社内に潜む泥棒猫軍団

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毎月、ベンチャー企業の役員会(社外)への出席や、トップの相談を受けるのですが、伸びない企業には共通の欠点がありますね。
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それはトップの器が余りにも小さいことです。
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自分の才覚でここまで大きくしてきた自負は分かります。
でも、人を使えないのです。だから、業績が伸びない。
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社員に高レベル高能力を求めてはいるのですが、そういう社員に嫉妬するのです。

だから、優秀な社員ほど、会社を直ぐに辞めます。
チンタラ社員だけで企業が伸びるはずは無いですね。


私の履歴書・179

話はちょっと遡ります。
小橋所長が赴任してから間も無く、事務員が辞める事になりました。

壽退社ということです。
お祝い金を渡そうとしましたが受け取りません。

不思議な事に、二年経っても結婚したという話は無かったですね。
後日、小橋所長が辞めさせたのとの噂がありました。

小橋所長が、直ぐに採用したのが、自分の妻の縁戚の女性。
小橋所長は、前回の広島勤務の時に、広島の女性と結婚していたのです。

採用された女性というのが、大西さん。日本の三大商社の一つの*商事に勤務していた39歳の独身。
営業所内では、役人OBを除けば全員彼女より若い。

32歳の時、23のツバメを飼っていましたが、五年で逃げられたとのこと。
若い雄ツバメは、若い雌の元に飛んで行き、そのまま帰らず。

流石、明瞭な物の言い方。
それに男を顎(あご)で使う。

しっかり者の彼女に事務所と隣接している倉庫を任せておけば安心でした。
倉庫から無断で何かを持ち出すと、激しく叱責の声が飛ぶ。誰が所長か分からない。


以後、ピタリと合っていた食品在庫。流石!流石!
それが、どういう訳か、期末在庫監査で80万円分の欠品。

突然、喉元に匕首(あいくち)ですね。私、顔面蒼白。
「そんな馬鹿な!」

在庫監査に来た本社管理課長に呼び出されて会議室へ。
その管理課長の鞄持ちで同行してきたのが、東京支店時代のツルッパ。

会議室の雰囲気はピ~~ン! 
張り詰めた重苦しい空気。

管理課長 「水無瀬君、どうなっているのだ? 君んとこの在庫は?」
私   「それが分からないのです。どうしてこうなっているのか」

管理課長 「責任は君にあるのだよ。それが分からないって?」
私   「今までの月末在庫は、ちゃんと合っていたのですよ」

小橋所長 「倉庫は主に、大西さんが見ていましたからね」
大西事務員 「私は倉庫に責任ある立場ではありません。倉庫の責任者は所長ですから。
       特に月末月初などの忙しい時は倉庫の入出荷までは目が届きません」

小橋所長 「通行人が持って行ったことも考えられますよ」
私   「ダンボール箱一個の重さが約8kgですよ。それを400個ですか?
    毎日一個盗ったとしたら400日ですよ」
小橋所長 「いやいや、例えばの話しですよ」

私   「BB課の連中が、車に積み込んでいるのを見たことがあるのですが」
小橋所長 「彼等はお客さんに頼まれて持って行く事はありますよ。
     でも、ちゃんと大西さんに出庫伝票を出しているはずですけど」
大西事務員 「全て私がチェックしたとは言いません。中には抜けている時もあったかも」

こんな会話が延々と二時間。

管理課長 「今ここではどうしようもないから、本社に帰って部長に報告し結論を出す。
      取り敢えず、今、始末書を書いて提出してくれ」
つるっぱ 「管理課長、ここは穏便に」

針の筵(むしろ)の上に座らされたような時間がようやく終わりましてほっとしましたね。

しかし、私の場合は、月の内に本社会議も含めて10日は出張ですから、倉庫を監視出来るわけは無い。

本社管理部が出した結論。
定期昇給並びにベースアップストップ。ボーナスカット』

いやはや、またまた!

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以降、この食品販売から撤退を図りました。
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各地の問屋にお願いをして、一軒ずつお客さんを渡していきました。
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しかし、どうしても引き受け手のいない離島には、宅配便で送りました。
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やれやれ、これで一安心。


商品在庫も僅かになり、今度は間違いなく数が合っている。
出張から帰ってくる都度、在庫確認をしましたね。

期末在庫監査から半年後、再度、在庫監査がありました。
なんと! またまた在庫が合わず! その額、30万円。

どうしてこうなのだ!
毎月末には在庫が完全に合っていたのに!

やられました!

入荷簿に、一部の入荷の記録が記入されていないのです。
入荷の記録されていない分、消えていたのです。

犯人は、明らかに社内の者です。BB課の連中です。
それに帳簿を付ける大西事務員がからんでいます。

でも、証拠がありません。

大西事務員 「今年度の記入は、私ではありません。もう一人の事務員です」
もう一人の事務員 「私は、回ってきた伝票を帳簿に記入するだけですから」


BB課の営業マンが白状したのは、私が一年後本社FF営業部へ転勤してから。
本社の自分の席に座っていましたら、広島BB課の二人がやって来ました。

「おい! 泥棒猫二匹が今日は何用で本社?」
「BB営業部主催の会議ですよ。それにしても泥棒猫とは!」

「でも、泥棒猫には間違いないでしょう?」
「あれは、小橋所長の命令ですよ」
「そうそう、値引きの代わりに持って行けって。その分、利益が上るから」

「一回に何ケースかっぱらったのか?」
「一回の平均が15ケースから20ケースかな?」

「泥棒一回につき、3万円から4万円じゃないか」
「そんな大きな声で言わないで下さい。周りに聞こえるじゃないですか」

「証言してくれますか? その事を!」
「堪忍して下さい。首になりますから。未だ子供が小さいし」

「アホなこと言いなさんな。僕にも二人の小さな子供がいるのだよ」
「だから、気の毒と思っていたのですよ」

「何をぬかすか、今更! ワシは昇給無しにボーナスカット。
君たちはまともな昇給にまともなボーナス。よくぞ、ぬけぬけと!」


証言してくれませんから、手の打ちようがなかった!
この二人とは、広島時代の後半、結構仲が良く、家族同士の付き合いをしていたのに。