夫の背中を押し続けた奥さん

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前回のあらすじ
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睡眠時間と給料の半分を捧げてきた村主社員。
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その文化祭も終わり、いよいよ村主社員は電気機器の技能士試験受験の為に深夜の勉強でした。
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今回は、その上司の話です。


私の履歴書・221

篠原主任の場合
年齢:1985年当時43歳。学歴:中卒。元大工。

「篠原主任、電機機器の技能士の試験を受けてくれますか?」
「ワシは、学科試験の専門用語は読めないし、実技試験では手が遅いから合格は無理ですよ」

「確かに篠原主任の仕事は、据付作業や店舗の改装でしょう。
でも、仮にもあなたは人の上に立つ主任という立場。

これからあなたの部下も増え、部下は何れ技能士の資格をとるでしょう。
その時、部下の立場から見上げたあなたは、どういう存在なのですか?

技能士試験の内、実技試験の方はさておき、学科試験を受けてください。
あなたが学科試験を合格することは、あなた自身にとって大変意義あることです。
それと、我社やあなたの部下にとっても」

暫し沈黙後、

「受験するかどうかの返事は今直ぐでなくてもいいでしょう?」
「じゃ、二晩考えてから返事を下さい」


翌々朝、篠原主任は顔を紅潮させながら小声で言いました。
「学科試験だけですが、受験させてもらいます」

二晩、奥さんと深夜まで話し合った結果だそうです。
結構難しい試験なのです。学科試験合格率は当時確か40%台でしたね。

或る日のこと、篠原主任の助手席に乗車し納品に出かけようとした時、彼、免許証を自宅に忘れたと言います。

近くの彼の自宅にトラックで横付け。
彼が自分の部屋に入り免許証を探している間に、奥さんが玄関に出てきました。


「主人の事でご迷惑をお掛けしていています。
主人、毎日深夜まで勉強をしています。

それが、小学生の子供の辞書を片手に。
漢字を知らないものですから」


その言葉を聞いて涙が出そうになりましたね。

1年弱後、学科試験が行われました。
努力の甲斐あって、学科試験、見事合格でした。

更に更に、それから十年ちょっと後、彼の一人息子さんは、現役で国立大阪大学理学部に合格したというではありませんか。


素晴らしいですね。親の背中は!

それにしても、あの受験可否を決める二晩の深夜、奥さんは夫にどんな話をされたのでしょうか。
素敵ですね。そしてその後、夫の背中を押し支え続けた奥さんは!