何故妻と結婚したのか⑤

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何故妻と結婚したのか⑤


聞いている!知っている!と言うことは、どういう事なのだ。
それから、色々な事が起きるのであるが、その一部は『●●荘物語』として別途書いてある。
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或る日、E子が浮かない顔をしているのに気が付いた。
「どうしたの?身体の具合でも悪いのか?」
「 - - - - - - - - - - - - 」
「何があったの?」
「 - - - - - - - - - - - - 」
話したくない模様だ。私は待った。じィ~~と待った。時計だけがカチカチ。

「来たの」「誰が?」「あの人が」「あの人って誰?」「あなたの付き合っている人」
「まさか!!どうして知ったの?」「タクシーで後を付けたらしいの」
(私の運転の車を追っかけれるとは、タクシーの運ちゃんもなかなかの腕!と一瞬思った)

「そしてどうした」「近くの喫茶店で話をしたの」「何の話?」
「どちらが、あなたの面倒を看るかって」
「それで?」「私の方が、若いから、私が一生面倒看ます!と言いました」
「そしたら?」「そのように話が決まって、あの人は帰って行きました」
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それで、話はすんなり決まったのか。じゃぁ、私は、大きな子供か!!!!
子供は、決まった事に従うべきなのか!?!?!?!と思った。
だが、それでは治まらなかった。あれやこれやで尾を引いた。

が、水は、或る日を境目に穏やかに流れ出した。
私は、全く知らなかった。
私の知らない所で、母が田舎から腹巻に札束を巻いて京都にお忍びで来た事を。

これを知ったのは、ほんの十年弱前である。
父と母の遺品の日記に中に、簡単ではあるがその記述がある。
手切れ金を京都駅でかの女性に渡したことを。
無論、E子には、いまだにこの母の話しをしていない。

大学を卒業から一年後、京都で結婚式を挙げた。E子が花嫁、新郎は私。
無論、お互いの親族一同にて。

あの時の、あの賢島での夢で見た通りの事が、現実になった。正夢だった。
                                   おしまい

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