これから赴任する北の大地では四面楚歌か?

先ず初めに、オリンピック、男子フィギュア・スケートでの高橋大輔選手、銅メダル、おめでとう御座います。

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前回のあら筋)
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時は1986年12月5日金曜日午後
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太秦社長から口頭で北海道転勤を言い渡された私。
池内室長から、北海道でのややこしい歴史を聴聞
どうやら、ここ十年、北海道の再建に誰も成功せず。
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さて、池内室長が説明する北海道の現状とは?

私の履歴書・231

「池内室長、処で、この半年間の北海道の数字はどうだったのですか?」
「月間売上が、1,500万円から2,000万円ってところだな」

「それじゃ、全額粗利額でも、完全なる赤字じゃないですか」
「そこで、会社解散時在席の社員40名全員を解雇し、後、半分の20名を再雇用して君に渡すつもりだ。」

「社員数を20名に絞るなら、私に40名全員を面接させて下さい。私が決めますから」
「それはこちらに任せて欲しい。君も役員会で偶には会っていると思うが、北海道ウズマサ㈱メンテナンス部門の山川部長に一任してある。」

「分かりました。処で、何故に解散なのですか?」
「会社設立の時の条件なのだよ。不振に陥った時には解散」

「解散処理となると、金がかかるでしょう」
「君に負担をかけないように、本社で処理しているよ」

「どの位の負債なのですか?」
「概算では七千万円。それを今、支払い処理中だ」

「それだけですか?」
「未確定だよ。尚、このような場合は、北海道新聞とその他全国紙四紙の北海道版に解散の広告を掲載することも条件の一つになっている。そこで、簿外債務が明確になる」

「その広告はいつ打つのですか?」
「今月の中旬」

「と言うことは、『北海道ウズマサ㈱は解散した!』と全道に知らしめるのですか?」
「まずい事だがそういう事だ!」

「解散の会社の名前にウズマサが入っていますね。私が㈱ウズマサを名乗って、誰が私を信用するのですか?」
「だからピンチなのだ!」

「分かりました。よ~く分かりました。私は四面楚歌かと言おうか?飛んで火に入る夏の虫ですね。処で、私の辞令はいつ出るのですか?」
「今月12月21日付け。だから今月中に札幌に飛んで欲しい」

「正式に着任ですか?」
「いやいや、顔出しだよ。着任は年明けの10日頃でどうかな?」

「札幌の仕事始めは何日ですか?」
「一月五日。正月は、ゆっくりと家族と団欒してくれたまえ」

「分かりました。一月五日に着任します。その前に一度札幌に飛んで顔合わせをしておきます」

時計は午後六時を大きく回っていました。
広島事務所に電話を入れると、我社の事務員は帰宅して不在。
代わりに受けてくれたのが㈱ウズマサ広島営業所の大林係長。

「うちの社員は誰かいないの?」
「未だ誰も帰社しておりません」

「それじゃ、社員が帰社したら伝言して」
「はいどうぞ」

「私が今月で広島を離れて、北海道に転勤になると」
「エェッ! それは皆が残念がりますよ」

「已むを得ない。太秦社長の鶴の一声」
「今日帰ってくるのですか?」

「これから本社を出て新幹線乗車。九時半頃には広島駅に着くつもりだ」
「それじゃ、水無瀬常務の第一回盛大なる送別会を今夜開催します」

「それまた早いこと! 場所は何処?」
「例の流川のクラブでどうですか?」

「何と高いところで! 金はどうするんじゃ?」
「ご心配なく! 何しろ私の上司は寺前部長。水無瀬常務の事でしたらドカンと接待稟議書を切っても大丈夫」

「分かった。金は君に任せたよ」
「大きいボックスが空いているかどうか分かりませんから、広島駅に着いたら事務所に電話をして下さい。誰かを電話口で待機させておきますから」
「分かった!」

急いで山陽新幹線乗車。
車中、改めて広島での問題が浮かぶ。

シャープから仕入れた182万5千円の機器。
今月中にさばかなきゃならない。

今月の残る稼動日は三週間。
その内の一週間は、札幌に行く事と、辰巳支店長との引継ぎで消える。

残るは二週間。
内、一週間は、引継書作成と年末のバタバタで消える。

とどのつまり、私の営業稼働日はMAXで一週の5日間。
果たして、5日間で全台数を売り切る事が出来るか?

せめて半分でも。

何しろ、仕入れ処理をしていない。
シャープ中国とは交渉で、一種の見本機扱いにしてもらっている。

だが、恐らく辰巳支店長は、この件を引き継がないだろう。
と言う事は、今月中にさばけなきゃ、何れ182万5千円の金が要る。

他方、安月給の私の懐の場合は、金が残っていくのは転勤二年目以降。
何しろ転勤の都度、最初の年は100万円前後の金が消えてきた。

全額、社内の飲み代である。
ここが管理職と違って一般職の辛いところ。

先ずは東京転勤の時。
次が最初の広島転勤。
次が二度目の本社勤務。
そして今回の二度目の広島。

その都度100万円が消えてきた。

今回の二度目の広島では未だ一年と八ヶ月。
家に金が貯まったとしても僅か。

どう転んでも、転びっ放し。
立ち上がれない。

ここで思考回路停止。
考えても無駄。

考えようが無い。
頭は真っ白。

いつの間にか広島駅着。