京都・上賀茂・学生アパート岡本荘物語(1)

昭和四十年代後半の京都・上賀茂・学生アパート岡本荘物語


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(1)ファンクラブ

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 B君の妹に、当時、高校一年生の裕子(仮称)がいた。
京都から程近い県であるから、二度程、B君の田舎に泊まりに行ったことがある。

 裕子が通学する地元の私立女子高校の学園祭の招待状が来たので出かけた事もある。
裕子は、兄Bと違って、明瞭にものを言う娘であった。話をして気持ちが良かった。
実は、嫁さんにするなら、この子がいいな!と密かに思ってもいた時もあった。

 或る日、B君が私に冗談混じりで言った。私とE子の事を、妹裕子に言ったらしい。
「妹が、発起人。クラスメイト五人で、『P(私)フアンクラブ』を作ったらしいよ」
「???」

 それから暫くしてまたまたB君が言う。
「『E子から、P(私)を守る会』に名称変更し、守る会の会員は三十名を超えたよ」

 その後、間も無く「隣のクラスも巻き込んで五十人になったらしい」
更に「今度の日曜、ここ上賀茂のアパートに来て、E子と団体交渉すると言ってきている」
「????」
「人数は、相当な数らしいよ」
B君は、さらりと言う。

B本人も、メンバーは、せいぜい十数人くらいで、妹達は京都に遊びに来るだけと思っていた。
                               


(2)団体交渉


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 当日、E子は所用で夕方まで留守にすると言うので、この件は伏せておいた。
私は下京区の知人宅にいた。

裕子の兄B君から電話「大変なことになっている。上賀茂には近寄らないように」
私はその時、どうしても手が離せない状況でもあった。

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 聞けば、板の間学生アパートの彼の六畳の部屋は無論の事、幅一間奥行き十間程の廊下と、更に表の道路にお嬢さん学校の女子高生であふれているらしい。

 間が悪いことに、何も知らないE子が、予定変更で帰ってきたと言う。
ここで、電話は、ガチャン!と切れた。公衆電話で十円玉が無くなったらしい。

 ちょっとしてから再度、電話。

彼「こんなに大勢では、部屋には入り切れないから、代表者数人に絞らせ、部屋でE子と話し合いを開始したばかり」
私「君は、その中に入らないのか?」
彼「妹に追い出された!」

道路は女子高生の人だかりとなり、大家がカンカンらしい。
話し合いは一時間程で、裕子の団体は帰ったらしい。

この時の話し合いは、どんな内容であったのか、今もって知らない。
E子に聞かなかったし、E子も話さなかった。

 その騒動から暫くしてから、B君の部屋の扉の上に、大家がはさんだピンク色の手紙を、
同じアパート住民で大学一年生の森君(仮称)が見つける。                           

(3)お手紙は代行


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私「妹の裕子(仮称)からの手紙だろうよ」
森君「妹が兄貴にピンクの封筒で手紙を出しますか?」

それもそうだ。
森君「そっと、取って来ましょうか」
私「よっしゃ!」

B君の向かいのE子の部屋で、森君・E子・私の三人、皆、微笑み、至極の思い。
私「かみそりは?」
E子の差し出した剃刀の刃を、ピンクの封筒のお尻に斜めに入れる。

『先日は、突然で、あなた様には大変ご迷惑をおかけいたしました。~~~うんぬん』
裕子の同級生の真美子(仮称)からである。
成る程、級長だけのことはある。礼状であり詫び状である。
賢い事は裕子さんから聞いている。

だが、このまま糊で封をしてしまうのは惜しい!!

森君「B先輩はズボラですから、返事など出しませんよ。こちらでB先輩の名前で返事を書きましょうや」
成る程、一理ある。返事を出さなきゃ失礼にあたる。

文面を三人で討議! 女性としてどんな手紙がうれしいか!!E子の意見を尊重。
それに基づいて、先ずは、かる~~~い内容にしたためる。

最後尾に一言追加『あなたに再び出会えまして、あなたの素晴らしさに改めて心ときめきます』とね。

それを投函。
無論、開封した真美子さんからのお手紙は、何事も無かったように、元のB君の部屋のドアに差し込む。

十日程してから、再度、ピンクの封筒がドアに挟まれていると言う。

                          
(つづき)
京都・上賀茂・学生アパート●●荘物語(2)白昼夢
https://blogs.yahoo.co.jp/minaseyori/45453486.html
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