行政のズボラで歴史的建造物は焼失する
先日の千曲川市での「県宝」4棟全焼の表面的な原因は、蜂の巣の除去作業員にあるが、根本的原因は、行政のズボラと無頓着にある。
スズメバチ駆除のつもりが…「県宝」の建物全焼
ANN 9/7(木) 17:13配信
6日夜、長野県千曲市にある歴史的建造物など4棟が焼けた。
焼けた松田家館は、武水別神社の神官をつとめた松田家の居館。
(信毎web)
千曲市教育委員会によると、ともに県宝の主屋と斎館に加え、「料理の間」や、知事を接待するために明治に建てられた「新座敷」の計4棟が全焼。味噌(みそ)蔵も部分的に焼いたとみられる。料理の間と新座敷はともに市有形文化財。
(ANN)
ANN質問 「除去方法の依頼が適切だったかが問題では」
千曲市岡田昭雄市長の回答
「もしそれが原因となれば、確かに、そういったことがあると思うが、(原因が)はっきりした段階で対応したい。
(ANN)
この作業した60代の男性は、過去に何度も市から依頼を受けていたが専門業者ではないと言う。
松田家館の火災の根本原因は、千曲市の無頓着な体制にある。
この四棟は、明治時代以前に建てられたものが3棟、明治時代のものが1棟である。
古い方の屋根は茅(かや)でふかれており、僅かな火力でも着火し、然も、瞬く間に燃え上がる。それだけではない。明治以前の木造故に、特に軒下の木の部分は朽ちかけているだろうし、これにも着火し易い。
もしも現場検証をしてから業者に蜂の巣の駆除依頼をしたとしたら、それは文書で為されたのか。文書でなら、建物の性質上、火気厳禁の旨を記載したのか。
市の環境課担当職員は、依頼した業者の蜂の巣の駆除の実態を把握していただろうか。把握した上で、依頼したのか?
恐らく、市の環境課担当職員は『県宝』との意識は無く、何ら現場検証することなく、何の注意事項も伝えることなく、業者の駆除実態も知ろうともせず、館からの駆除依頼に対し、単に業者に駆除依頼の電話をしただけであろう。
他方、業者は、市の環境課担当職員から丸投げの任意の駆除依頼がくるから、自分の駆除方法が適切であると看做し、これまで通りのやり方で対応したものと思われる。
その業者の駆除方法とは、『巣を煙で燻(いぶ)し』と述べているが、民家の軒下などの巣の駆除方法としては火災のリスクがあり、一般的にはやらない方法である。
一般的には、先ずは網で飛び交うスズメバチを捕獲し、数を減らしてから巣へ殺虫剤を噴霧後、巣に殺虫剤を注入する。
今回の場合は、屋根が茅葺き(かやぶき)であり、これは紙よりも燃えやすいし、一度火が着いてしまうと消えることなく、あっという間に屋根全体に燃え広がる。
幼少の頃は、遠くの火事でも、茅葺きの屋根の住民は屋根に上り、バケツで水をかけていたものである。ほんの小さな火の粉でも、茅には火が着く。それに一旦火が着いてしまうと、直ぐに水をかけても、そもそも水を通さない構造だから消えない。
以下の画像は、軒下のスズメバチの駆除に噴煙を使った例だが、いかに火災のリスクがあるかお分かりになると思う。
(画像1)軒下のスズメバチ(赤い○)駆除活動開始。
(画像2)煙幕花火にライターで着火。
(画像3)炎を立てている(赤い○)煙幕花火を巣に近づける。この時、噴煙を巣に近づけようとするほど炎が巣に近づき、軒下への延焼のリスクは高まる。
(画像4)煙幕花火の温度は1200℃から1500℃。
紙の発火点は450 ℃前後。木材の発火点は400~470 ℃。つまり、煙幕花火の炎が茅に直接触れなくても、煙の温度が450℃もあれば、乾燥した茅には簡単に引火してしまうのである。然も、木材と違って、一旦火が着いたら消せない。
(画像はユーチューブ)駆除の達人 その道28年のベテランハンターが凶悪スズメバチを退治! https://www.youtube.com/watch?v=A95U38uqzjE
今回の場合は『巣を煙で燻(いぶ)し、殺虫スプレーをかけたところ、火が着いた』とのことだが、当然過ぎる程当然である。
煙幕花火で巣が着火され、或は高温に加熱され、それに可燃性の殺虫剤を噴霧したら、一種の火炎放射器となることは、殺虫剤を常日頃使っている者だったら、予測できることだ。
いずれにしても、今回の火災は、確かに環境課担当職員と巣の駆除の作業をした男に重過失があるが、それだけであろうか。
寧ろ、市民環境部の部長、並びに環境課の課長の方が重過失責任を免れない。恐らく、今回の環境課の職員の採った対応は、市の慣例であり、職員はそれに従っただけであるからだ。
(県宝松田館の画像URL)
(松田家の歴史)
武水別神社(たけみずわけじんじゃ)
(歴史)
(寺社仏閣炎上の危険1)
犯人韓国人、寺社仏閣に油をまいただけか? 2015/6/1(月)
(寺社仏閣炎上の危険2)
(放火対策)
30年ほど前の週刊誌に掲載されたカラー画像を今でも鮮明に覚えていることがある。それは、オーストラリアで山火事があり、強風で飛び火し、町の家屋1000戸ほどを舐め尽くした。だが、その町の中にポツンと1軒だけ焼けていない家があった。その家とは、耐火塗料を外壁に塗布したものだった。
(参照)
耐火塗装単価
〈グレード・耐久性・単価(m2) ※3回塗りの合計〉
アクリル 5~7年 1,400~1,600円
ウレタン 8~10年 1,700~2,200円
シリコン 10~15年 2,300~3,000円
ラジカル 12~15年 2,500~3,000円
フッ素 15~20年 3,800~4,800円
無機 20~25年 4,500~5,500円
塗料用標準色色見本
(追記)責任を退職再雇用者に押し付けた!
千曲市で9月に県の宝=県宝に指定されている「松田館」で起きた火事で、市の教育委員会は原因となったハチの巣の駆除について適切な指示を怠ったなどとして担当の所長を減給処分にしました。減給10分の1、3か月の懲戒処分を受けたのは市教委が管轄する歴史文化財センターの所長を務める63歳の男性職員です。(中略)
また岡田市長は市長と副市長、教育長についても減給5分の1、1か月とする条例の改正案を来月の市議会に提出する考えを明らかにしました。