乳がん:乳腺腫瘍ウイルス概略


前回記事、『乳がんは「母乳」で伝染する』の詳細版です。

乳腺腫瘍ウイルスについて、そのメカニズムの分かり易い日本の記事を探したのですが、見つからないので英字版ウィキペディアを訳して掲載します。

先ずは改めて述べますと、直系親族に乳がんの方がいましたら、乳腺腫瘍ウイルスを自分も持っているかもと思い、乳がんにならないように食生活に注意し、マンモグラフィーなどの放射線を回避する必要があると思います。

前回、乳腺腫瘍ウイルスは母乳で伝染する(外因性経路)と述べましたが、無論、乳母がこのウイルスを持っていた場合、乳飲み子に伝染します(外因性経路)。

今回の要点を簡略に述べると以下の通りです。

乳腺腫瘍ウイルスを持っている母親からは、授乳を介しての伝染の他に、子は胎内中でウイルスを直接継承し、胎内で感染してしまう場合もあります。このように内因性感染の場合、腫瘍の発生率が高いのです。

そして、内因性乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)を有する場合は、ウイルスが、精子や卵細胞のDNA中に存在するので、出生した子の体の各細胞はウイルスのDNAを有します。

つまり、直系親族に乳がんの方がいる夫の場合、妻がそのウイルスと無関係でも、二人の間に出来た子は、乳腺腫瘍ウイルスのDNAを持ち、思春期以降、乳がんに罹るリスクを抱えることになります。

ここでも要注意点は、私がこれまで再々述べてきたことですが、乳がんを促進するのは、牛乳や乳製品に含まれている発情ホロモンと言われるエストロゲンです。

このエストロゲンは、酪農家が乳牛を通年発情させ、通年搾乳するため、乳牛に投与されているものです。

ですから、直系親族に乳がんの方がいましたら、牛乳のみならず、乳製品であるアイスクリーム、ケーキ、バターなどは出来るだけ控えることが望ましいこととなります。

無論、乳がんの原因はこれだけではありませんが、このような方は、再々申しますが、乳がん検査と称してのマンモグラフィーは厳禁です。強い放射線は、簡単にがん細胞を作ってしまうからです。

乳がんに無関係と思える人でも、健康診断でマンモグラフィー検査を拒否する勇気を持ちましょう。

以下、詳細。

Mouse mammary tumor virus
マウス乳腺腫瘍ウイルス

Mouse mammary tumor virus (MMTV) is a milk-transmitted retrovirus like the HTL viruses, HI viruses, and BLV. It belongs to the genus Betaretrovirus. 

マウス乳腺腫瘍ウイルス ( MMTV )は、 HTLウイルス、 HIウイルス、およびBLVのような乳感染レトロウイルス(註1)である。

(註1)レトロウイルス
遺伝情報としてRNA(リボ核酸)を持つウイルス。他の生物の細胞に進入し、自分のRNAを進入先の細胞のDNAへ注入することで自らの複製を作らせるもの。

MMTV was formerly known as Bittner virus, and previously the "milk factor", referring to the extra-chromosomal vertical transmission of murine breast cancer by adoptive nursing, demonstrated in 1936, by John Joseph Bittner while working at the Jackson Laboratory in Bar Harbor, 

Maine. Bittner established the theory that a cancerous agent, or "milk factor", could be transmitted by cancerous mothers to young mice from a virus in their mother's milk.The majority of mammary tumors in mice are caused by mouse mammary tumor virus.

ビトナーは、癌性の母親によって母乳中のウイルスから癌性因子、すなわち「乳因子」が若いマウスに伝達されるという理論を確立した。

マウスの大部分の乳腺腫瘍は、マウス乳腺腫瘍ウイルスによって引き起こされる。

Infection and life cycle
感染とライフサイクル

Several mouse strains carry the virus endogenously, but it is also transmitted vertically via milk from mother to pup. 

