社長命令に反して結婚式出席を選択

 
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      私の履歴書・395
 
本社着任二年目の1992年3月、札幌営業所での元部下・亜子社員の結婚式の案内状が来ました。
 
結婚式は6月13日(土曜日)。
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早速、吉田本部長に、結婚式の前日(6月12日)の有休をとり、札幌での亜子社員の結婚式に行く了解をとりました。
 
処が、この6月13日をめぐって思わぬ事態となるのです。
 
以前から本社の社員旅行に関しては、賛否両論、問題提起されていました。
特に営業本部の場合、土曜日や日曜日、何処かの部署で展示会・顧客の新店舗のオープン・諸業界の会合などの行事がありました。
 
故に全部署の納得する日時などはあるはずもなかったのです。
 
それと、「観光バス七台を仕立てての旅行はいかにも時代錯誤」とか、「宴会のお膳で役員がずらり雛壇に座るのは、社員慰安ではなく、役員慰安である」との批判。
 
更に「旅行経費の半額は、給料天引きで積み立てられたもの。それなのに何故気を使ってまで役員と旅行をしなければならならないのだ!」と。
 
一種の社長並びに役員批判ですから、社長の御機嫌は麗しくない。
 
にも拘らず、前年、社長の意に反して各部所が好きな日時を選んで社員旅行をすることになったのです。処が、或る部署の社員旅行で破廉恥問題を起したとか。
 
社長が「それみたことか」と言って、この年は全員での社員旅行となったのでした。
 
当初、若手中心の社員旅行実行委員会では4月下旬予定と公示していましたが、この頃は全国各地の商業組織の総会が始まる時期。
 
営業本部の各部署からの反対で5月23・24日に変更。
それでもブーイングの声は収まりませんから、社長が大層ご立腹とのこと。
 
そして社長と囲碁を打った5月10日(日)の週の中頃、「23日に社長には抜けられない用事が入ったとのことで翌6月6・7日に変更」との連絡がありました。
 
この変更に怒ったのが二人の部長とその部下達。
社長の都合で自分達の予定をコロコロ変えさせられたのでは堪ったものではない。
 
営業本部内では新たなブーイング「社長批判」で喧騒たるもの。
その話を聞いた社長が吉田本部長に厳命。
 
「社員旅行参加は社員の義務である。一人の欠席も許すまじき」と。
社長も大分熱くなっていたようでした。
 
吉田本部長室で、「危なかった! もう一週ずれていたら亜子の結婚式と重なるところだった」等と笑いながら話していたのも束の間。
 
「社員旅行日が6月13~14日と決定しました。全員参加するように」とのお達し。
またまた日時の変更。どうやら6月上旬は、ホテルがとれなかったようでした。
 
とうとう亜子の結婚式と重なってしまいました。
 
私は当然亜子の結婚式に行くので社員旅行に欠席届を出しました。
早速吉田本部長から「社長命令だから社員旅行に参加するように」とのお達し。
 
この件で再々呼ばれるも、都度私の回答は「いやいや、亜子の結婚式に出ます」と。
或る日のこと、社長室からこわばった顔で吉田本部長が出てきて私を呼びました。
 
「『今や君の部下ではない亜子社員の結婚式の方を選択するなら、君はこの会社での今後の昇進は無い』との社長の仰せである」 と。
 
愕然としましたね。そこで言わせてもらいました。
「社員旅行は毎年行われますから今年参加できなくても来年参加できます。
でも、結婚式は一生に一度のことですから何がどうあろうと結婚式を選択します。
それが社会の常識ではありませんか」
 
「水無瀬課長が仲人だったら君の選択は正しい。然し仲人ではないだろう」
「仲人ではないですが、乾杯の音頭をとります」
「それだったら、君の代役は幾らでもいるじゃないか」
「そういう問題と違います。私が社員の結婚式よりも社員旅行を選んだことにより、然も社長命令でとなると全社員のモチベーションに影響します。ですから、私は亜子の結婚式に出ます」
「もう一度言う。君の今後の昇進はないぞ。それに会社経費での札幌出張は認めん」
「結構です。そんな理不尽な命令には従いません。昇進しなくても結構です。
それに、そもそも会社の旅費を使って札幌に行く気は当初からありません」
 
そう言って本部長室を出ました。
 
この話は、たちまち社内を駆け巡りました。
慰めの声をかけてくる人や、中には総務部長のように「水無瀬課長、君は首だね」と言う人もいました。
 
当然、札幌では福知所長(当時)が部下達にこのことを伝えていました。
 
「水無瀬課長は社長命令に反して札幌に来る。もう今後の昇進は無いし、ひょっとしたら首になるかもしれない」
更に「札幌で水無瀬課長と会話をしない方がいい。反社長派と思われるから」
 
そして、遂に、とうとう、その6月13日(土)が来ました。
私は、前日、伊丹の最終便で千歳に飛んで札幌のホテルに宿泊。
 
当日、結婚式会場のホテルに行きますと、受付には元部下が数人いました。
彼等に声をかけるのですが、何となくよそよそしい。
 
受付にご祝儀袋も渡して会場へ。
終日、私の周りだけ白け鳥が飛んでいましたね。
 
まあ、それでもあの亜子がちゃんとした男と結婚できて嬉しかったですね。
最初に会った時のことや最後の花園温泉のこと等を思うと、感慨一入でした。
 
 
私の履歴書282 かっての不良少女・亜子との出会い(序)
私の履歴書283 亜子との秘密の約束
私の履歴書377 北海道最後の日の温泉入浴
http://blogs.yahoo.co.jp/minaseyori/60337813.html
 
 
尚、会員制結婚式の場合、披露宴の主催者は有志一同。
この時も結婚式のスナップ写真を一枚も送ってこなかったですね。
何しろ出席者がこの時でも270人でしたからコストの問題でしょうか。
 
 
以後、同情や蔑視にさらされました。
でも、私は平然と各会議に出席し、社長と何度も顔を合わせていました。
 
そのうち、何かを言ってくるだろう。
それまで何事も無かったように知らん顔をしていようと。
 
この状態は、その年の秋まで続きました。