三好達治の詩を口ずさみながらの散策
この桜の時期、京都のお寺の境内を、ゆっくりと散策しますと浮かんでくる詩。
それは、中学時代の教科書で習った三好達治の詩集『測量船』(1930)の中の一つ。
詩『甃(いし)のうへ』
大半の方は、思い出せるでしょうね。ロマンティックな詩ですからね。 (写真は三門)
それから「廂(ひさし)々に 風鐸(ふうたく)のすがたしづかなれば」を見上げました。
写真の風鐸(ふうたく)は、法堂正面右端のものです。
この下で、風鐸(ふうたく)を見上げていますと、五人の女性連れにパチリを頼まれました。
私「うまく撮れているか確認して下さい。ぼやけていたら撮り直ししますから」
内、一人の女性「ぼやけていた方が、きれいに写るから、その方が良いよ」
内、一人の女性「ぼやけていた方が、きれいに写るから、その方が良いよ」
(法堂南側)
詩の初めは「あはれ花びらながれ をみなごに花びらながれ をみなごしめやかに語らひあゆみ 」。
この詩に登場する「をみなご」とは、彼女達の四十年以上も前の姿だったでしょう。
今や「しめやかに語らいあゆみ」どころではありませんね。人生、謳歌ですね。
(法堂)
「ひとりなる わが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ」とこの詩を口ずさみながら、
「み寺の春をすぎゆく」私でした。
「み寺の春をすぎゆく」私でした。
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あはれ花びらながれ
をみなごに花びらながれ
をみなご しめやかに語らひあゆみ
うららかの跫音(あしおと) 空にながれ
をりふしに瞳をあげて
翳(かぎ)りなき み寺の春をすぎゆくなり
み寺の甍(いらか) みどりにうるほひ
廂々(ひさしひさし)に
風鐸(ふうたく)のすがた しづかなれば
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ
☆ ☆ ☆
(参考)『おみなご』の意味と語源
《古くは「おみなこ」》女児。また、一般に女性のこと。
日本神話に登場する最初の男女神は、イザナ「キ」ノミコトの『キ』(男)、イザナ「ミ」ノミコトの『ミ』(女)であり、「おきな=翁」「おみな=嫗」という言葉もあります。