オーロラの背景に潜む大停電


私の先日の記事の最後に『EMP(電磁パルス)兵器』についてちょっとだけ書きましたが、それの詳細を書く前に、「太陽フレア」について書いておきます。

先日の私の記事



先ずは、オーロラのユーチューブから。 2分22秒



(私が5歳の時の記事)
私の履歴書④ 「赤いオーロラを観る」 2007/9/21(金) 


さて本題
最大級の太陽フレア(註1)、地球への影響は?  2011.03.03


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(註1)太陽フレアとは、太陽で発生している爆発現象のこと。
太陽フレアが発生すると、1000万度を超す高温のガスが作られ、そこからは強力なX線、紫外線、電波、高エネルギー荷電粒子が放射される。

NASA 太陽フレア ユーチューブ)
NASA | Fiery Looping Rain on the Sun
NASA | Magnificent Eruption in Full HD

2011年2月14日、太陽系最大規模の爆発現象「太陽フレア」が4年ぶりに確認された。地球に届いた激しい電磁波は、無線通信や長距離航空機が利用するGPS全地球測位システム)信号に障害を引き起こす太陽嵐に相応しい規模だったという。 

太陽嵐の引き金となった太陽フレアの活動レベルにはまだ上がある。現在は太陽活動極大期の序章が幕を開けたに過ぎず、今後数年間でピークに達すると見られている。 

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「太陽にも、ハリケーン・シーズンのように活動周期がある」。アメリカ、コロラド州ボルダーにある宇宙天気予報センターの責任者トム・ボグダン氏は2月、ワシントンD.C.で開催されたアメリカ科学振興協会の会合でこのように発言している。 

「最近4~5年は、まるで冬眠中のクマのようにおとなしくしていた」が、目を覚ましたようだ。いくら大規模と言っても太陽全体として見れば控えめだが、個々の事象に関しては非常に強力になると予想される。 

 NASAによると、記録上最大の太陽嵐が観測されたのは1859年(註2)の太陽活動極大期(註6)。これから突入する極大期と同規模だったという。

(註2)1859年の日本は江戸時代で、電気とは無縁に近く、被害はなかった。

当時の嵐は、観測者であるイギリスの天文学者リチャード・キャリントンにちなんで「キャリントン事象(Carrington Event)」と命名されている。キャリントンはこの最大級の嵐を目撃し、太陽活動と地磁気擾乱(じょうらん)の関連性に初めて気付いた。 

キャリントン事象の間、北極光(オーロラ)はキューバやホノルル、南極光はチリの首都サンチアゴほどの低緯度からでも観測できたという。

フレアは非常に強力で、「アメリカ北東部の人々は、オーロラの光だけで新聞を読むことができた」と、コロラド大学大気・宇宙物理学研究所のダニエル・ベーカー氏は2010年12月に地球物理学会で述べている。 

 また、マサチューセッツ州ベッドフォードの空軍研究所の宇宙物理学者エド・クリバー氏によると、地磁気擾乱も深刻だった。当時の電信係が電信機から火花が発生したと報告しており、火事にまで発展したケースもあったという。 

 1859年ではこうした報告も珍しがられて終わりだった。しかし、同規模の太陽嵐が今の地球に降りかかった場合、世界中のハイテクインフラが停止する(註3)可能性がある。「現代生活のほぼすべての面を支えている先進テクノロジーに危険が迫っている」とボグダン氏は警告する。 

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(註3)地球を取り巻く電離層になんらかの理由で異常が発生することにより起こる通信障害をデリンジャー現象と言う。

電離層は、電波を反射するもので、遠くまでラジオ放送や無線通信ができるのは、発信された電波が、この電離層で跳ね返ってくるため。

ところが、この電離層は太陽から飛んできた荷電粒子により激しく乱されてしまう。そうすると、電波が跳ね返ってこられなくなり、ラジオ放送や無線通信が使い物にならなくなってしまう。

「1859年と同程度の強力な電磁気障害がインターネット時代に発生すると、その被害は計り知れない」とコロラド大学のベーカー氏は説明する。地球に襲い掛かる太陽嵐に伴う影響は3つある。ただし、必ずしもすべてが毎回発生するわけではない。 

 まず、高エネルギーの太陽光(ほとんどがX線と紫外線)が地球の高層大気をイオン化し、無線通信の障害を引き起こす。そして、船外活動中の宇宙飛行士に深刻な放射線被曝が生じる恐れがある。

最後に、荷電粒子の塊が放出される現象「コロナ質量放出(CME)」も発生する。数日かけて地球大気に到達すると、地球の磁場と相互作用して、強力な電磁ゆらぎが発生する。 

「通信技術に依存する21世紀で突然何もかもダウンしたら…。空恐ろしい」とベーカー氏は口にする。同氏によると、特に心配なのは携帯電話や航空機、自動車で幅広く利用されているGPSだという。GPSの市場規模は、2003年の130億ドルから2017年には約1兆ドルに到達すると見込まれている。 

 電力網のダメージも深刻だ。太陽からの荷電粒子が強力なエネルギーを生み出し、大型変圧器を破壊する可能性がある。もし数百台の変圧器が一度にダウン(註4)すれば、再稼働までに長い時間を要するだろうとベーカー氏は指摘する。 

(註4)大規模な停電が起きた場合、主として変圧器の損傷で回復に長い時間がかかる可能性があります。 全米科学アカデミーの報告書が指摘するように変圧器の現場修理は出来ず、新品ユニットと交換するには1年以上を要します。つまり、電気も石油もない江戸時代の生活が1年以上も続くことになります。無論、食料にも困窮します。

 特に深刻な被害が予想される地域はアメリカ東部である。送電インフラの相互接続性が高いため、局所的な障害がドミノ倒しのようにいとも簡単に他地域へ連鎖してしまうからだ。 

「大都市で1週間、1カ月間あるいは1年間、電力供給が途絶えたらどうなるか想像してみてほしい」とベーカー氏は述べる。「損失額は1~2兆ドルに上ると見られ、復旧に数年はかかるだろう」。 (註5)

(註5)(註6)
1989年3月13日 ケベック州では磁気嵐が9時間以上のために州全体渡って電力がノックアウトした。 磁気嵐はケベック州のみならず、ニュージャージー州、および英国でも変圧器を破損し、そして太平洋岸北西部から東海岸の全米200以上の電源異常を引き起こしました。 2003年10月の「ハロウィーン嵐」の同様のシリーズは、スウェーデン南部地域の停電を引き起こしたと南アフリカの変圧器を破損している可能性があります。

Permanent damage to the Salem New Jersey Nuclear Plant GSU Transformer caused by the March 13, 1989 geomagnetic storm.
1989年3月13日地磁気嵐によって引き起こさセーラムニュージャージー原子力発電所GSU変圧器に永久的な損傷を与える。 



(参考)
Solar Flare News

(画像借用先)
本気!? 電離層で地震を予知する(1)|
電波の基礎知識