葡萄ドロに挑戦した昔日

私の履歴書

裏の畑の真中に一本の葡萄の木がありました。紫の実が遠くからも見えるのです。

歴代の中学生連中が、小学生の頃、何度か挑戦しその都度、見つかって学校に報告されたらしいのです。
今度の6年生の悪ガキリーダーも失敗したとの事。成功者は皆無!

イメージ 1それじゃ、オレが挑戦! だが、何時も持ち主の小母さんが畑の何処かにいるのです。

隣の家の子に見張らせていたら、いよいよ畑に誰もいないとの報告です。待ちに待った日が来たのです。

しめしめ、と、1m程の小川を渡って、紫のキラリと光る葡萄の実が、目の前。

にやりと二人で笑った瞬間、傍からむくっと小母さんが立ち上がったのです。見えなかった!


「こらっ!」 小母さんのえらい剣幕。一目散に逃げましたね。
背中に大きな小母さんの声「○○さんとこの子だろう!」

こりゃ、拙い!親父やお袋に知れたら、ただでは済まない!
数日前に、他の悪さで、親父にしこたま殴られ、逃げて物置小屋の隅に隠れました。

心配した家族が懐中電灯片手に探しに来ましたが、小さく丸くなっていたので、見つかりはしません。
そのまま、眠ってしまったら、真夜中起こされ、その夜は、説教で済んだばかり。

今度の事では、こんな程度で済みそうも無いことは、本能的に感じていました。
こぶの10個や20個で済みそうもありません。めちゃくちゃ殴られ、縛られて、こうりの中!

次の日から、教室でも、家でもビクビク・オドオド。今日ばれるか、明日ばれるか!
だが、不思議な事に、何も起きないし、噂にもなっていないのです。ほっとしましたね。

処がですよ、今度、父兄の授業参観日があり、例の小母さんも来て、その折り、母と話しをすると聞いて、飛び上がりましたね。

参観日までの一ヶ月程はシュン。学校にいても遊んでいても上の空。はらはらの毎日でした。

そして、遂に、とうとう、その日、参観日がやってきました。
授業中、廊下を見ると、あっと驚いた! 小母さんが、廊下に立ってこちらを見ているのです。

絶望!あー、無情! 私は、机に顔をバッタリと伏せました。そして恐る恐る顔を少しだけ上げて、廊下を見ると、小母さんは誰かに何かを聞いています。その後 隣の教室の方へ消えました。自分の子の教室を聞いていたようです。

その日の夜、母が帰ってきてからというもの、いつ葡萄の話になるかでご飯も食べれない!
「どっか体悪るいか?」と聞かれるも黙って首を横に振りました。

この一晩は、長かったですね! 翌朝、目が覚めて、無傷なる自分を信じられなかったですよ。


                           続く