いくつかのマウス系統は内因性にウイルスを保有しているが、母乳から子にも乳を介して垂直に伝達される。

It is contained as a DNA provirus integrated in the DNA of milk lymphocytes. 
The viruses become transported through the gastrointestinal tract to the Peyer's patches where they infect the new host's macrophages, and then lymphocytes.

ウイルスは胃腸管を通ってパイエルのパッチ(註2)に輸送され、新しい宿主のマクロファージ(註3)、次いでリンパ球に感染する。

(註2)パイエルのパッチ
イメージ 1

(または集約されたリンパ結節 、略PP )それらは、 小腸の最下部、主に遠位空腸および回腸においてヒトにおいて通常見出される腸関連リンパ組織の重要な部分であるが、 十二指腸においても検出され得る。パイエルのパッチの数は15〜25歳でピークに達し、その後成人期に減少する。パイエルのパッチのサイズ、形状、分布は、個人毎大きく異なる。 

(註3)マクロファージ(Macrophage, MΦ)
白血球の1種。生体内をアメーバ様運動する遊走性の食細胞で、死んだ細胞やその破片、体内に生じた変性物質や侵入した細菌などの異物を捕食して消化し、清掃屋の役割を果たす。とくに、外傷や炎症の際に活発である。また抗原提示細胞でもある。免疫系の一部を担い、免疫機能の中心的役割を担っている。

The mouse mammary tumor virus (MMTV) has formerly been classified as a simple retrovirus; however, it has recently been established, that MMTV encodes an extra self-regulatory mRNA export protein, Rem, with resemblance to the Human Immunodeficiency Virus HIV Rev protein, and is therefore the first complex murine retrovirus to be documented.

MMTV codes for the retroviral structural genes and additionally for a superantigen. This stimulates T lymphocytes with a certain type of V beta chain in their T cell receptor, which in turn stimulates B cell proliferation increasing the population of cells that can be infected.

 During puberty, the virus enters the mammary glands with migrating lymphocytes and infects proliferating mammary gland epithelial cells.

思春期に、ウイルスは遊走しているリンパ球とともに乳腺に入り、増殖する乳腺上皮細胞に感染する。

As a retrovirus the mouse mammary tumor virus (MMTV) is able to insert its viral genome in the host genome. 

The virus RNA genome is reverse transcribed by reverse transcriptase into DNA. This DNA intermediate state of the virus is called the provirus. 

When the virus DNA is inserted inside or even near an oncogene, it is able to change the expression of that gene and cause cancer.

ウイルスDNAが癌遺伝子の内部または癌遺伝子の近くに挿入されると、その遺伝子の発現を変化させて癌を引き起こすことができる。

The viral genome is able to cause cancer only if it alters the expression of an oncogene. 

ウイルスゲノム(註4)は、癌遺伝子の発現(註5)を変化させる場合にのみ、癌を引き起こすことができる。

(註4)ゲノム
染色体上の遺伝子が持つ情報。全遺伝情報。

(註5)発現
遺伝子の情報が細胞における構造および機能に変換される過程をいう。具体的には、普通は遺伝情報に基づいてタンパク質が合成されることを指すが、RNAとして機能する遺伝子(ノンコーディングRNA)に関してはRNAの合成が発現ということになる。

If the viral genome is inserted in a "silent" region of the host genome then it is harmless or may cause other diseases. 

ウイルスゲノムが宿主ゲノムの「サイレント」領域に挿入される場合、それは無害であるか、または他の疾患を引き起こし得る。

High levels of MMTV are expressed in lymphoid leukemias of mouse strain GR and DBA/2 which contain extra integrated MMTV proviruses. 
These leukemias are active when cells are transferred to other mice 

高レベルのMMTV(マウス乳腺腫瘍ウイルス)は、余分に組み込まれたMMTVプロウイルス(註6)を含むマウス株GRおよびDBA/2(註7)のリンパ性白血病で発現される。
これらの白血病は、細胞が他のマウスに移されたときに活性である。

