お嬢さんの結婚にしょげた父親
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1979年(昭和54年)頃の父親にとって、それまで同居していたお嬢さんが結婚して、家を去ることは耐えられないことでした。
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さて、今の世の中はどうでしょうか。
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貰われてお嫁に行くという感覚は薄れていますから、昔ほどではないでしょう。逆に、結婚する息子が家を去る事に、母親が泣くかも。
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1979年(昭和54年)頃の父親にとって、それまで同居していたお嬢さんが結婚して、家を去ることは耐えられないことでした。
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さて、今の世の中はどうでしょうか。
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貰われてお嫁に行くという感覚は薄れていますから、昔ほどではないでしょう。逆に、結婚する息子が家を去る事に、母親が泣くかも。
浜田や松江で辰巳所長と泊まる所は、何れも古びた商人宿。宿泊費が安いからです。松江温泉などは、所長と泊まったことはありません。
そこで、私一人で何度か山陰にドライブ出張しました。
宿は昔の小学校の木造校舎のような建物です。
朝五時にスピーカーで大声の起床の呼びかけ。びっくり飛び起き。
朝五時にスピーカーで大声の起床の呼びかけ。びっくり飛び起き。
それから朝風呂。参拝の前に身を清めるのです。処が熱いのなんの。煮えたくったような。でも、じっと耐えて入浴。(後の話では、お湯をかぶるだけだそうです)
広島県にまさか10ヶ所もスキー場があるとは。。実は広島は、旧市内を離れましたら、雪国なのです。
さて、狭かった広島営業所の事務所。新たに倉庫付事務所を購入。引っ越しました。初めてこの時、自分の引き出しを持ちました。
その頃、私の課でバンとは別に小型トラックの新車を買いました。マツダ・ボンゴトラック・低床式。1200cc。これに小さなパワーゲートを付けました。
辰巳所長曰く 「広島から山口県に販売に行ったら売れない。特に下関なんかは無理だね」。そう言われますと、逆に燃える。
先ずは販売価格1台30万円程の真っ赤なC機二台をボンゴに積んで広島をスタート。防府で三台販売。即刻、積んである二台納品。
翌朝、前日の未納の一台を納品。「主任、今回の販売目標の五台は軽いものですから、今日はインベーダーゲームをさせて下さい」
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最終日、広島に向けてスタート。
帰路は瀬戸内沿いではなく、内陸を走りました。
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先ずは一台販売に即納。これで四台販売。
残るは一台。
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山口市に入りましたが、全く反応無し。
あわてました。
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山口市内から地方道をひたすら走りました。
車二台が辛うじてすれ違える幅の道。
最終日、広島に向けてスタート。
帰路は瀬戸内沿いではなく、内陸を走りました。
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先ずは一台販売に即納。これで四台販売。
残るは一台。
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山口市に入りましたが、全く反応無し。
あわてました。
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山口市内から地方道をひたすら走りました。
車二台が辛うじてすれ違える幅の道。
両側からは、ススキが道路にかぶさっている。
民家の全く見えないそのススキを掻き分けて行くとY字路。
民家の全く見えないそのススキを掻き分けて行くとY字路。
その交差点には雑貨屋。まさに野原の中の一軒家。
休憩に立ち寄り、ついでにC機を提案をしました。
休憩に立ち寄り、ついでにC機を提案をしました。
予期に反し、母親と息子の嫁さんが是非との意向。
処が、父親の方は頑として拒否。姿を消しました。
処が、父親の方は頑として拒否。姿を消しました。
母親と嫁さん、しょげている父親を是非説得して欲しいというのです。
愛娘が、結婚してこの地を去るからです。
愛娘が、結婚してこの地を去るからです。
「結婚式はいつですか」
「五日後」
「五日後」
「結構近いじゃないですか」
「女の私達は嬉しいのですが、父親にとっては末娘が離れて行くのは悲しいのね」
「女の私達は嬉しいのですが、父親にとっては末娘が離れて行くのは悲しいのね」
「分かりました。やってみましょう。お父さんを呼んでいただけますか?」
母親が、呼んできました。いやいやながらやってきた父親。
「何の用か? もう話すことは無いから帰れ!」
「何の用か? もう話すことは無いから帰れ!」
「お父さん、末のお嬢さん、お嫁に行くので寂しくなりますね」
「君には、関係ないことだ」
「君には、関係ないことだ」
「お父さん、ちっちゃな時から、どんなに可愛がったことでしょう」
「 - - - - -」
「 - - - - -」
「お父さん、お嬢さん、日に日に美しくなってきたでしょうね」
「 - - - - -」
「 - - - - -」
「お父さん、花嫁姿のお嬢さん、どんなにまばゆいことか」
「 - - - - -」
「 - - - - -」
「お父さん、素晴らしいお嬢さんがいなくなりましたら、心にぽっかりと穴が開きますね」
「 - - - - - - - - - -」
「 - - - - - - - - - -」
私、大声で絶叫しました。
「お父さん ! この真っ赤な機械をお嬢さんと思い、毎日毎日、磨いてくれませんか!」 |
「 - - - - - - - - - - - - - - - - -」
「お父さん ! 心を込めて。ゆっくりと、ゆっくりと。白いタオルで !」 |
「 - - - - - - - - - - - - - - - - -」
長い長い静寂でした。
後、ポツリ一言。
「分かった」
「有難う御座います。これでお嬢さんも安心してお嫁にいけます」
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