京都・貴船神社の「夏越しの大祓」


さてさて、6月30日(金)の夕方は、心身浄化の儀式[夏越の大祓](なごしのおおはらえ)で[大祓式](おおはらえしき)が行われますね。処が、この儀式、面白いことに各神宮・神社でのお祓いの所作などが若干異なるようですね。

日本の心の原点である神社の大祓(おおはらえ)について、貴船神社フェイスブックで分かり易く掲載していましたので、以下に掲載します。


京都・貴船神社の大祓式


大祓式(おおはらえしき)心身浄化の儀式
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(写真・今宮康博)
形代(かたしろ)が貴船川の清流に溶けて消えるように、罪穢(つみけがれ)はことごとく消滅する

宮中や伊勢の神宮をはじめ、全国の神社でおこなわれる「大祓式」。
6月30日と12月31日、年に2回おこなうのが恒例となったのは、
およそ1,300年ほど前、第40代天武天皇の時代といわれている。
恒例になるまでは、重要な祭儀の直前や、天災による災害などの折に
臨時に「大祓式」がおこなわれていたと推測される。

古来、「人は常に誤りを犯し得るものである」…という人間観がある。
人は日常生活を送る中で、知らず知らずのうちに罪を犯し、穢(けがれ)に触れてしまう。
ゆえに半年に一度、恒例の「大祓式」で身心を清めてきた。
それは「神に近づくために不可欠の浄化」だった。

天災など様々な理由で乱れてしまった秩序の回復のため、
不可欠の浄化として大祓式は臨時におこなわれ、それが恒例化したのであろう。

『畏怖(いふ)すべき自然の猛威。いかにそれに対する恐れが不足していたか。
 驕(おご)りがすぎたのではないか?』
それこそが、先人が見出した自然の神々への畏敬の念である。 

千年に一度といわれている東日本大震災を受け、特に「祓」を徹底すべきといえるかもしれない。「大祓」によって心清らかに立ち返り、被災地復興協力のため、いま一度、心をひとつにするために。

「大祓」の原点を再確認し、一人ひとりが自覚を持った「祓」となるように。そして「日本復活」への意欲に満ち溢れるように祈念を込めて。

【 夏越の大祓式 】(なごしのおおはらえしき)

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(写真・今宮康博)

6月30日におこなう大祓は「夏越祓」(なごしのはらえ)、
または「水無月祓」(みなづきのはらえ)とも呼ばれる。
一年の折り返しにあたる日に半年間の罪・穢(つみ・けがれ)を祓い、
残り半年の無病息災を祈願するのである。

大祓詞】 (おおはらえのことば)

貴船神社では日々の御日供祭やご祈祷の際にも大祓詞を奏上する。

大祓詞の内容は、具体的には日本神話の内容、罪穢(つみけがれ)を神々がどのようにして祓うのか、そしてその罪穢がどのように消滅してゆくのかを綴っている。

禊(みそぎ)と祓の双方を記した神道思想の根本たる内容が記され、これを唱えることによって万象の浄化をおこなう。

紛れもなく神道における最高の「祓の祝詞(のりと)」である。
この世の罪穢をすべて徹底的に祓い浄め、明き浄き正しき直き境地を求めることが神道の根本思想なのである。

※『大祓詞』 全文と解読は別途掲載します

ちなみに「祓」は、「はらい」といったり、「はらえ」といったりするが、一説によれば、「はらい」は自らがすることをいい、「はらえ」は人に命じてさせることをいう…とある。(本居宣長古事記伝』)

「はらえ」という言葉を用いる場合、祓うのは自分ではない。
あくまでも人形(ひとがた)などの依代(よりしろ)に罪穢といった厄を撫でつけ移し、何者かによって祓ってもらうことをいう。
この何者かこそが、神である。

一方、「はらい」の場合、祓うのはあくまでも自分で、自らの力によってこれを祓うことをいう。神道に限らず、本来の「祓」は後者であることは稀であり、罪穢を祓うのは大祓詞の読み手ではなく、「神々である」ということがわかる。つまり、大祓詞は「おおはらえのことば」と読む。

大祓詞は、そもそも大祓式の際に「神の言葉」として参列者に対して
聞かせるための祝詞だった。後に、唱える事で功徳があると考えられるようになり、ご祈祷などにおいて御神前で奏上するようになった。

