試験三日目、力尽きる


イメージ 1 《力尽きる》
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試験初日、六時起床。
ずぶ濡れの下着から、生乾きの下着に着替える。
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ひやりとした冷たさ。
六時半下宿を出る。京都の朝は、殊更冷える。身震い。
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バスで阪急河原町駅へ。



バスでは座れた。電車は始発なのに座れず。
十三駅で宝塚線乗換え。終始、吊り革にもたれる。

間断なく、背筋に電気のような冷気が走る。
目を開けてはいられない。開けたらめまい。

目を閉じ、時間の経過をただじっと待つのみ。
吊り革の隣の人の眼差し。恐らく、私は蒼白。



豊中を過ぎ石橋駅下車。それからが丘登り。
一歩一歩、倒れないように足を踏みしめて。

理学部高分子の受験教室は、一番奥。
駅から徒歩25分の所。



自分の席に着いたのが9時に10分前。
徒歩で45分かかった。

問題用紙に受験番号と名前を書いて、数分待つ。
「始め!」の号令。

問題を見る。字は見えるが読めない。
脳味噌から血が抜けて、空の毛細血管に神経が走る。
頭がピリピリ。



挙手。「トイレに行かせて下さい」
トイレの中。ふらつく。立っていられない。

たまらず「金隠し」に構える。腰を落とせる。
この状態なら倒れないですむ。

両手を握り合わせ、目を閉じた。
「神よ!我の脳を正常に戻し給え!」

祈ったまま30分経過。脳に血が流れ出したのを覚える。
これなら何とかなる。立ち上がるも、足がしびれている。



ちんばになりながらも会場の中を歩む。
何故か、顔がスースーする。

自分の席に着く。
冴えてくる。
神は私を見捨てなかった。



無情。途中でタイムアウト
その日の残る科目は何とか凌ぐ。

夜は相変わらず発熱と発汗。次の夜も。

最後の三日目、確か、物理と化学の試験。
公式さえ思い出せない。


疲労困憊(ひろうこんぱい)。
力尽きる。