部下に、私の行動を見せて伝えるもの

イメージ 1.
.
『やってみせ、いって聞かせて、させてみて、
. 褒めてやらねば人は動かじ』
.
山本五十六 (元帥・海軍大将・連合艦隊司令長官)
.
.
この「やってみせ」が、悩ましいところですね。
.
それが、部下の一生に残る映像記憶ですからね。

私の履歴書・195

一年生も二年生も、自ら難題に取り組んで手を煩わしませんでしたね。
自ら種蒔きした顧客は、自ら刈り取りをしていました。

同行を依頼されても、大半は契約が済んで
あるいは契約セレモニーとしての上司の私との挨拶訪問です。

一年間で、私の力を必要とした営業は二件ですね。

その中の一つ。二年生になった笹山君の場合。
尚、このケースでは、自分の言った事しか思い出せませんけど。

1984年早春、笹山君が何度訪問しても、相手にしてくれない冷菓問屋がありました。
そこで、私に同行を依頼してきました。

場所は南大阪。従業員7人の有限会社。
午後6時半にその冷菓問屋を訪問。

会社の出入り口で社長と会いまして、名刺交換をした時、私、言いました。
「社長、ひょっとして売上数字を落としているのではありませんか?」

社長は、私の顔をじっと見てから
「どうぞ、奥に上って下さい」 と言って奥の座敷に案内してくれました。

座敷テーブルで一通りの挨拶が終った後に私は白紙の契約書冊子をテーブルの右隅にドスンと置きました。
社長と笹山君は目を丸くしました。

「顧客の数を幾ら落としましたか?」
この時の社長の数字は記憶にありませんが、十軒やそこらではなかったはずです。
「撤去したアイスストッカーは、何台野積みされているのですか?」

「取られた先は藤三商会㈱ですか?」
恐らく、前年秋の私の講演で、藤三商会㈱の連中は一般小売店に攻撃をしかけているはず。
やはり、そうでしたね。

「アイス業界のマーケットサイズ(市場規模)は拡大しているはず。
そこで数字を落とすとは、通常では考えられないことですね」

この会社の小売店に貸与しているアイスストッカーにも藤三商会㈱がどんどんアイスを入れているとの事。

つまり、僅か半坪弱のアイスストッカーの中でのシェア(市場占有率)争いとなっているのです。
それだけではありません。

自社が納入したアイスを消費者がストッカーのガラス扉を開けた時にとりやすいように一番上に持って来る。
他社が納入したアイスは、ストッカーの底に追いやる。

ですから、一日に何度か訪問しないと自社の納入した商品は取れない底になる。
一種の消耗戦でした。

「この戦に勝つためには、夏場に増員しなければなりませんね。
増員しただけの収益がアップするでしょうか?」

「関西だけで年商600億の藤三商会㈱は、完全なる強者です。ガリバーですね。
社長の会社は当然弱者。弱者が、強者とまっこうから対峙して勝てるとお思いですか?」

「弱者の御社が戦う場所は、ニッチ(隙間)。つまり、今までアイスを販売していない所。
それと、藤三商会㈱が手を出せない所ですね」
「そのような店があるのですか?」

そう言って社長は奥様を呼びました。
奥様も同席となりました。


「社長も奥様も、ソニーのウオークマンをご存知ですね。でも、よくよく考えたら、あれは単に従来のステレオとテープレコーダーを一つにしたものに過ぎないですね。それが何故に爆発的な売れ行きなのでしょうか。

好きな曲を部屋や車の中等、外界と遮断された場所に限らず、どんな場所でも聴くことが出来ますね。
オークマンとは、新しい習慣・文化の提案だったのです。

アイスクリームの世界でも、レディーボーデン(当時は明治乳業。今はロッテ)がバニラで、冬季でも家庭でアイスを食べる文化を提案し、伸びていますね。

と言うことは、新しい文化と言う事は、売れる物と売れる場所が違うと言う事ですね。
例えば包装されたソフトクリームやバニラ系は、冬季でも室内なら売れていくと言う事ではないでしょうか」



「社長は、古くからライオンズクラブの会員とお伺いしていますが?
例えば、お知り合いの会員や、奥様の知人に、人が集まる屋内をお持ちの方はいらっしゃいませんか?」

「屋内の場合の利点は、夏期に極端に売れるわけではないですが、冬でも売れます。それと納入価格が乱れませんから年間安定した利益が見込めます」


社長の指示により、奥様がライオンズクラブの会員名簿や奥様の同級生名簿も持ってきました。

社長と奥様は、お互いに「あそこはどうや? ここはどうや?」との検討が始まりました。
パチンコ・ゲーセン・レストラン・スポーツセンター、etc.  (今では当たり前ですが)


「社長、大分時間が経ちましたから、言い忘れない内に言っておきます。
一軒の小売店の一本のショーケースに、複数の問屋が相乗りするケースが増えていますね。
これに勝つには、ライバルのアイス問屋の配送ルートの把握ですね。

全般的には、ライバルの配送した後に配送し、ストッカーの中の自社の分を顧客が取り易い最上段に並べ替える方法ですかね。
それとも、逆のルートでの配送と言う手もあります。

でも、全部の店で勝つことは大変な労力です。
ですから、何処の店で勝つか、何処の店で負けるかを決めておいたら良いと思います。

勝つ対象の店では、どうしたらライバルの問屋が諦めるか。
従業員の皆さんと、このアイスの閑散期に検討してみたら面白い手が浮かぶかもしれませんよ」


そう言って、笹山君に目配せをし、引き揚げようとカバンを引き寄せた時です。

社長「ちょっと待って下さい」
そう言って社長は、奥の部屋に行ってから戻って来ました。

「契約書に判を押しますから、その契約書を開いて下さい」
「社長、未だ、価格が決まっていませんよ」と笹山君。

「価格は、そちらにお任せします」
そう言って社長は、白紙の契約書に社判と丸印を押しました。

笹山君は、それに7台840万円と記入しました。


                      おしまい


(※)藤三商会㈱に関しての具体的記事は、お手数ですが下記URLをクリックして下さい。


No.191《聴衆を総立ちにさせた私の講演》 藤三商会㈱での講演①
http://blogs.yahoo.co.jp/minaseyori/58606744.html

No.192《講演は、最初の数行が勝負》   藤三商会㈱での講演②
http://blogs.yahoo.co.jp/minaseyori/58617912.html

No.193《聴衆の挙手は心臓に悪いですね》 藤三商会㈱での講演③
http://blogs.yahoo.co.jp/minaseyori/58627199.html



《 お時間のある方へのクリックのお願い 》
https://novel.blogmura.com/essay/img/essay80_15_lightred.gif

①ブログランキング・随筆 ←ここの文字のクリックをお願いします。
②にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ ←ついでにここの文字もクリックをお願いします。


①は、只今 24位(先ほどは22位) この一週間の延人数 24人 私のブログ価値 6,365円
②は、只今  9位         この一週間の延人数 25人