歴史的建造物程、防火塗料や自動消火装置の必然


千曲市では、稲荷山重要伝統建造物の防災計画策定の為のワークショップを開催した僅か9日後、武水別神社の神官をつとめた松田家の歴史的居館『松田家館』を焼失している。

千曲市は、一見、防災意識が他の都市よりも高いと思えるのだが、先日の市職員の対応、並びにこのワークショップの記事を見る限り、何かが抜けているように感じたので、私なりの意見を述べる。


千曲市)重伝建保存地区の防災まちづくりを考えるワークショップ

稲荷山重要伝統的建造物群保存地区の防災計画策定に向け、2回にわたりワークショップを開催します。地域の防災を考えるよい機会ですので、ぜひご参加ください。
 
■第1回ワークショップ
・平成29年8月27日(日)午後1時~3時
・会場 稲荷山公民館講堂
・テーマ 「稲荷山の防災のリスクと資源を知る」

【一般参加者数】 15名
【当日配布資料】
(資料1)第1回ワークショップ講義資料.pdf(2MB)
(抜粋1)
稲荷山地区の防災対策の現状と課題①
【地区のリスク・ハザード ー現状把握ー】
火災に対して
・個別の建物の延焼範囲は広くはない。
ただし、密集して建物がある場所・商店の裏側については
広がりやすい場所も。

(抜粋2)
稲荷山地区の防災対策の現状と課題②
【防災設備・取り組みの状況 ー改善点ー】
基本的な設備は整っているが、公的な取り組みとしては
・防火水槽の貯水量は多くはない。
・消火栓、設備ホースの離れている箇所がある。

(抜粋3)
稲荷山地区 防災計画に向けて

防災設備(公助)
短期:消火栓・ホースの整備
中期:防災の活動拠点・設備の検討
長期:消防用水利の拡充検討

個別に進めていくこと(自助)
短期:初期消火の設備整理
    公共の防災設備・ノウハウの共有
中期:耐震診断等の検討(保存建築の活用方法との関係性も)
長期:改修・消火設備の整理

地区のルール(共助)
短期:一時避難所、活動拠点となる場所の整理
中期:隣近所との連携促進
長期:防災訓練を重ねたルールの見直し

(資料2)稲荷山地区の防災設備の状況_防災に関する住民意識(2MB)

【ワークショップの概要】
・市では、稲荷山重要伝統的建造物群保存地区の防災計画策定調査事業を、平成28・29年で工学院大学に委託しています。その事業の一環で、今年度はワークショップを開催し地区のみなさんのご意見をいただいています。

・第1回目のワークショップでは、始めに、工学院大学の藤賀助教より昨年度の防災関係の調査結果と、本年6月に伝建地区内のみなさんにお願いしたアンケートの結果と考察の発表がありました(資料1・2)

・後半では参加者の皆さんに、調査で不足している部分と地区内の避難経路について話し合っていただきました。

・次回のワークショップでは、調査結果で出た防災の問題点の対策について、参加者のみなさんと話し合っていく予定です。


(問題点と提案)

違和感を抱いたのは、市の当局は、防災計画策定調査事業を、平成28・29年で工学院大学に委託したから万全と思っている節がある。

そこでは防火水槽や消火栓、設備ホースに重点が置かれている。然し、これらの設備は、燃え上がってからの対応のものだ。

換言すれば、燃え上がる前にいかに消火するか、或は、燃え上がりにくくするにはどうすべきかの検討が為されていない。

最初に検討しなければならないのは、この点ではなかろうか。

昨今の外装や内装には、不燃物や難燃物が使われており、炎上するまで時間がかかるから、消防の到着時間を待てる。但し、有毒ガスのリスクはある。

だが、歴史的建造物は、燃え易い薪のようなもの。火が着いたら瞬く間に炎上する。つまり、消防車の来る前に例え消火栓からホースを引き消火活動をしても、余程の早期発見でない限り間に合わない。手動式の消化器などはおもちゃに過ぎない。

(参照)
私の履歴書・403 季節の変わり目に起きた火事騒ぎ

ではどうするか。

検討1)
先日も述べたが、一つの例として、木の部分やカーテン、座布団、障子、畳などに事前に防炎スプレーを噴霧しておくか、防炎塗料を塗布しておく。

防炎スプレー「ハイショーカー」(防炎加工剤)障子燃焼テスト 56秒

防炎スプレー「ハイショーカー」障子戸への塗布例 2分2秒

検討2)
寺社仏閣や重要伝統家屋でロウソクや線香、調理場などの火気を使う場所での自動消火設備

自動消火設備 例1)
住宅用下方放出型自動消火装置 スペースシュッパー  (モリタ宮田工業


自動消火設備 例2)
天井吊下型自動消火装置ケスジャン  (エース21グループ㈱)
(商品概要)@9万円前後 http://www.kesujan.com/products/
(ユーチューブ) 6分54秒

自動消火設備 例3)
パッケージ型自動消火設備Ⅱ型 スプリネックス ミニ (モリタ宮田工業



(前回記事)
行政のズボラで歴史的建造物は焼失する 2017/9/9(土)