熱海の夜は危険がいっぱい!

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尾崎紅葉の「金色夜叉」の舞台の熱海。
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昔の熱海って怖いところでした。
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お宮さんが貫一に蹴られた浜辺ですからね。
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尚、熱海の芸者に手を出したら600万円は覚悟しなはれ!
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この話は、機会あらばいずれまた。


私の履歴書・146

今度は乱暴に一気にエイヤッ! と引きずり下ろしました。
一刻も早く確かめたかったですからね。
改めてしげしげと見入るも、どうみても被(かむ)せている。

今度は白いなまこの一物を手の平に載せました。
お宝鑑定団のようにしげしげと舐めるように見入ります。

なまこの先っちょの丸いポッチの先には水を吐き出す口があるはず。
処が、その吐き出し口が探しても無いのです。


「そんな馬鹿な! やはり思い違いか!」
我等は再度絶望! 名残惜しそうに再度しげしげと見入りました。

ポッチを押したりつまんでもみました。若干弾力がある。
水分が入っているのかな? 押すとペシャンコにもなります。

「おい! これが穴か?」
それは先っちょに小さな小さな点。針の穴程です。

「この穴でオシッコは無理だよ」
よう~く、目を凝らして見ると、イチジクの先のよう。

針の穴から放射状に細かな皺(しわ)。
「こりゃ、顕微鏡が要るぞ!」

我等は肝心な事を忘れていました。
身体から生えているなまこの根元を確かめるのを。

改めてそのなまこの根元を見ますと予期した端が無いのです。
手で探りもしましたが、それらしき端はありません。

改めて驚きました。 「ぽっちは、こやつの身体の一部だ!」
遂に難題解決!

二人で大笑い。腹を抱えて。
部屋中笑い転げて「アハハ! アハハ! ギャハッハ! ~! ~!」

「きゃつの奥ちゃん、びっくりしただろうなぁ~」
我等の理性と教養&品格を喪失した笑い。

笑い疲れで腹痛。暫し沈黙。
「どうする?」
「どうするって?」
「この事を知っているのは、彼の両親と彼の女房だけだろう」
「ひょっとして彼のトッパな言動は、これが原因かも」
「どうすんべ?」

この白いなまこにマジックを塗ると言うことは、塗った者が彼の秘密を知った事になる。
「秘密を知られてしまったことを知ったら、こいつはどうなる?」
「まさか、自殺はしないだろうよ」

「 - - - - - - - - - - 」
またまた暫し沈黙。

「止めようか?」
「せっかくここまできたのに、もったいない」
「きゃつの脳回路は、我等凡人とは違うんだ。多少落ち込む程度で、直ぐに元のトッパに戻るぞ!」

「それもそうだ。じゃ、あまりショックにならん程度に」
そう言って、清水君は、マジックの芯の太さでなまこの兜にぐるりと輪を描きました。

再び、我等はテラスのニ脚の椅子に座って放心。
はっと気が付く。

「我等であることの証拠を隠滅しよう!」

我等の飲んだ二個のコップを隣室の未使用のコップと交換。
座卓を彼の寝ている傍に引き寄せました。

その座卓の上には飲みかけのビール瓶二本にコップ一個。
彼だけの手の平や指紋でべったりにして。

「ここにいたらやばい!(不味い!)」
「逃げよう!」

我等は階下の帳場の近くのラウンジの応接セットで眠ったふりをしました。
「清水課長に水無瀬さん、ここにいたのですか?」
同じ部屋のメンバーの優男の和田君と、真面目一直線丸刈りの松岡君です。

「あぁ~、飲み過ぎていつの間にか二人でここで寝てしまった!」
「部屋に戻りましょう」

我等二人は、寝ぼけた振りをして彼等の後に従い二階の部屋に入りました。
優男と丸刈りは直ぐに浴衣姿で股を大広げの高山課長を発見。

「課長!! どうしてこの部屋にいるの?」
「ホントだ! 課長だ! 一人でビールを飲んでひっくり返って!」
「旅行の幹事のくせに、この調子か!」

「課長! 高山課長! 起きて下さい!」
「こりゃ、どうしようないわ」

四人でテラスに出ました。
夜空を見上げますと、どうやら、一雨くる雰囲気。

優男 「これじゃ、今夜はこの部屋には寝れんのう! 皆で隣の部屋に寝よう!」
丸刈り 「貫一さん、今月今夜の月は涙で曇って、もう雨ですよ!」
優男 「あいな!分かった!」

そう言って優男は、浴衣の裾を上げて階下の庭に「シャ~~~~」
お~~!何と文学的な我等の同僚達よ!

我等も負けじと浴衣の裾を上げる。
テラスから四人ツレションで「シャ~~~~」

     滴を浴びる庭の草葉の陰の尾崎紅葉が真っ青!

         文学的な我等の熱海の夜はふけゆくのでした。


               尚且つ軽蔑されながらも何故かつづく