(註6)プロウイルス (provirus) 
レトロウイルスにおいて宿主ゲノムDNAに組み込まれた状態で、RNAに転写される前にあること。 proviral DNAからはメッセンジャーRNAと、ビリオンを形成するウイルス・ゲノムRNAがともに転写される。

(註7)DBA / 2
イメージ 2

C.リトル(Little)により見出された世界初の近交系マウスで、第212番目の亜系がDBA/2となった。(特徴)淡いチョコレート色(aa bb CC)の体毛を持つマウスで、聴原発作を生じやすく、アルコールやモルヒネに対する低い嗜好性、クロロホルムやエチレンオキサイドに対する雄での高い死亡率が見られる。

When the virus genome is inserted inside the host genome it is then able to transcribe its own viral genes. 

ウイルスゲノムが宿主ゲノムの内部に挿入されると、それ自身のウイルス遺伝子を転写することができる。

In F. U. Reuss and J. M. Coffin (2000) experiments it is mentioned that the expression of the virus genome is activated by an enhancer element that is present in the U3 region of the long terminal repeat of the genome.

 In addition the expression of the genome is activated specifically in the mammary gland cells. Estrogen is able to further activate the expression of the viral genome.The expression of sag gene which is present in the provirus is responsible for the production of a superantigen.

さらに、ゲノムの発現は、乳腺細胞において特異的に活性化される。エストロゲン(註8)は、乳腺腫瘍ウイルスゲノムの発現をさらに活性化する。プロウイルス中に存在する選択的増幅遺伝子(SAG)の発現は、スーパー抗原(註9)の産生の原因となる。

(註8)エストロゲン                          
又はエストロジェン、女性発情ホルモン、卵胞ホルモンと称す。
エストロン、エストラジオール、エストリオールの三種のホルモンの総称。通年、搾乳をするために乳牛に与えられるから、牛乳や乳製品に多量に含む。

下記のグラフは、小学生の女の子が牛乳を飲む前後の尿中に含むエストロゲンお排出量である。左の白い棒グラフが飲用前、黒い棒グラフが飲用後である。

尚、牛乳類は、女の子の早熟、乳がん前立腺がん、骨粗しょう症、糖尿病、白内障自閉症、アレルギー、アトピー、花粉症の原因とされる。


(註9)スーパー抗原
病原性の微生物(細菌の他、ウイルスやマイコプラズマも含む)によって産生され、微生物側にとって免疫系に対する防御として働く。つまり、免疫細胞の不活性化を可能にする。スーパー抗原は細菌の細胞内で作られ、感染に際し成熟した毒素として細胞外に放出される。

MMTV can be transferred either through an exogenous or endogenous route. If the virus is transferred exogenously, it is passed from the mother mouse to her pups through her milk. Alternatively, pups can be infected vertically through endogenous infection, inheriting the virus directly from their mother in the germline.  Mice that become infected in this way have higher rates of occurrence of tumors. 

マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)は、外因性経路または内因性経路のいずれかを介して伝達され得る。ウイルスが外因的に移入された場合、母親から子に乳を介して渡される。

あるいは、子は、母親の生殖系列(胎内)からウイルスを直接継承し、内因性感染によって垂直に感染する。このように感染したマウスは、腫瘍の発生率が高い。

A retrovirus is endogenous to its host once the proviral DNA is inserted into the chromosomal DNA. As a result, mice with endogenous MMTV have the virus’s DNA in every cell of its body, as the virus is present in the DNA of the sperm or egg cell from which the animal is conceived.

プロウイルスDNAが染色体DNAに挿入されると、レトロウイルスはその宿主に対して内因性である。

結果として、内因性マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)を有するマウスは、ウイルスがその動物が妊娠している精子または卵細胞のDNA中に存在するので、体の各細胞にウイルスのDNAを有する。

Hormonal responsiveness of integrated MMTV DNA
統合されたマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV) DNAのホルモン応答性

Endogenous MMTV reacts to the whole range of hormones that regulate normal mammary development and lactation, response has been demonstrated to steroid hormones (androgens, glucocorticoids and progestins), as well as prolactin.

