ライバル会社に育てられた私

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男の世界とは、面白いものですね。
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身内からは、梯子(はしご)を外される連続。
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実は、私を支えてくれたのが、ライバル会社なのです。
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今回はF社のケース二つですが、この他にG社、K社が私の東京三年半を支えましたね。

私の履歴書・122
ライバルメーカー(本社千代田区 現在資本金98億円)の本社F課長から電話がきました。
お客さんを紹介するとの事です。

F課長の取引先の社員H氏が、脱サラで独立し、有限会社を立ち上げたとの事。
独立したH氏は35歳前後だったと思います。

H氏は、妻の実家のはす向いにプレハブで小さな事務所を作りました。
そこへ私に是非来て欲しいとのことですので出かけました。

三多摩のある小さな町の私鉄駅で下車。駅裏からのんびりと歩きました。
歩いて気持ちの良い暖かな日差しでしたから春うららの季節でしょうね。

20分程歩いて段々畑のあぜ道を途中まで上った時のこと。
「きゃ~~!」と言う女性の悲鳴。

続いて上方のあぜ道を右から左に走って横切る女性。
何事だろう?と思い、駆け上がって女性が去った畑の中の平屋の一軒屋に飛び込みました。

男の人が天井からぶら下がっています。
天井の梁(はり)にロープを結わえ、首吊り自殺でした。

ほぼ同時にH氏が駆けつけて来ました。彼の義父とのこと。
彼は唯あんぐりとだらりとぶらさがっている義父を見上げているだけです。

私は、だらりと下がっている男の人の両脚を両手で抱き、持ち上げました。
「何をしているか! 早くヒモを解かんかいな!」

彼はうろたえています。
「ぐずぐずするな! その台に上ってヒモを外せ!」
彼は、傍の踏み台に上って苦労してやっとヒモを外しました。

私は、その人を抱きかかえ、その場の畳の上に横たえました。

「何をしているか! 人口呼吸をせんか!」
「した事が無い!」
「馬鹿もん!そんな悠長なことを言っていられるか! 人口呼吸は、学校で習っただろう!」
「習っただけでやった事はない」
「おまえの義父じゃないか! そんな事、言っている暇があったら始めんかいな!」

彼は、その人にまたがり、人工呼吸を始めました。
胸を押す都度に「グワ~、グワ~」と気管支を空気が通る音がします。

これならいけるかも。未だ生き返る望みはある。
他方、救急車は、なかなか来ない。未だか?未だか?

救急車が来たのは30分後。場所が分からなかったとの事。
結局、息は吹き返しませんでした。

無理も無いです。私が触れた時には、体温は20℃以下。
気付くのが遅かった。

救急車が来てから間も無く、私はそっと去りました。

有限会社設立に何があったのでしょうか。
その後の彼は一度挨拶に来た後、連絡が途絶えました。


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再度、ライバルメーカーの本社F課長から電話がきました。F課長の静岡での取引先が東京に新会社を創って進出。私にとっては面白い取引先だから紹介してくれるのだそうです。

F課長の部下の社員と渋谷の事務所を初回訪問。
訪問先会社名「東静物産(株)」(仮称)、綾部社長(仮称 45歳)

以後、綾部社長には私単独で訪問。
或る日、綾部社長が面白い現場を見せてあげると言うので、11時に築地の倉庫に一緒に行きました。

その倉庫には、五千ケースのポッカ缶コーヒーがうず高く積まれていました。
静物産(株)が倉庫に預けたものです。

そこに二人連れのお客さんがやって来ました。

当初、電話での取引条件は、五千ケースの倉庫証券を現金1,200万円で。
処が、先方が現金の用立てが半分の600万円しか間に合わず、残金600万円を小切手にして欲しいとの事です。

銀行への電話で先方の当座預金に600万円の残高があることを確認。
さて、これで取引は終わるのか? いやにあっさりしたものと思いました。

綾部社長は、急ぐ先方をはぐらかして彼等を寿司屋に連れ込みました。
そしてあれやこれやと話しながら時間を引き延ばしました。

途中、綾部社長は渋谷の事務所に電話をして、再度先方の当座預金の残高を調べさせました。
有る筈の600万円の当座残高は、消えているとの連絡。

上握りをたんと食べてから、綾部社長は彼らに言いました。
「黙ってここの寿司代を払って帰りなさい。取引は中止。」

彼等は、高い寿司代金を払い、逃げるように去って行きました。
綾部社長「きゃつ等は、詐欺師だよ」

この事があってから人の見方が変わりましたね。