大祓式の際には神職に合わせて、ぜひ声高らかに唱えていただきたい。
唱える事で罪穢を祓い、心身ともに浄化する。唱えれば唱えるほど
功徳を増す祝詞。言い換えれば「神に近づくための祝詞」ともいえる
かもしれない。
穢(けがれ=氣枯れの状態)からの脱却、すなわち氣力再生である。

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(写真・今宮康博)

【 茅の輪 】(ちのわ)

チガヤで作った輪。束ねたカヤの大きな輪をくぐる茅の輪くぐり神事は全国の神社でおこなわれている。

茅の輪が疫病など夏季の災厄を除くとか、身体についた穢が祓われるという呪術的(じゅじゅつてき)な力を有しているという信仰と
「大祓」が強く結びついている。

茅の輪をくぐることは、ある世からの脱皮再生を図るという意味があると考えられ、6月晦日が重要な折り目であると捉えられていたことがわかる。

青々とした植物は再生を促す力を宿すと考えられていたことからも、青い茅が特に重視されたのかもしれない。

茅の輪くぐり神事は、独特の作法がある。
まず、茅の輪を正面から入って左へまわり、また正面からくぐって右へまわり、もう一度正面から左にまわってくぐる。

要するに、横8の字に3度くぐる。
これは夏に流行しがちな悪疫(あくえき)を除けるための呪的(じゅてき)な儀礼である。

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(写真・今宮康博)

蘇民将来 】(そみんしょうらい)

茅の輪の呪術的信仰の由来は古く、奈良時代の『備後国風土記
逸文(いつぶん)の「蘇民将来」(そみんしょうらい)に見える。

蘇民将来と巨旦将来(こたんしょうらい)という兄弟がいた。
ある時、素戔嗚尊(すさのうのみこと)が旅の途中、一夜の宿を求められた。巨旦将来は裕福な身であったにもかかわらず尊(みこと)の願いを拒み、それを断った。

しかし、蘇民将来は貧しい身であったにもかかわらず、快く尊を迎え入れ、粗末ながらも出来る限りの食事を饗し、手厚く接遇申し上げた。尊はとてもよろこばれ、旅を続けられた。

数年後、尊は再び蘇民将来の家を訪れ、お告げを下された。
『これから先、悪疫が流行することもあるだろう。
その時にはチガヤで輪を作り、それを腰に付けておれ。
そうすれば、悪疫を逃れられるであろう。』

やがて尊のお告げ通り、悪疫が流行した。
かくして、悪疫の流行によって富みたる巨旦一族はことごとく滅びてしまったが、貧しき蘇民一族は悪疫の難を逃れ無事であったという。

以来、尊に教えられた通りに〈蘇民将来之子孫也〉と記した茅の輪を作り、後の世まで平穏に暮らしたという。

【 唱え詞】(となえことば)
ちのわくぐり神事の際には3つの唱え詞を唱えながらくぐる

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※この茅の輪のくぐり方画像は、出雲記念館ブログより借用しました

①『水無月の 夏越の祓ひ する人は 千歳の命延ぶというなり』
 「みなづきの なごしのはらいするひとは ちとせのいのち のぶというなり」
※『拾遺集』よみ人知らず

古くからこの和歌を唱えながらおこなう大祓式は、水神を祀る貴船神社に最もふさわしく、最もゆかりが深い儀式である。

②『思ふこと みなつきねとて 麻の葉を 切りに切りても 祓へつるかな』
 「おもうこと みなつきねとて あさのはを きりにきりても はらえつるかな」

(現代語訳)
水無月晦日、思い悩む事が全て無くなってしまえと祈りながら、
麻の葉を細かく切りに切って祓いをしたことだ。
大祓式にあたり、歌に祈りを込めた和泉式部らしい名句。

③『蘇民将来蘇民将来(そみんしょうらい)

茅の輪くぐり神事の最後の唱え詞は、『蘇民将来蘇民将来
大祓で穢(=氣枯れ)を祓うことによって氣力再生を図る、

すなわち「若返り」を祈る。大祓は「蘇民将来」の故事に則り連綿と続けられてきた、息災延命・長寿祈願の行事である。

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(写真・今宮康博)
切り裂く音がすがすがしい「祓」の儀式

【 祓物(はらいもの) 】

大祓神事では、麻と木綿(ゆう)を8つに切り裂いて「祓」の儀式をおこなう
麻と木綿は、そもそも神々への手向け物であった。その貴重な物を
贖物(あがもの)として神に差し出し、罪穢を祓うための祓具として
切り裂く。大祓詞のなかに「八針(やはり)に取り裂きて」という言葉が
登場するが、これによって魔を切り裂くのである。

