脱税うどん店とちょろまかし従業員

1978年(昭和53年)頃のことですけど、立ち食いうどん屋の従業員のちょろまかしが好例です。

一見、たいした金額では無さそうですが、どうしてどうして、一店舗で百万や二百万円どころではないですよ。

何故、これが見逃されていたかと言うと、原因は、前回お話した京都・老舗のうどん屋の脱税方法が、ここでも実践されていたからです。

(参考)前回記事 老舗うどん店の脱税方法
http://blogs.yahoo.co.jp/minaseyori/47933052.html

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あるパーテーでの事、江東区のあるJR駅舎内の立ち食いうどん屋のオーナーから相談を受けました。オーナーは、左手が不自由な方でしたね。

オーナー「従業員が、売り上げを誤魔化しているようだが、防ぐ方法はないものか?」

私「それは簡単ですよ。食券自動販売機を二台置いたら良いですよ。但し、当初は一台だけですよ。そして、管理は店長に任せるのですよ。」

今でこそ食券自動販売機があるのが当たり前ですが、当時は切符自動販売機だけでしたから。
暫く経ってから又相談の電話が来ましたね。

オーナー「食券の機械は故障ばっかり。従業員は、修理依頼の連絡もしない」
聞けば、当初の一ヶ月間にまともに動いたのは一週間程らしい。

やっぱりそうか。

メーカーの下請けの修理業者に聞いてみると、釣銭をストックしてあるホッパー(円錐形の筒)に輪ゴムや小さい紙切れを入れられる事、度々。釣銭が詰まって本体が自動的に停止・使用不能になるらしい。これも想定通り。

これが収まったら、今度は、券を詰まらせるのですね。あの手、この手と考えられる事全てを次から次へとやって、機械を止めるのですね。

そして、機械の上にも、壁にも『故障なので現金でお願いします』と張り紙。

頃合を見計ってオーナーに言いました。「もう一台、食券自動販売機を置いて下さい。そして、この二台の一切を社長が直接管理してみて下さい。鍵は従業員には渡さない事。但し、三ヶ月間だけで良いですよ。」

更に、「近くの人に、毎日三回、故障の紙を貼っているかどうかを有料でちょっと視てもらったら良いですよ」と。

その三ヵ月後、オーナーから豪華な夕食に招待されました。
その会席で、彼は言いましたね。

「過去のどの月と比べても、この三ヶ月の月間売り上げは、20万円から30万円多い!」
更に「年間300万円、五年間で1500万円、やられたよ!」

この話し、丁度、三十年前の事です。

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ある意味で、従業員が、脱税に協力していましたから、社長としては、従業員を責める事が出来なかったのです。

従業員のおばさんが、こっそりと抜け出して、駅舎の反対側で製麺業者とこっそり会い、ズンドリ重たい袋を受け取っていました。あれ、中は生麺。やりたい放題。

従業員の一人だけが着服するのではなく、組織ぐるみと思われる状態にまでなっていると言う事は、そもそも、オーナーの脱税ありき!ということの好例ですね。

尚、この立ち食いうどん店の従業員による食券自動販売機を故意に故障させ、ちょろまかす同じ事態は、それから3年後の山口県周東町国道2号線沿いの立ち食いうどん店でも起きました。場所は岩国市の錦帯橋から20kmほど西の峠のような上り線沿いでした。


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