内因性MMTVは、正常な乳腺発達および泌乳を調節するホルモンの全範囲に反応し、 ステロイドホルモン(註10)( アンドロゲン 、 グルココルチコイドおよびプロゲスチン )、ならびに黄体刺激ホルモン(プロラクチン)に応答が示されている。

(註10)ステロイドホルモン
ホルモンのうち,ステロイド誘導体であるものの総称。脊椎動物では雌雄両性の性ホルモンと,副腎皮質ホルモンがこれに属する。雄性 (男性) ホルモンはアンドロゲンと総称され,テストステロンなどが代表的。雌性 (女性) ホルモンはエストロゲン (発情ホルモン) 類と黄体ホルモン類に大別され,前者はエストロンなど,後者はプロゲステロンなどを含む。副腎皮質ホルモンはコルチゾールなどのいわゆる糖質コルチコイドと,アルドステロンなどの鉱質コルチコイドに大別される。無脊椎動物では昆虫の変態ホルモン (エクジソン) が,ステロイドホルモンの顕著な例である。これらのいずれも,天然とは構造のやや異なる合成品のほうが強いホルモン作用をもつことがある。(ブルタニカ)

When the mouse reaches puberty the virus begins to express its messenger RNA in the estrogen sensitive tissues. 

マウスが思春期に達すると、ウイルスはエストロゲン感受性組織においてその伝令RNA(註11)を発現し始める。

(註11)伝令RNAメッセンジャーRNA、mRNA)
DNAからコピーした遺伝情報を担っており、その遺伝情報は、特定のアミノ酸に対応するコドンと呼ばれる3塩基配列という形になっている。mRNAはDNAから写し取られた遺伝情報に従い、タンパク質を合成する。

As a result, after puberty all mammary cells will contain the active retrovirus and begin to replicate in the genome and express viral messenger RNA is all new mammary tissue cells.

その結果、思春期後、すべての乳腺細胞は活性レトロウイルスを含み、ゲノム中で複製を開始し、ウイルスメッセンジャーRNAを発現するのは新しい乳腺組織細胞である。

The MMTV promoter in models of human breast cancer
The LTR (long terminal repeat) of MMTV contains a glucocorticoid hormone response element. This glucocorticoid element is a promoter that is often used to construct mice which develop a breast cancer-like disease, because an animal model system for breast cancer close to the human disease is very much looked for.[citation needed]

The MMTV promoter is used in the PyMT model system of mouse models of breast cancer metastasis. Here Py is the abbreviation of polyoma and MT is the abbreviation for middle T. There are more model systems of breast cancer which use the MMTV promoter. The polyoma middle T-antigen is taken from the polyoma virus. The MMTV-PyMT model has been shown to be a reliable model of breast cancer metastasis. In human breast cancer the polyoma middle T- antigen was not found.
(原文URL)



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CCリトル、ガンおよび近交系マウス

Clarence Cook Little (1888–1971): The Genetic Basis of Transplant Immunology
クラレンス・クック・リトル(1888-1971):遺伝的基盤移植免疫学

Mouse mammary tumor virus infects human cells.
マウス乳腺腫瘍ウイルスはヒト細胞に感染する。

Rapid spread of mouse mammary tumor virus in cultured human breast cells.
培養ヒト乳房細胞におけるマウス乳腺腫瘍ウイルスの急速な拡散。

マウス乳癌ウィルス(MMTV)の異所的産生と発癌性MMTVはリンパ性白血病の病因たり得るか
Heterotopic production and tumorigenesis of mouse mammary tumor virus
(MMTV) Can MMTV be a causative agent of lymphoid leukemias? 田中 春高

マウス乳がんウイルスにおける発がん分子機構

(画像)
パイエルパッチ
マウス