水無月の祓 】(みなずきのはらえ)

水無月。その真意は「水が無い月」ではなく、「水の月」という意味。
梅雨の最中、まさに水神を祀る貴船にふさわしく、雨の恵みが多い月。
湧き出す御神水に触れるたびに、「水の教え」を思う。
〈自ら清くして他の汚水を洗い清め清濁併せ容るるの量あるは水なり〉
すべての汚れ(穢)を洗う(浄める)力を持ち、自らはその清らかさを
保ち続ける。

『御祓する きぶねの川の 瀬をはやみ ながるる年の 半過ぎぬる』
「おはらいする きぶねのかわの せをはやみ ながるるとしの なかばすぎぬる」
※権大外記 (ごんだいげき) 中原康富 (なかはらのやすとみ)

室町時代外記局(げききょく)官人を勤めた中原康富がこの歌に詠んだように
貴船神社でも盛んに大祓式がおこなわれていたことが偲ばれる。
罪穢を人形に移し、川に流して祓い清める「大祓式」は
水の力、すなわち水神のお力が必要不可欠であり、貴船神社でおこなうのは
特に意義深いものであり、いとも道理に適っているのである。

夏越の大祓式 6月30日 午後3時齋行

本宮社殿前での神事。まず神職大祓詞を宣(の)る。
続いて神職2名が「祓」の儀式をおこない、
次に神職・参列者は各々が人形(形代かたしろ)に罪穢を移す。
そして切麻(きりぬさ)という祓具を用いて自らを祓う。

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(写真・今宮康博)

大祓詞を宣(の)りて祓の儀を始める。
「宣り」とは「ノリ」とよみ、一説には神が「ノリ」移って
言葉を申し上げるという意味。広い意味で祝詞(のりと)も
同じ意味がこめられている。

引き続き、茅の輪くぐり神事

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(写真・今宮康博)

引き続き、大川路の儀
貴船川の畔に移動し、神職・参加者らの人形と全国の崇敬者から
届けられた人形を大祓詞を唱えながら川に流し祓い浄める。

お祓い料 1名200円
当日ご参加希望の方は、10分前までに社務所受付にお申し出ください。

貴船神社 所在地
交通アクセス
バス:京都バス(33系統)「貴船」バス停下車 (下車後徒歩約5分)
貴船口駅からのバスは、春分の日から11月末日頃の日曜日および年始(初詣時期)に運行。徒歩の場合:片道約25分(2.1Km)



(一部抜粋))
当宮の「大祓式」(6月30日又は12月31日)は、16時より楼門前の参道で神職とともに「大祓詞おおはらえのことば」を唱え、人の形をした「形代かたしろ」に罪穢れを遷して、浄火じょうかでお焚き上げし祓い清めます。

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大祓の方法

1 「形代(かたしろ)」にお名前と数え年の年齢を記入します。
2 次に、頭の先から足の先までの身体の外にある、あらゆる部分を「形代」で撫でて、罪穢れを遷します。
3 最後に、「形代」に大きく息を三回吹きかけ身体の内にある罪穢れを遷します。

※ 初穂料は同封の振込用紙をご利用の上、お志でお納めください。


出雲大社の茅輪神事(ちのわしんじ)
出雲大社の茅の輪は「〇形」ではなく、「U形」をしています。

 6月30日夕刻からは神楽殿において國造(宮司)が國造家伝統の「茅輪ちのわ神事しんじ」をお仕えします。

 この神事にて、國造は御神前での拝礼の後、一対の茅を持って両肩に掛け、後ろに控えた神職がゆっくりと振り下ろす茅輪をくぐります。これを繰り返すこと三度、両肩に掛けた茅を後ろへと投げ落とし、再び拝礼をして神事を執り納めます。

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 國造奉仕による「茅輪神事」(画像上段)がお仕えされた後には、同じく神楽殿にて一般参拝者による「輪くぐり神事」(画像下段)が執り行われます。


奈良・大神神社の茅の輪

三ツ鳥居の形に似せた「三輪の茅の輪」
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※画像は「奈良の宿大正楼」サイトより借用しました


夏越の大祓の日にだけ食べる古来の縁起物『水無月(みなづき)

ういろを氷に見立てて

お菓子『水無月』についての説明


(続編)
神様も名前を告げなきゃ分からない