1990年代前半から日本の衰退は決まっていた
1990年代前半から日本の衰退は決まっていた
「東芝の技術、韓国に流出 容疑の元技術者に逮捕状」のようなニュースに出会う度、思い出すことがありましたので書いておきます。
◆ ◆ ◆
1998年のことだと記憶しています。
千代田区にある営業本部に勤務していた私に本社から出張で来ていたK課長がひそひそと話しかけてきました。
「水無瀬部長、ご存知ですか? 設計の伊田課長(仮称)がMB電機に引き抜かれたのを。」
「あの大手のMB電機が引き抜いた? 伊田課長を?」と言って私は大笑いしました。
「MB電機は、大枚をはたいて工場掃除人夫を雇ったということか。」
「どういうことですか?」
「実は彼の名前で申請し取得した特許と実用新案の考案は私か、又は私の指揮する部署会議で案出されたものなのだよ。」
「あれ? 水無瀬部長はずっと営業畑でしょう?」
「そうなんだけど、ご存知、私の管轄する部署は他の部署と違って、『コンセプト⇔マーケティング⇒新製品の開発⇒設計⇒製造⇒ディラープロモーション⇒卸販売』が仕事で、設計部署の伊田課長や工場と深くかかわり合いを持っているね。
その特許や実用新案を製品化したものを末端顧客に販売するのが全国支所のZ営業課で、他方、業者に売る販社としては子会社の一つにAB社がある。」
「AB社の羽田社長(仮称)って、今春、本社と全グループとの会議の席上、最優秀経営者賞で表彰されましたね」
「そうそう、超赤字会社だったけど、あの実用新案製品EB機を売り出した三年前から超黒字会社に変身したからね」
「あの時、設計の伊田課長も最優秀技術者賞で表彰されたのじゃないですか?」
「そうそう、その両者の表彰された元は、私の考案したEB機なんだよ」
「水無瀬部長は何故表彰されないのですか?」
「知っての通り、うちの会社はネズミを獲った猫だけを表彰するからね。」
「羽田社長は水無瀬部長に感謝しているでしょうね。」
「普通の人間ならそうなんだけど、あの羽田社長は寧ろ逆だね。20年前も潰れがかったAB社に一億円の利益のある売上を回して助けたことがあったが、羽田社長からのお礼などは一つもなく、逆にいらん仕事を任されたと言っていた。まぁ、己が!己が!という自己顕示欲が半端じゃないからね。W大出のあの人の場合は。」
(参考)
私の履歴書(No.124)上司の罠(わな) 2009/2/25(水)
私の管轄していた部署のハードを主とする製品の設計は伊田課長で製造は本社工場。ソフトを主とする製品の設計と製造は三島の子会社でした。
そういうことで、伊田課長とは毎月定例会議を行っていたのですが、彼もやはり技術者ですね。頑固と言おうか、頑迷と言おうか。
私、叩きましたね、拳で会議室のテーブルを。
数え切れないほど。
「それは無理」「それは出来ない」が彼の口癖。都度、テーブルの上にあるアルミの灰皿は30cm程飛び上がりました。
ここは関西の大半の大手家電・重電企業の下請けをしており、生きた情報を持っていました。特に中国・韓国情報に関しては詳細でした。
このHO社の社長との20年前の会談の場で、HO社の社長は、昨今の状況を予測していました。
HO社長 「このままでは日本は駄目になる。日本の大手企業の最新技術を持った技術者がリストラでクビになり、どんどん韓国や中国企業に再就職をしている。」
私 「最新技術というとその企業はシャープのことですか?」
HO社長 「いやいや、東芝だ。」
「東芝が何でそういう技術者を放出するのですか?」
「とにもかくにも、頭数を減らすのが目的だ。然も、開発部署の最新技術を持った優秀な技術者程、主に韓国企業に持っていかれている。」
「そういう技術者ってノウハウまで持っていきますね。」
「ということは、韓国のICチップは1~2年後に東芝に追いつくということですね。」
「そういうことです。あと何年もしないうちに東芝やシャープのライバルとして世界で立ちはだかるということです。」
「東芝の経営トップは何を考えているのでしょうか。」
「当面の決算を黒字にし、自分の社長としての立場を守るためでしょう。」
「後先考えないそういう人間が社長なら推して知るべしですね。」
「東芝のトップのような大企業のトップは多い。日本のハイテク分野での優位性はなくなり、イコール、日本の衰退ということです。何年後からそれが始まります。」
HO社長の元には、大手企業の企画・設計社員が頻繁に出は入りしていますから、この話も東芝の社員から直接聞いたのでした。
尚、当時、私の勤務する㈱ウズマサでは、1990年頃には既に中国で合弁会社を設立しており、そこで生産されたものを輸入し、日本国内で販売していました。
(以下は参考記事)
東芝の技術、韓国に流出 容疑の元技術者に逮捕状 警視庁
2014.3.13 11:35
大手総合電機メーカー「東芝」(東京都港区)のフラッシュメモリーの研究データを不正に持ち出し、韓国の半導体大手「SKハイニックス」に渡した疑いが強まったとして、警視庁捜査2課が不正競争防止法違反(営業秘密開示)容疑で、業務提携していた半導体メーカーの元技術者で福岡県内に住む50代男の逮捕状を取ったことが13日、捜査関係者への取材で分かった。
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大企業や中小企業の技術者が、好条件につられて韓国メーカーなどに引き抜かれ、技術流出につながるケースは10年ほど前から深刻化している。
一部で訴訟にも発展したが、長引く景気低迷やリストラを背景に歯止めがかからず、産業競争力の低下につながりかねない事態に発展している。
「年収6千万円以上」「専属秘書や運転手付きの車を支給」-。韓国の電機メーカーは、破格の条件を付けて日本人技術者の確保を進めてきた。
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ソウル市内の異常な高放射線量と技術 2012/11/13(火)
日本では、サムスンの技術が日本人技術者によって支えられてきたし、今も支えられていることを知られていない。
人の良い日本人並びに日本企業は、人・物・金、それに技術まで中国と韓国に提供し、感謝もされず、反省もせずに不況!不況!とのたまう。
中国・韓国が日本の技術で日本製品とほぼ同じレベルのハイテク機器や自動車を作れるのは簡単なことである。
そして今、韓国が最も欲しがっているのは、日本の原発技術!
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