京都の未明は寒い

私の履歴書・59
《金も尽きてー未明白川通りから松ヶ崎橋を渡る》

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京都に舞い戻るや否や待ち受けていたもの。
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それは、小銭しか残っていない財布。
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悲嘆する余裕などは無い。稼がなければならない。
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先ずは当面の生活費。

以前、京大大学院生の田舎の先輩に教わった質屋に行く。

銀閣寺前から15円のチンチン電車で京大前の宮崎質屋。
質草電気ストーブを抱えて。それが千円。



その足で学生相談所へバイトを探しに行く。時期が時期。もう、割のいいバイトは無い。
しからば、これかと応募するも抽選。負ける。

ポツンと一つだけ残るバイト。時給80円の肉体労働。
それに、場所が松ヶ崎。始業が午前四時半。夢見る時間だ。

成る程、誰も応募しないはず。但し、朝昼二食付。これが魅力。
やむを得なし。ここに決める。



帰宅がてら、インスタント袋メン500円分購入。
バイト代が入るまでの夕食は、これで過ごさなければならない。

目覚まし二個を午前三時半にセット。
眠れる訳はない。十時前等寝た事が無い。


眠らなきゃ!眠らなきゃ!と逆に興奮。
そのままで目覚ましが鳴る。一睡も出来ず。

着替えて、北白川の下宿の戸をそっと開くとブルブルッ!
弥生三月末。春とは言え、京都北部の夜明け前は殊更寒い。


白川通りを北上。ポツンポツンとある街灯には、丸い光の輪。
当に、閑寂寒々。然も、徒歩。夢の中か?

右の暗闇の山手には、一乗寺下り松・詩仙堂があるはず。
更に北上し修学院離宮の手前、白川通り北山を左折。

高野川の松ヶ崎橋を渡り、西に向かう。
凡そ、徒歩四十分で目指すバイト先に到着。やれやれである。
                             続く