顔に似合わず踊りが好きでした。特にチークを。


昨夜は送り火。あの世から一時的にご帰還されました皆様のあの世へのお帰りになる時刻が明けて今日の未明。つまり、これから明け方にかけてですね。

せっかくですから、今日の朝の北京オリンピック・女子マラソンを観てからの方もいらっしゃるかもね。



《アルバイト家電店長奮闘記 ⑥絶望的夜明け前のチークダンス》


正月早々、仲山社長は、店の奥の事務室に私を呼び請求書を見せてくれました。
12月分の料亭・クラブ・ゴーゴーバーのお好みコースの請求書でしたね。

合計で確か47万円。この中には社長がお客さんを接待した分も含まれていましたから、延べ人員で割りまして、一回一人当たりが約3万円。

私のアルバイト料が時間給130円で一日1,040円。つまり、一回の私の飲み代が休日無しの私の一ヶ月の給料と同じ額。12月は三回行きましたから私だけで9万円。

社長は言いましたね。
「君の飲み代一回分は、粗利率5%で60万円の新品商品を売った額。カラーテレビ5台分」

更に「君たち7人の給料一日分が1万円弱。これを差し引いて、一日に2万円の粗利益を出したら、出した日毎に飲みに連れていくよ」

それを聞いた時には、一瞬カックンでしたね。それまでの商売の延長線上ではラッキーが無ければ偶にしか出来ない数字。素敵な女性と丑三つ刻にラストダンスをもう踊れないのかと思いましたよ。



日々の収益の元と言えば、バッタ屋相場・中古品買取りとその販売、それにテレビ修理。
店頭販売は店の場所が悪いので数字の期待は出来ませんでした。


尚、テレビ修理の場合、京都新聞に広告「テレビ修理いたします」を出していました。
修理依頼電話がありましたら、アルバイトを行かせてテレビを引き取って修理をしてから納入。


修理のテレビの大半は真空管方式で、故障の大半は真空管の劣化。
NECの新品真空管一本毎に箱に印刷されている定価は、3,000円~5,000円。
この仕入れ値が一本170円~500円。こういう仕組みなのです。

修理依頼の来るテレビと言えば、数年以上使用したもの。
劣化した真空管を新しいものと交換しますと、直ぐに再度故障します。
実は、新品は出力が強すぎて、他の弱っている回路を駄目にしてしまうのです。


そこで、下取りしたテレビから古い真空管を抜き取り雑巾で汚れを拭いて使います。
つまり部品代はゼロ。時には、裏側の調整つまみだけで直るものも。
但し、顧客への請求は、「真空管交換 修理一式3,000円~7,000円」

大阪の日本橋や京都四条下る寺町の電気街でしたら、何かにと合算したら粗利三万円は楽な数字。
でも、何しろここは七条通り家電店はポツンと一軒だけですからね。それに、東本願寺の南側。


毎日、素敵な女性と夜明け前にチークダンスを踊るには、毎日、粗利額を倍にしなきゃなりません。

さてさて、どうするか?