三好達治の詩を口ずさみながらの散策

この桜の時期、京都のお寺の境内を、ゆっくりと散策しますと浮かんでくる詩。

それは、中学時代の教科書で習った三好達治の詩集『測量船』(1930)の中の一つ。

詩『甃(いし)のうへ』

大半の方は、思い出せるでしょうね。ロマンティックな詩ですからね。


https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/regretlife/20010101/20010101010110.jpg (写真は三門)


八日、南禅寺に寄りました時、「み寺の甍(いらか)みどりにうるほひ」を、偶然、赤レンガの
水道橋をくぐった所の南禅院で見つけました。


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それから「廂(ひさし)々に 風鐸(ふうたく)のすがたしづかなれば」を見上げました。


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写真の風鐸(ふうたく)は、法堂正面右端のものです。



この下で、風鐸(ふうたく)を見上げていますと、五人の女性連れにパチリを頼まれました。

私「うまく撮れているか確認して下さい。ぼやけていたら撮り直ししますから」
内、一人の女性「ぼやけていた方が、きれいに写るから、その方が良いよ」


https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/regretlife/20010101/20010101010140.jpg (法堂南側)


詩の初めは「あはれ花びらながれ をみなごに花びらながれ をみなごしめやかに語らひあゆみ 」。

この詩に登場する「をみなご」とは、彼女達の四十年以上も前の姿だったでしょう。


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今や「しめやかに語らいあゆみ」どころではありませんね。人生、謳歌ですね。


https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/regretlife/20010101/20010101010150.jpg(法堂)


「ひとりなる わが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ」とこの詩を口ずさみながら、
「み寺の春をすぎゆく」私でした。


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詩 『甃(いし)のうへ』 三好達治

         


            あはれ花びらながれ

            をみなごに花びらながれ

            をみなご しめやかに語らひあゆみ

            うららかの跫音(あしおと) 空にながれ

            をりふしに瞳をあげて

            翳(かぎ)りなき み寺の春をすぎゆくなり

            み寺の甍(いらか) みどりにうるほひ

            廂々(ひさしひさし)に

            風鐸(ふうたく)のすがた しづかなれば

            ひとりなる

            わが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ




          ☆       ☆       ☆


(参考)『おみなご』の意味と語源

《古くは「おみなこ」》女児。また、一般に女性のこと。

日本神話に登場する最初の男女神は、イザナ「キ」ノミコトの『キ』(男)、イザナ「ミ」ノミコトの『ミ』(女)であり、「おきな=翁­」「おみな=嫗」という言葉もあります。

イザナキ、イザナミ以前の神々は性別がなく、­日本の神々で最初に性別を持った神として登場するのが、イザナキ、イザナミです。

『おみなご』とは、「おみな=嫗」(老女)の子ですから、女児や老いていない女性のこと。
尚、この詩でのおみなごとは、若い女性を指します。