日付け。だから今月中に札幌に飛んで欲しい」
「今月12月21日付け。だから今月中に札幌に飛んで欲しい」
「正式に着任ですか?」
「いやいや、顔出しだよ。着任は年明けの10日頃でどうかな?」
「いやいや、顔出しだよ。着任は年明けの10日頃でどうかな?」
「札幌の仕事始めは何日ですか?」
「一月五日。正月は、ゆっくりと家族と団欒してくれたまえ」
「一月五日。正月は、ゆっくりと家族と団欒してくれたまえ」
「分かりました。一月五日に着任します。その前に一度札幌に飛んで顔合わせをしておきます」
「うちの社員は誰かいないの?」
「未だ誰も帰社しておりません」
「未だ誰も帰社しておりません」
「それじゃ、社員が帰社したら伝言して」
「はいどうぞ」
「はいどうぞ」
「私が今月で広島を離れて、北海道に転勤になると」
「エェッ! それは皆が残念がりますよ」
「エェッ! それは皆が残念がりますよ」
「これから本社を出て新幹線乗車。九時半頃には広島駅に着くつもりだ」
「それじゃ、水無瀬常務の第一回盛大なる送別会を今夜開催します」
「それじゃ、水無瀬常務の第一回盛大なる送別会を今夜開催します」
「それまた早いこと! 場所は何処?」
「例の流川のクラブでどうですか?」
「例の流川のクラブでどうですか?」
「何と高いところで! 金はどうするんじゃ?」
「ご心配なく! 何しろ私の上司は寺前部長。水無瀬常務の事でしたらドカンと接待稟議書を切っても大丈夫」
「ご心配なく! 何しろ私の上司は寺前部長。水無瀬常務の事でしたらドカンと接待稟議書を切っても大丈夫」
「分かった。金は君に任せたよ」
「大きいボックスが空いているかどうか分かりませんから、広島駅に着いたら事務所に電話をして下さい。誰かを電話口で待機させておきますから」
「分かった!」
「大きいボックスが空いているかどうか分かりませんから、広島駅に着いたら事務所に電話をして下さい。誰かを電話口で待機させておきますから」
「分かった!」
今月の残る稼動日は三週間。
その内の一週間は、札幌に行く事と、辰巳支店長との引継ぎで消える。
その内の一週間は、札幌に行く事と、辰巳支店長との引継ぎで消える。
残るは二週間。
内、一週間は、引継書作成と年末のバタバタで消える。
内、一週間は、引継書作成と年末のバタバタで消える。
とどのつまり、私の営業稼働日はMAXで一週の5日間。
果たして、5日間で全台数を売り切る事が出来るか?
果たして、5日間で全台数を売り切る事が出来るか?
せめて半分でも。
だが、恐らく辰巳支店長は、この件を引き継がないだろう。
と言う事は、今月中にさばけなきゃ、何れ182万5千円の金が要る。
と言う事は、今月中にさばけなきゃ、何れ182万5千円の金が要る。
他方、安月給の私の懐の場合は、金が残っていくのは転勤二年目以降。
何しろ転勤の都度、最初の年は100万円前後の金が消えてきた。
何しろ転勤の都度、最初の年は100万円前後の金が消えてきた。
全額、社内の飲み代である。
ここが管理職と違って一般職の辛いところ。
ここが管理職と違って一般職の辛いところ。
先ずは東京転勤の時。
次が最初の広島転勤。
次が二度目の本社勤務。
そして今回の二度目の広島。
次が最初の広島転勤。
次が二度目の本社勤務。
そして今回の二度目の広島。
その都度100万円が消えてきた。
今回の二度目の広島では未だ一年と八ヶ月。
家に金が貯まったとしても僅か。
家に金が貯まったとしても僅か。
どう転んでも、転びっ放し。
立ち上がれない。
立ち上がれない。
ここで思考回路停止。
考えても無駄。
考えても無駄。
考えようが無い。
頭は真っ白。
頭は真っ白。
いつの間にか広島駅着。