宴会後のチン事

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札幌の子会社から東京支店に転勤して来た藤木課長。
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ひげが濃く肌はどす黒。
ひげを剃ったのかどうか分からない程。
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北海道で酒を飲み過ぎて肝臓をやられているのだろう。
それに声帯もやられたダミ声に「べェ」の連発。

早速、何箇所かの商業組合の役員連中からクレームが来ましたね。
「藤木課長を担当から外してくれ!」
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東京の課長職は、清潔感とスマートさが必要でしたね。
支店長は、ブーイングに支えきれなくなり藤木課長を転勤させました。

私の履歴書・143

藤木課長の後任に来たのが、生え抜きで私より一歳年上の高山課長。
支店長と同じ*賀県人。
関西の私立大学卒。
本社で主任からの栄転。

小柄な男で、常時息巻いていましたね。
目の光が狂った猿。

我等は陰で後ろ指。 
「ありゃ、頭がおかしいぜ!」とか「トッパな奴!」

或る日の午後、連絡無しに突然読売新聞の記者が支店長に取材に来ました。
その時、事務所にはこの高山課長以外の役職者は誰も居なかったそうです。

高山課長 「私は、この間まで本社企画室。支店長より私の方が適任。私がお話させていただきます」
記者 「実は読者から御社に関して電話がありましたので、ご意見をお聞かせ下さい」

高山課長、怒鳴り声で 「そんな誰か分からないような電話に回答する義務は無い。帰れ!」

翌々日の夕刊に大きな見出しと支店ビルの写真付きで会社の名前をデカデカと書かれました。
その見出しとは 「顧客のクレームを無視する企業!」

私達は、大笑い。
「やっぱし!」「やりおった!」「あの男なら!」


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毎年一回の支店の社員旅行を、その高山課長が手を挙げて企画しました。
それが熱海温泉一泊。
彼は熱海に泊まったことが無いからです。
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我等 「あの高山の企画が熱海に社員旅行だって! しょうもない! 
本社の企画ってこんなくだらない事しか出来んのかいな!」
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そしていよいよ熱海温泉。
行ってみたら旅館。
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宴会では支店長に課長が雛壇。
私の一番嫌いな光景。
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離れた処で飲んでいると声。「お~~、水無瀬!こっちに来い!一杯やろう!」
こんな調子で、夫々が呼ばれる。
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誰も注ぎに行かないから。
行っても直ぐに引き下がる。
肝心の芸者と仲居の方は我等と刺しつ刺されつ。
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私と同じ年齢で、高山課長と同時期に京都営業所主任から課長で赴任してきたのが清水課長。
彼が私にそっとささやく。
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「水無瀬君よ!君を呼び捨てにするなんて、とんでもない奴だ! 早く酔わせて潰してしまおう!」
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そこで、我等は高山課長のお膳にはべり、おちょこでなくてコップに一升瓶で次から次へと注いだのです。

「いやぁ~~、高山課長さん、流石!流石! 男の中の男! ササッ!もう一杯!」
「お姉さん達(芸者と仲居)!こっちに来て! 課長さんに注いであげて!」
「いやぁ~~、もう沢山! もう飲めない!」

「何を仰るのですか? 末は取締役の本社から来た大課長さんが!」
「お姉さん達、今から大課長さんにゴマをすっておきましょう!」

彼の部下も事の成り行きを察知して、注ぎに来ました。
「もう、わしゃ、駄目!」
「部下の注いだ酒を上司のあなたは飲めないのですか?」

飲ませるだけ飲ませて、尚且つ飲ませて、もう限界を通り越していましたね。
彼はあっちへフラフラ、ゴッツン、こっちへふらふら、ドスンで宴会場から消えました。

これで変な奴が消えたから、皆で大笑いに大騒ぎ。
その後、笑い疲れに飲み疲れで、一足早く同じ年の清水課長と二人で二階の我等の畳部屋に戻りました。

誰かが、我等の掛け布団の上に浴衣姿で股を大の字に大いびき。
「この部屋に、あんな奴、いたっけ?」

「高山課長のようだよ」
「あいつは、隣の部屋じゃなかった?」

「おい!あっちの部屋に行け!」と蹴りました。
「ムニャムニャ--------------」

三度程蹴ったでしょうかね。
「きゃつは他人の部屋で寝て、反省の色が無い!」

「よしゃ!! おしおきだ!!」
「何のおしおきをしようか?」

そこで清水課長の提案!!
「(コソコソコソォ~~~)」

「オッ!オオオオオォ~~!! それは素晴らしい!!」
「わしゃ、フロントでマジック・インキを借りて来るわ!」

そう言うなり、清水課長は部屋から飛び出しました。
                 酔いが一瞬で醒めたように!

                        つづく