初恋慕情夢路編①

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「ふるさとの クラスめいぼをひらければ きみのな いずこ ちいさくらんがい」


 9月28日、田舎の高校同窓生から私が役員をしていた会社に手紙が来た。
 会社のHPの役員名簿に私の名前と出身地などが書かれてあるのを発見したとのこと。
 高校卒業後四十二年、私は住所を誰にも知らせていなかったし連絡もしていなかった。

 中には、かっての三年F組の現住所名簿と盆中のクラス会の写真が同封されている。
 この7月、恩師が亡くなったので急遽追悼の会を開いたと書いてある。

 写真を見る。

 だが、写真の中にいつも輝くあの人がいない。
 どんなにぼやけていても、どんなに小さな画像でも、直ぐに分かるはずだ。
 そうか、近郊ではないから出席出来なかったのか。

 名簿に私の名前はある。
 私の住所欄は空白。

 君の名前を探す。
 だが、名簿にも君が載っていない。

 何度も見直す。
 必死に名前を追う。
 だが、無い。

 どうして?

 探すのを諦め、名簿を机の上に置く。
 気落ちした私は、椅子にもたれて名簿を遠くからながめた。

 ふと気が付く。
 住所欄の最下段の欄外に何か文字が書かれてある。

 私は、ぼんやりとその文字を見ていた。
 その中にふと見覚えのある文字に気付く。
 その文字を私は絵画を鑑賞するような気持ちでながめる。

 暫し後、

 あった! 
 それが懐かしい君の名!
 四十二年ぶりに見る君の名。

 懐かしさに浸る私。

 間もなく、苗字が変わっていないのに気付く。
 確か結婚し苗字が変わったはず。
 離婚したのか。

 おもむろに視線を名前の左に移す。
 遠い昔の思い出に浸る私には、左側の文字も単なる装飾にしか見えなかった。

 駆け巡る四十数年前の思い出が一旦止んだ時、アッと気が付いた。
 非情にも、その名前の前には「物故者」と書かれている。

 亡くなっていたのだ!  
 あの人は!

                           06.09.28


初恋慕情夢路編2)へ続く
逝くを知る この世で逢えぬ君なれば 夢路の園でかざしを君に 
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我が青春の記『初恋慕情』目次
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