当たり前の事を当たり前に実行がノウハウ

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我社の機器500台の販売先大阪食品(株)(仮称)が倒産。
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私達は、その機器の貸与先である食品小売店500軒を一軒づつ訪問。
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下記確認書に小売店の捺印をもらうのが当面の仕事でした。
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「本機器の所有権並びに占有権はメーカーである太秦電機(株)に有ることを確認する。尚、太秦電機(株)の指示に従い、太秦電機(株)の費用負担にて本機器の移動や撤去を行う。」

私の履歴書・105

先輩二名と私との大きな違いは、私は胸を張って小売店を訪問したことです。

法律的には、一旦大阪食品(株)に売り渡した機器の所有権は我社に無く、手形訴訟上の債権があるだけですから、生真面目な先輩二人にとりましての小売店訪問はビクビクもの。

私にとっては倒産劇や夜逃げ等は、かって家電小売店のアルバイト店長時代、何度も垣間見てきた事ですからね。現物を押さえた方が勝ち。

この我等の小売店から捺印をもらう行為は、現物を押えると同時に小売店を倒産トラブルから防ぐもの。

ですから、つかつかと真っ直ぐに奥にいる店主に歩み寄り名刺を出しましたね。
その前に、機器には他社の食品が入っているのを確認してから。

私「新聞でご存知だと思いますが、大阪食品(株)が倒産しましたね。
倒産に付き物のややこしい人間が、債権者として乗り込んできています。
つきましては、メーカーである弊社が、小売店の皆様にご迷惑をおかけさせない為に訪問しました」

「機器の側面に貼られているアルミシールを御覧下さい」
と言って店主を機器まで連れて来て、かがませて確認させるのです。

「今、確認されたようにこの機器のメーカーは弊社なのです。メーカー責任として、ややこしい組織との争いで皆様にご迷惑をおかけすることは出来ません。」

「つきましては、この書類に判子を押して下さいませんか。押しましたら、メーカーである我社が全ての対応と一切の責任を負います。」


訪問の最初の三軒程は、色々と法律上の質問をしてきましたね。
よどみなく悉くそれに明快な回答をしますと、店主の抱えているそれとは全く別の問題についての法律相談も受けましたね。


渋る店主に対しては、「今は、大阪食品以外の商品を機器に入れていますね。」
更に「我社が引き揚げるまで、この機器の使い方はご自由にどうぞ」

更に渋る店主には「今後、色々な人がやってくるでしょう。その場合、我社は一切責任を負いません」
28歳の若僧が、40代50代の店主に申しつけるのですからね。


最初の一軒で捺印を貰いましたら、倒産した大阪食品(株)の機器納入先名簿を見せました。

「あなたの知り合いの店の場所を地図で描いてくれませんか」
更に、「これからそこに訪問しますから電話をしておいて下さいませんか」

それを頼りに次の店を訪問しましたら、店主が判子を持って待ち構えていましたね。無論、私の訪問目的は、紹介してくれた店主が電話で既に説明をしてくれていましたから3分もかからなかったのです。

最大の消費時間と言えば、店を探す移動時間でした。

尚、全国には組合法に基づいた業種別地域別商業組合がありまして、各組合の会合が度々開かれています。
店主の皆さん、結構知り合いが多いはず。だから連鎖で紹介がつながって行くのですね。


処で、ノウハウと言いますと、知ってしまえば何の変哲も無いこと。
大金をはたいてアメリカから購入したイトーヨーカ堂の「セブンイレブン・マニュアル」のようなもの。

当たり前の事を当たり前に出来ないから当たり前にする事がノウハウで、当たり前の事を当たり前にしたなら、大きな結果を得れるのですね。


その後のこの機器500台の顛末は、

我社は、各小売店にあるがままの現状で50万円で落札(@1,000円)。
そして倒産から一年後、これと同じ機種在庫は俄かに完売。新らたに生産を始めましたが間に合わない。

そこで、この500台を引き揚げて、再塗装して出荷。急場をしのぎましたね。
尚、大阪食品への納入価格は@12万円の6,000万円。引揚再塗装した分の業者卸価格がその倍の価格。

火が点いた人気とは恐ろしいものですね。