遠ざかる二度目の春

私の履歴書・54

《天の試練かー隣室での自殺未遂》

一月、田舎の両親宛に届いた大学からの一通の手紙。
それは、私の退学届け受理の知らせ。

狼狽(ろうばい)している両親に手紙を書く。
「一筆参上。今後、親子の縁は切らせていただきます。独力で生きて行きます。」


大学から呼び出しがあった。事情聴取。
面談は、ミニゼミ担当助教授(当時)。 追記)09.11.19  当時 法学部 山下健次助教授

「再受験に失敗した場合、復学出来る。但し、1回生(1年)からやり直しだが」
お断りしました。復学はしないと。背水の陣。

大学入学後、二ヶ月に一度は、Z会の主催する全国模試を受けていました。
模試の会場は、京都・洛北高校

全国順位は700番台~900番台。東大合格条件の1000番台には入っていました。
11月から受験モードに入りました。



いよいよ三月初めの試験まで残るは一週間。
前年の轍(てつ)を踏むまい。心身万全!




《天は、またまた我に試練を!》

この本番一週間前の朝、突然、隣室から大きないびき。
「ガゥ~~、ガゥ~~」

仕切りの壁が振動するほど。それが昼を過ぎても続く。
緊張している私には、気になる。気が散る。

壁をドンドン叩いた。「うるさいぞ~!」
依然と続くいびき。



夕方、宵闇。階段を誰かが小走りに上って来る。女性の足音。
隣の部屋に入って一瞬間をおいて、ドカドカと階段を小走りで降りて行く。

暫らく。「ピ~ポ~、ピ~ポ~」
救急車。私の部屋の真下に停まる。誰が急病なの?

彼等は、隣室にドヤドヤと駆け上がって来た。
そして、いびきの音が部屋を出て廊下を降りて行く。


隣の彼だ!
担架でかつがれ、救急車へ。
「ピ~ポ~、ピ~ポ~」



睡眠薬自殺を図ったと言う。大学三回生(三年生)。
いつも男女ペアーで遊びに来ていた女性の方に恋をした。
横恋慕?三角関係?


愛していると告白。女性は、彼を選択しなかった。
絶望した彼。死を選ぶ。前日、遺書を彼女に郵送して。




《絶望への序》

前日までの京都の底冷えの夜とは違って、何故か暖かいその夜。
窓を目いっぱい開けました。


「愛するとは!」
「絶望とは!」
「死するとは!」


「別れの言葉も言わずに、田舎を去った私とは!」
「愛しているとは!」
「仕合せとは!」


「恋しい!!」



イメージ 1.
無風。生暖かな空気の静止。
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いつの間にか子の刻は過ぎ、丑の刻。
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窓辺の私。
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いつしか思考停止。
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ただじっと夜空を見つめているだけ。



(写真は、12月末の水無瀬川に上る月)